人生って、現実って、物凄い厳しいんだね。鎌田君、ごめんね、僕キミの事馬鹿にできないぐらいに告白しそこねた。
ううう、どうしよう。もう一度、聞いてもらってるのを確認しながら言おうかな……。でもなぁ――
「あっ! そうだ。霧島くん、私ね、今日言おうと思ってた事があるの」
「えっ? な、なに?」
未だてんとう虫のとまる紫陽花の前。紫陽花の花言葉は悪い印象なものもあるけど、他にも沢山の花言葉がある。
――例えば、強い愛情。
「好きです。付き合ってください」
「え…………、えぇっ!?」
時間が止まった。……気がした。えええ、なにこのまさかな展開。え、もしかして僕の耳とかおかしくなっちゃってるの? 耳以前に頭が――
「ダメ、かな?」
「あ、あのっ……え、え?」
「ダメならいいの……」
なかなか返事を返さない僕に、香奈ちゃんは寂しそうな顔をして、それから俯いた。ヤバい。何やってんの僕。香奈ちゃんにそんな顔させるなんて最低。ほら、なにか言わなくちゃっ!
「あ、いやっ、ダメじゃない、ダメじゃないよっ! 僕も、香奈ちゃんの事、す、好きだから、そのっ、びっくりしちゃって、僕の方こそ、よろしくお願いします」
「よかった……。あ、浮気したら、紫陽花食べさせちゃうから、ね?」
「あ、はいっ…………ってえぇっ!?」
彼女は、無邪気に笑いながら恐ろしい発言をしました。
可愛い花には、たまに毒があります。
(私の強い愛情から生まれた独占欲。浮気なんてしないから、沢山の愛を受け止めてほしいの)
(そんな彼女も可愛いとか思っちゃう僕は、既に彼女の毒に侵されてるみたいです。)