*夕化粧の憂鬱*


 言葉を失い戦意を無くした私の手を引きリビングのソファに座らせた愁介は隣に座り何か喋りながら私の髪を撫でてきたけど、何も頭に入ってこない。


 三日月に振られたと思ってたら、本当は私の方から縁を切っていた。その操作が愁介によるものだろうと関係ない。私の携帯なんだから、他人が操作しているなんて思うはずない。私がやったも同然だ。


――もう戻れない。


 ただソレだけが頭の中を埋め尽くしていた。





 リビングに来てどのぐらい経ったか覚えてないけど、愁介がいなくなった。それを良いことにソファーに横になって目を瞑っていると、聞き覚えのある声が聞こえてきた。

愁介ともう一人、なにを言い争っているのかはわからないけど、この声は……




 玄関へ顔を出すと、私を呼ぶ三日月とその前に立ち塞がる愁介がいた。


「み、かづき、なんで……」


 なんで私に縁を切られたのにココにいるの?
 なんで私を呼ぶの?
 どうして私を見て安心したような顔をしているの?


「電話とか繋がらないからフラれちゃったかなって思ったんだけど、諦め切れなくてさ。クラス行ってみたら保健室だって言うし、その後早退したって聞いたから…………なんかあったんじゃないかと思って」


 押し掛けてごめん。そう言った三日月に首を振る。
 ――フラれたと思ったけど諦めきれないって言った。私を心配して此処まで来てくれた。


 既に不貞腐れてる愁介を視野に入れながらも玄関にいる三日月に近づく。涙で視界が定まらないけど、関係ない。


「し、篠崎? なんで泣いてるんだ? どっか痛い? やっぱ具合悪い?」


 私が三日月にたどり着く前に泣いている私を見て焦った三日月が家に上がり私の元まで来た。体を屈め、せっせと涙を拭いながら私の心配をしている。


「いたくない、わるく、ないっ」


 こんな事を言いたいんじゃない。だって、私が泣いているのは


「三日月が、ふっ……家に、くるからっ」


 三日月が私なんかに会いに来るから、涙が止まらない。


 更に焦り始めた三日月に我慢できなくて首に腕を回して抱き着いた


「三日月が、すき」





***



――ブー、ブー



「……もしもし」

「おはようリカ! 起きた?」

「ん、」


 朝っぱらからこんな元気なんて、同じ人間とは思えない。


「ははっ、まだ眠そう。今日すげー良い天気だぞ!」

「眠い」

「あ、目ぇ覚めてきた?」

 でも、そのおかげで毎朝穏やかな気持ちで起きられる私は幸せ者だ。


「おはよ。いつもありがと」

「こんなんどーってことないって! 朝イチでリカの声聞けて幸せだし」

「馬鹿」


 些細な以心伝心に笑いが溢れた。


「へへ、じゃあいつもの時間に行くから」

「ん、じゃね」

オシロイバナの憂鬱

(この恋は、信じてる)
11.12.8


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