最後まで気付かなかった彼女
あの動悸は私の危機を察知していたんだって後から気がついても意味はなかった。
踏みにじられた白線P
退場門から退場して解散した直後、私は席には戻らず体育館裏の桜の木の下にいた。
先生に見付からなそうな場所を考えてなんとなく行き着いた先が此処だっただけであって特に意味はない。
桜の花は跡形もなく散っているが葉が日除けになり心地いい。
背を木に預けて体の力を抜いてぼうっとしていた私は、いつの間にか睡魔に負けてそのまま寝てしまった。
「ん、……」
眠りから目覚めるまでの曖昧な感覚の中、寝ている間に仰向けに横たわっていたらしい身を捩ると頭の下が何故か温かい。そして微妙に固い。
違和感に気づいた私は急激に目が覚めて、しかも血の気がサッと引いていくのを感じた。
慌てて目蓋を開けた先に見えたのは、木漏れ日で輝いて見える
変 態 似 非 優 男 !
「ひぃっ!」
なんだコレどんなだコレ何故コイツがここに!?
衝撃的な展開に身を固めてしまったがよく見れば変態似非優男は寝ているようだった。
すうすうと気持ち良さそうに緩みきった顔をして寝息を吐く三日月に縮こまっていた体の力が抜ける。
兎に角この変態を起こさないように此処から脱出しようとした瞬間、三日月が少し身動ぎ眉間にシワを寄せた。
「ん……りお、ちゃ……」
あろうことか私の名前を呼んだ変態は私の腹に乗っていた右手をゆらゆらと柔らかく動かし、私の存在を確認するような動きをみせた後、また顔を緩め気持ち良さそうな寝息を吐き始めた。
私といえば、腹に乗せられていた右手が揺れ始めた辺りからまた硬直してしまい、手の動きが止まっても反応出来ずにいた。
ってゆうか、揺らされるまで右手の存在に気づかなかったってどうゆう事なの? 此処で寝てしまった私を殴り飛ばしたい。
その後私は精神的疲労から解放されるべく何とか三日月を起こさずに脱出する事に成功して、全速力で自分のクラスへ戻った。やけに仁摩に行方を聞かれてウザかった。
ちなみに優勝したのはお姉様の赤でも私の白でもなく青だった。
完全に抜け出すまでの間、寝顔は悪くないとか、もしかしたら黙っていればそれなりの面なんじゃないかとか思ったのは秘密だ。
「莉央ちゃんってば耳まで赤くしちゃって…………かーわいー」
最後まで気付かなかった彼女
(最初から起きていた俺)11.5.22
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