唖然と見上げる私
あああ、世界は狭い。これを運命的と名付けるのでしょうか。
鞄の中のエコバックK
金色週間半ば、うちの家族は何処へ行くでもなくみんな家でダラダラ。留学を終えた馬鹿兄貴もあまり外へは出ていないみたいだ。
私はそんなダラダラ星人の命令で食料の買い足しにスーパーへ足を運ぶ。
「莉ー央ーちゃん」
連休半ばという事もあってかやはり商店街の人が心なしか少ない気がする。まあ、普段から其処まで人で溢れている商店街ではないんだけどね。
「莉央ちゃん莉央ちゃん莉央ちゃーん」
「………………」
わははーい、なんかとてつもなく残念な幻聴が聞こえてくる。アイツはそのキモさを私のトラウマにするつもりに違いない。あああまじで軽く針山に落とされてしまえばいいのに。
「ゴールデンウイークに会うなんて奇跡的だねーやっぱり俺達運命だよね」
「…………」
「莉央ちゃんはお使いかな? 暇なら俺達と遊びに行こうよ。俺の友達は見た目少しアレだけどいい奴だからさ」
ヤバい。幻聴だって自覚しているのに後ろから変態似非優男の声が聞こえる。うわ、軽く寒気が。
「莉央ちゃーん、聞こえてる? もしもーし」
「…………」
「………………わっ!」
「ヒッ、」
声と同時に両肩に手を乗せられて思わず立ち止まり軽く悲鳴を上げてしまった。
「やーっと気づいたね? どこか行きたい所ある?」
「そうゆうの止めてください。どこにも行きません、すぐに家に帰るんで」
両肩に乗ったままの手を払い、少し下がりながら振り返って変態似非優男の目を睨みつけた。
本当にコイツは人の都合やら気持ちやらを考えずに行動している気がする。迷惑極まりなさすぎる。
「まーさ。俺との約束すっぽかしてなあーにナンパなんてしてんのさ」
誰かが私の後ろから変態似非優男に声をかけた。内容的には変態似非優男の知り合い。まさか…………囲まれた?
「この子は俺の彼女になる予定の子だよ。さっきたまたま会ったから一緒に遊ぼうと思って」
「別にいいけどさ。雅はやあーっと彼女作る気になったんだ?」
え、え? 人を挟んで会話し始めちゃったんですけどこの人たち!
「私! この人と知り合いでも何でもないですから! ましてや彼女とか有り得ないですキモい!」
有り得ない発言に取りあえず反発しておかなければと思った瞬間、反射的に振り返って声を出す。
「あり? まさー、お前とこの子言ってる事ちがくね? ダメだよ雅。女の子困らせちゃさ?」
必死な私の訴えをマトモに受け入れてくれたのは、日焼けした肌に金色の髪……なにより見覚えのある顔。
「莉央ちゃんは照れ屋だから恥ずかしがってるんだよ。ね、莉央ちゃん」
「ぁ、……さ……」
「うん? 莉央ちゃんどうかした?」
「おう、じ、さま……」
「………ん? え、俺?」
唖然と見上げる私
(首を傾げる彼)10.3.13
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