逃げ出した彼女
本物……? 王子様が、変態似非優男の知り合い……?
再会した王子様L
どうしよう、震えが止まらない。二年間会いたくて止まなかった王子様が、今、私の、目の前にいる。
「あ、の……私、ずっと…………探して、」
「うん? 君なにか落としたの?」
「莉央ちゃん?」
ああ、ああ――! なんてもどかしい!
声帯まで震えて声が出ない。
脳が麻痺して言葉が浮かばない。
本物か確認だってしなければいけないのに、視界がボヤケてあなたの顔が歪んでゆく。
まさかこれは私が生み出した白昼夢なのだろうか。このままあなたは消えてしまうのだろうか。
片手を持ち上げ、そろそろと指先を王子様へ伸ばす。王子様の存在を確認するかのように。
「莉央ちゃん、ストップ」
「――っ、!」
伸ばした手を後ろから掴まれた。こんな時まで私の邪魔をするのか変態馬鹿似非糞優男!
「邪、魔を、しないでっ!」
掴まれた手を思い切り振りほどいて変態似非優男を睨み付ける。
「え、……修羅場系?」
「帷吏は黙ってようね。莉央ちゃん、ちゃんと紹介するから落ち着いて。ね?」
困ったように眉尻をさげて笑う変態似非優男に少したじろいでしまった。普段困らされているのは私なのに、今は私がこの変態似非優男を困らせている……?
「えーっと、莉央ちゃん、この黒いのがさっき話してた友達の菅崎 帷吏。で、帷吏。この子は蓮本莉央ちゃんね」
「蓮本ちゃんね。よろしくー」
「あ、はい」
ああ、そう。このどこか間の抜けた――いい意味で――馬鹿っぽい話し方にヘラりと力の抜けた笑い方。
この人だ。
この人があの時の、私の王子様に違いない。
「莉央ちゃん莉央ちゃん、帷吏はね、あのモカ高なんだよ」
「モカ高……って、あのですか?」
この辺で一番の馬鹿高で、服装から髪色まで自由な通称フリーダム学校。規則が物凄く緩くて退学率が低いのでも有名だけど、治安の悪さからか生徒の人数自体は其処まで多くない。むしろ毎年のように定員割れなんだとか。
私は刹高に行く事しか考えてなかったからよくは知らないけれど、「フリーダムに行くぐらいなら通信の方が幾千倍もマシ」とか言われているらしい。
「そーだよー、そして俺ってばフリーダム一の天才って呼ばれちゃってるんだー」
フリーダム一の天才? 確か中の下ぐらいの頭でもモカ高では先生って呼ばれるって噂を聞いたことが……。
いやいやそれ以前に王子様はあの時、確かに刹高の制服を着ていた。
まさか、あの時の乱闘が学校にバレて転校というなの事実上の退学処分……?
わたしのせいで。
「あ、あ……私、ごめっなさ……」
逃げ出した彼女
(首を傾げる俺とついでに帷吏)10.4.2
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