全速力で走り去った私


 ついに、ついに来た。まだ居る可能性は薄いけれど、私は見つけてみせるわ王子様!


毒舌少女A


 毎日の視線が痛い。同級生は勿論すれ違う先輩や先生からも。ここが進学校ではなくて、少しでも規則が厳しい学校だったなら私は指導室行きだと思う。
 ――訂正、指導室行き間違いなし。

(よし、いざ出陣)

 入学して早一週間、私は毎日昼休みに三年生の階へ足を向ける。それは今日も例外ではなく、私は三年生の階へ来た。

(……居るとしたら三年、以外有り得ない筈。居なかったらそれは既に卒業、若しくは退学、か。)
 一つ一つ、教室の中に丁寧に目を配らせて人を確認していく。主に顔色と髪。
 ――今日もいない。もしかしたら、この学校には居ないのかもしれない。

「ね、キミ一年生だよね? 毎日来てるみたいだけど……誰か探してるのかな?」

 自分の教室へ戻ろうと、踵を返したら、目の前には優男がいた。
 血色は良いが比較的白い肌、黒く艶やかな髪、優しそうで、女受けしそうな顔立ち、だけど――――違う。私が探している人じゃない。

「いえ別に、大丈夫です」

「もしかして、俺? 俺の事探してた?」

「……は?」

「それにしてもさ。……俺達前に一度会った事ないかな? 今日が初対面な気がしないんだよね」

「な、なんですかその一昔前の口説き文句! 気持ちが悪いので止めて下さい離れてくださいナンパも冷やかしもお断りです」

 なんだこの新人種は! きっと脳内思考回路がトチ狂ってるヤバい系の人だ。だって、気持ち悪いとか言われても嬉しそうにニコニコしてる……あれ? もしかしてドエムと言う名の変態? いやいやまさかね。


全速力で走り去った私


(ニコニコと微笑みながら見送る彼)
09.12.21


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