一年C組。学力でクラスを決めるこの学校での私のクラス。良くもなく悪くもなく。中途半端なこのクラスはどこかふわふわした奴が多い気がする。例えば私の友人とか席に着いているにもかかわらずオロオロと落ち着かない男子とか。
自分の席に付き溜め息を吐いた。
登校してから入学式が終わった今現在までに“彼氏”の姿は見ていない。朝の着信とメールの内容からこの学校に入学した事は確かなのだが、まだ何組かは知らない。もしかしたらメールが入っているのかも知れないが、今日は携帯を家に置いてきてしまったらしい。
「はい、じゃあ全員席について。今日は連絡事項とプリントの配布だけで終わりだから静かにね」
C組の担任はおっとりした若い女性で、もたもたとプリントや書類が数枚入った封筒を配布し終えた後に明日提出のプリントがあるだとか明日も午前で終わるだとかの連絡事項を話していて、20分ほどで解散。さっきから廊下が騒がし事から他クラスはとっくに終わっているらしい。もしかしたらC組が一番遅いかもしれない。
「りかちゃーん! 途中まで一緒に帰ろ?」
「うん。どこも寄らないでしょ?」
「うんっ! もうお腹ペッコペコだよ。お昼はチャーハンにするつもりなの」
ピークに比べればかなり少ないだろう人の波に乗り、下らない気がしないでもない会話をしながら下駄箱に着くと一瞬だけ見知った金色が目に入った気がして立ち止まる。
「りかちゃん、どうかしたの?」
「いや、何でもない」
金色が見えたのはその一瞬だけで、結局すぐに目を反らした私は香奈恵と目を合わさずに返事をしながら上靴から革靴に履き替えた。
「うっそだあー! りかちゃん朝からキョロキョロして誰か探してたでしょ。ね、誰? 好きな子とかいたの? ドロドロしてる?」
私が誰かを探す? あり得ない。キョロキョロしているように見えたのだって新しく通う学校の校舎を物珍しく見ていただけであって、決して誰かを探すそれではない。ましてや好きな人なんて、あり得な過ぎて寒気がする。
「香奈恵、本当に何でもないから。ほら、早く上靴履き替えちゃいなさいよ」
さっさと靴を履き替えていた私はモタついている香奈恵を置いて歩きだす。外に出ても金色は見えなかった。
追い求めるモノ
(眼を反らし続ける)