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short story
それを恋と呼ぶにはあまりに清らか過ぎて
リン×ルネ



ルネちゃんを本気で好きだと思う。
本気で愛していると思う。
でもこれは恋ではない。

「リン先輩」
鬼のような形相をしたルネちゃん。
怒った顔もかわいいよ、なんてこのタイミングで言ったら怒るんだろうなぁ。
「浮気はしないって、言ったじゃないですか」
「そうだっけかぁ?」
覚えているけどとぼけてみると、予想以上にルネちゃんは泣きそうに顔を歪めた。
泣きそうな顔も、かわいい。
「知っていましたけど、最低ですね」
本気で怒ったようで、とげとげしく言い放つと、ルネちゃんは自分のバッグとコートを荒々しく手に取った。
そして玄関へと踵を向けようとするルネちゃんの小さい手をとる。
「離してください!」
「無理」
そのまま腕の中に納めると、ルネちゃんの体が寒さのせいではなく震えているのが分かった。
単純に嬉しかった。
じたばたと意味の無い抵抗をする愛しい人に無理やりキスをする。
舌を入れたら噛み千切られるだろうから、口をふさぐだけにした。
どんどんと俺の胸板を力いっぱい叩くのが、尋常じゃないくらいかわいいと思った。
長いキスの後、 強烈なビンタをぶちかまして、ルネちゃんは悔しそうに唇を噛んだ。
きっと俺の頬にはダサい赤い跡がくっきりと浮かんでいるだろう。
それでも俺はルネちゃんを離さなかった。
「もしかしたら、私の方が浮気なんですか」
無駄だと分かったのか、急におとなしくなったルネちゃんが諦めたような口調で言った。
「どうして?」
「本命が他にいて、私はあそびなんでしょう」
そこで、やっとルネちゃんは涙を流した。
俺の見たかったものが、やっと見れた。
「ルネちゃんは俺が好き?」
「大嫌いです。世界で一番」
「俺は好きだぜぇ?世界で一番ルネちゃんが好き」
「うそつき」
溢れたものは止まらないようだった。
好きだよ。
愛してるよ。
ただ恋なんかじゃなくて、そう、これはエゴイズム。
もっとルネちゃんが醜くなれば良い。
嫉妬、憎悪、執着、色んなものに埋まって俺につりあうくらい醜くなればいい。
こうして俺は獣のようにこの純潔な人を抱くのだ。


end.


2010/05/08 もちーも

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