元拍手
まるで終電前の高校生
俺達はお互いに言えない秘密を抱えていた。
そんな秘密はせわしない日常にまぎれて決して伝わる事はなかったのだけど。
* * *
「ツナー!早く学校いかねーと遅刻しちまうぜ!?」
「大丈夫っスよ!10代目にたてつく奴らは俺がすべて爆破しますから!!!」
「おいおい獄寺、今日も学校に花火持ってきてんのかよ?」
「花火じゃねぇ!」
沢田家の前で男子中学生がたむろしていると、遅れて彼らが待っていた人物が出てきた。
「お、おはよう!遅れてごめん!なんなら二人だけで先に行っちゃってもよかったのに……」
慌てて靴の踵を踏みつぶしながらこっちに走ってくる少年の姿を見て二人は顔を綻ばせる。
「何言ってんスか、これくらい10代目の右腕として当然っス!」
「それに俺はツナと一緒に学校行きてーしな!」
ニカっと笑う短髪の少年に、気弱そうな少年はさり気無く顔を背ける。
「そっか、遅れてごめんね」
「気にすることないっスよ!」
「そーだぜ!さ、みんな揃ったからちょっと急ごうぜ」
「う、うん!」
彼らの中心になってる彼、沢田綱吉がそう言ったのを合図にみんな一斉に駆け出した。
* * *
しばらく走っていると綱吉が遅れて走っているのに気がついた山本。
「大丈夫か?」
「まぁ…」
そう言いつつ肩でゼェゼェ息をしている綱吉とは対照的に、さすがと言うべきか息一つ切らしていない山本はちょっと何か考えたあと、
「風紀委員居ると面倒だからな」
と綱吉の右手を握って、引っ張るように走り出した。
「山本!?ちょ、ちょっと待って!!」
綱吉からは山本の表情は見えなかった。
山本は綱吉を見る事ができなかった。
そんな二人に気がついた獄寺は舌打ちをした。
* * *
あの頃の俺達は
まるで終電前の高校生の如く忙しいかのように見せかけて
思いをひた隠しにしていたね
[次へ#]