必死に誤解を解く私


 ええ、もうあの変態なんて眼中にありませんとも。
 ああお姉さま、こんな運命的な偶然……刹高に入って一番の幸せです!

憧れの冷徹女王様C

 あの変態優男に懐かれて三日。私はあれ以来三年生の階へ行く事を止めた。

 いくら探しても王子様は見つからなかったし、あの変態には会いたくない。理由は勿論、悪態をつかれたのに喜ぶような変態と関わりたくないから、だ。
 なのに……な、の、に

「やっぱり君が捜してたのは俺だったんだね。だから三年生の階に来なくなったんだろ?」

変態が現れた。トイレ帰りの廊下でばったりと。
 しかも周りにも聞こえるような声で勝手な妄想を私に押し付けてくるときた。……殴っていいですか。

「いえ違います。全面的に違うし私幽霊と変態とはお話しない事にしてるんで話しかけないで下さい寧ろ近寄る、な…………あれはっ! お、お姉さま!」

 変態の横から見えた廊下の先に、私の憧れのお姉さまがいた。
 急いで変態を突き飛ばしてお姉さまに駆け寄る。
 ああ、これは運命だ。

「お姉さまっ! お姉さまもこの学校だったんですか!」
「まさかとは思ったけど……噂のガングロってあんただったわけね」

 私の顔には心からの笑顔が広がる。緩みきった頬を誰が引き締められようか。
 艶やかな黒髪が美しいお姉さま。少し冷めたような落ち着いた雰囲気も素敵に健在。私は未だにお姉さまを苦しめた馬鹿兄貴の事が許せないし許さない。お姉さまには世界一幸せになってほしい。

「お姉さま一年の階にはなんのご用意ですか? 私が用事を済まして来ます!」

「いや、私も一年だから」

「同い年だったのですね! お姉さまとお揃いが出来たみたいでうれしいです!」

「てゆうか、同い年なんだからお姉さま呼ばわりは止めなさいよ」

 お姉さまとの話に花を咲かせている幸せな時間。そんな時間もアイツのせいですぐに終わってしまう。

「ねえ、キミこの子の友達?」

 様子をうかがっていたらしい似非優男があろう事か 私 の お姉さまに話しかけた。

「まあ一応。……何か用ですか?」

 お姉さまが一応と付けたのは私とお姉さまの関係、と言うか出会い方が特殊だからだと思う。再会したのもつい最近だし……。

「そっか。用はないんだけどね? 俺この子とスッゴく仲良くなるつもりだから挨拶しとこうと思って。よろしくね」

 ニッコリ。爽やかに似非優男はお姉さまに笑いかける。
 あああ、お前私のお姉さまを変態毒に侵す気だな。明日辺りから幸せに暮らせなくなってしまえよまじで。

「は!? お姉さま! こんな有害変態似非優男とよろしくしないで下さい! 仲良くなる気もむしろ顔見知りになる気もありませんから!」

「莉央……楽しそうね」

「たっ楽しい!? お姉さま勘違いです見間違いです楽しくないですから、全力で拒否ってますから!」

「莉央ちゃんって言うんだ。そういえば名前知らなかった」

「お姉さま信じて下さい!」

 お姉さまのブレザーを握りしめて必死に『私が変態似非優男と関わって楽しんでる節』を否定する。
 お姉さま信じて!

「はいはい、わかったから。休み時間終わるから離して」

「お、お姉さまあああ!」

「莉央ちゃん、莉央ちゃんかあ」


必死に誤解を解く私


(ニコニコと私の名前を呟く彼)
10.01.17
加筆 10.01.23


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