*紫陽花の写真*


 人生って、現実って、物凄い厳しいんだね。鎌田君、ごめんね、僕キミの事馬鹿にできないぐらいに告白しそこねた。

 ううう、どうしよう。もう一度、聞いてもらってるのを確認しながら言おうかな……。でもなぁ――

「あっ! そうだ。霧島くん、私ね、今日言おうと思ってた事があるの」

「えっ? な、なに?」

 未だてんとう虫のとまる紫陽花の前。紫陽花の花言葉は悪い印象なものもあるけど、他にも沢山の花言葉がある。
 ――例えば、強い愛情。

「好きです。付き合ってください」

「え…………、えぇっ!?」

 時間が止まった。……気がした。えええ、なにこのまさかな展開。え、もしかして僕の耳とかおかしくなっちゃってるの? 耳以前に頭が――

「ダメ、かな?」

「あ、あのっ……え、え?」

「ダメならいいの……」

 なかなか返事を返さない僕に、香奈ちゃんは寂しそうな顔をして、それから俯いた。ヤバい。何やってんの僕。香奈ちゃんにそんな顔させるなんて最低。ほら、なにか言わなくちゃっ!

「あ、いやっ、ダメじゃない、ダメじゃないよっ! 僕も、香奈ちゃんの事、す、好きだから、そのっ、びっくりしちゃって、僕の方こそ、よろしくお願いします」

「よかった……。あ、浮気したら、紫陽花食べさせちゃうから、ね?」

「あ、はいっ…………ってえぇっ!?」

 彼女は、無邪気に笑いながら恐ろしい発言をしました。

可愛い花には、たまに毒があります。

(私の強い愛情から生まれた独占欲。浮気なんてしないから、沢山の愛を受け止めてほしいの)
(そんな彼女も可愛いとか思っちゃう僕は、既に彼女の毒に侵されてるみたいです。)
09.09.17


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