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道物語り

『お電話ありがとうございます! ラ・ナミモリー…―――』
「雲雀恭弥だ。悪いんだけど、とろけるプリン10個キープしておいて」

 ―――滅茶苦茶、権力振りかざしてる!!

「あぁそれから、大福とあんみつと、抹茶プリンと抹茶ロールと…―――いや、いいや。今、店頭にある商品も1つずつキープしておいて。すぐそっちに行くから」

 とんでもない注文を済ませた雲雀は、ぱたんと携帯電話を閉じた。
 下からは奈々に宥められているフゥ太の声が聞こえてくる。ついでに、ランボがリボーンを「バカ!」と罵っている。

 ―――…雲雀さん、子供に弱いのかな…。

 しかし、その思考は甘いものだと彼の狂喜的な笑みを見て思い知らされる。

「じゃあ、沢田綱吉。僕と一緒にラ・ナミモリーヌに行こうか? 『プリンを取り』に」
「なっ?! 雲雀さん!」
「元は君がちゃんと用意してないのが悪いんだよ」

 ―――オレが悪いの?!

「ツナ。あれはフゥ太のだって知ってんだろ。ビビって出してんじゃねぇよ」
「ち、ちがっ…―――」
「行くよ」
「弁解させて!」

 さっと立ち上がった雲雀は綱吉の腕を引いて部屋を出て行く。階段を降りて行くと丁度、わんわん泣き叫んでいるランボが十年バズーカを自らに向けているところだった。その引き金が引かれ、パステルピンクの煙がもくもくと上がった。

「ツっ君、お帰りなさい。あら、初めて見る子ね? お友達?」
「えぇっと…友達、というよりは…―――」
「同じ委員会の上司です」

 戸惑っている所、丁寧に言葉を使ってフォローするように割って入った。

「こんなに子供が居るとは思いませんでした。今から、手土産を買って来ます」
「あら、気を使わなくたって良いのよ? お客様なんだから」
「いえ。お母様にもお話しがありますから」
「あら? 私に?」
「では、後ほど」

 雲雀は綱吉の耳を引っ張って、強制連行を図る。あのパステルカラーの煙は晴れていて、大人ランボが膝をついて顔を上げていた。じっと、綱吉を見つめている。

 じっと―――…じっと。

「ランボ…?」
「邪魔だよ。どけてくれない」
「いでででででっ!」

 雲雀は綱吉の耳を強引に引っ張って玄関の靴を履く。すると、拘束から解かれたディーノがひょっこりと顔を出した。

「お? 恭弥、何処に行くんだー?」
「ついて来るな」
「ラ・ナミモリーヌです…」

 雲雀はぼそっと呟くが、今度は綱吉に問いかけて来て正直に答えた為に耳を引っ張る力が強まった。

「オ、オレも!」

 今まで茫然と座っていたランボがすっくと立ち上がった。

「オレも、行きます!」
「来るな…」

 雲雀がぎんっと睨みつけると、ランボは一瞬だけびくっと震えて。


「嫌だ! 行く!!」




 ―――え…?

 今度はランボが雲雀から綱吉を奪取するように腕を引っ張った。一瞬だけ耳が強く痛たんだが、解放されたことに違いはなかった。
 綱吉は感謝しながらも、土足のランボはそのまま玄関を降りて引きずって行こうとする。

「ちょ、ちょっと待ったランボ!」
「待てません! 後4分と21秒しかないんですから!」
「わ、分かったから! せめて靴を履かせて!」

 ランボはきょとんとすると、しばし沈黙してから苦笑した。

「そうでしたね。急いで靴を履いて行きましょう」
「だから…! 来るなって…」
「よーっし。じゃあ、行くか!」

 既に靴を履き終えたディーノは、沢田家の玄関を開けていた。
 すると、ランボは「そうですよね」と苦笑した。少し緩んでいる紐をきゅっと固く結ぶ。綱吉が靴を履き終えるのを見守ると、ランボが手を伸ばした。

「若きボンゴレ。では、ラ・ナミモリーヌに行きましょうか」
「う、うん…」

 綱吉は今のランボに違和感を覚えながらその手を握って立たせてもらう。雲雀の殺気が瞬く間に強まっていくが、ディーノと綱吉はいつもの事だと受け流し、ランボは少しビクビクしながら、彼から距離を置くように綱吉の横に並んだ。
 「いってらっしゃい」とにこやかに見送る奈々達の足元。リボーンは唯一、垂れた眉を顰めていた。

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