心を落ち着ける私


 実はいっそのこと学校を休むか二時間ほど悩んだ。

ゆらめく白い鉢巻きO


 六月の半ば、だいぶ蒸し暑くなってきた事に加えて雲ひとつ見当たらない快晴の今日は体育祭だったりする。

 事前にくじ引きを行い、クラス毎に三色で分けられたのだが、お姉さまのクラスとは同じ色になれなかった。私は白組でお姉さまは赤組。なんたる事態。

 更に災難は続き、体育祭本番の今日になってみれば三年の白組にアレが居るではないか。しかも、一年は二年と三年に挟まれるような形になるため、気付かれて絡まれれば逃げようがない。まあ、私が出るのは午前の部にある百メートル走だけなので他は何処かに避難していればいいだけなのだが。

「莉央、隣座っていいか?」

 チラチラと顔色を伺いながら既に一番後ろの二年生側に座っていた私の隣に座っているのは未だに罰ゲームなんだか賭けだかを続けているらしいクラスメイト。名前は仁摩らしい。

「勝手にすれば?」
「さんきゅ。次なんだっけ?」
「……さあ?目次みれば?」
「ク、クール……」


《百メートル走にご参加の選手は亀のゲートにお集まりください》

 やっと私の種目の集合がかかったので二年生の後ろを通って集合場所へまわった。その際仁摩が何か言っていたがスルーした。

《位置について、よーい……》

 ピストルの音で走り出してゴールを目指す。……なんだか周りが遅い気がする。ゴールしてみれば結構差があったらしい。あの速さだったら確実にアノ変態似非優男に追い付かれてるだろう……まさか、アレに追いかけ回されたせいで足が速くなったとかは……ないと思いたい。

 ふとアレは何をしているのだろうと退場待ちの列から三年の白組を見た。


「……!」


 同じようなタイミングで私に目を向けたのか――ずっと見られていたとは思いたくない――思いきり目が合った。しかもその瞬間満面の笑みを浮かべて両手を降り始めた。キモいの一言につきる。
 言い様のない寒気と動悸を感じて慌てて体ごと視線を反らした。


心を落ち着ける私

(したり顔な彼)
10.4.25


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