過ぎ去った過去


「わかった」
「えっ、まじで!?」

 紅葉散る放課後の裏校舎。こんな所に呼び出して告白、だなんてこの男は漫画やドラマの見過ぎたベタ男なのだろうか。

「ただし、条件を呑めるなら、の話だけど」

 私は目の前の男を嘲笑うかのように口元を歪めた。大抵の男はこれで気分が悪くなる。そして考える。――コイツを恋人にしていいのか、と。

「うん! 俺篠崎にも好きになってもらえるように頑張るから!」

 ……なんだコイツ。顔を赤く染めたまま照れくさそうに笑う目の前の男。一瞬たりとも嫌な顔を見せなかった。なにか企んでいるのか、はたまた頭のネジが足りていない馬鹿野郎なのか。

「……じゃあ、ひとつめ。無闇に関係を言い触らさない」

 なんども同じ事を繰り返せば誰だって学習をする。決してナルシストという訳ではないが、自覚はある。
 周りよりも目鼻立ちの良い私を、アクセサリー感覚で自分のステータスシンボルにしようとする男がたまにいる。コレはその為の約束。

「ふたつめ。浮気をしない」

 ひとつめと同じ意味があるのと、浮気をするぐらいなら付き合うな、と思うから。

「みっつめ。私が自主的にゆるすまで性的行為をしない」

 これはいつまでも許可を許す日は来ない。なぜなら、好きでもない男とそんな事をする気にならないから。それに、この条件を出すことで半数ほどの、私の体目的だった男は嫌な顔をし、告白は白紙になる。

「よっつめ、メールや電話を返さなくても文句を言わない」

 今までの条件を並べると無茶苦茶かもしれないが、九割方私と付き合いたくないと思わせる為に言ってるようなものだからこれでいい。
 残りの一割は自己防衛のためだ。口約束だから確実に約束が守られるとは限らないけど、今まで私との破ってまでドウコウしようと言う奴には出会したことがない。

「いつつめ、学校のある日は毎朝六時半ぐらいから私の携帯に電話をして、私を起こす事」

 電話が切られたら起きたと思ってと、何処からかメモ帳とペンをだしてせっせと書き込む男を見下したような目で見つめる。

「一つでも守れなかったら、すぐに別れるから」

 どう? 条件は飲めそう? と言えば、男は顔を上げて赤い頬はそのままに真剣な顔で――頷いた。

 コイツもしつこいタイプか。でもまあ、今まで保ったとしてもひと月には届かなかったから、それまでの辛抱だ。

異常なまでに嫌悪する存在

(私に、異性として好意を持つ男)
09.09.25
加筆10.03.01


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あきゅろす。
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