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Sleeping Dreaming(左之新)

ぴぴぴ、ちちち、

「ん・・・」

暖かな柔らかい光と鳥の囀りがぼやけた頭に朝を告げる。
昨日もよく酒を飲んだからか身体は慣れたダルさに苛まれていた。
そこでふと気付く。いつもはドタバタと新八が朝を知らせにくるのに、今日は俺の方が幾分か早く起きた事に。まあ珍しいこともあるもんだなあと俺はぼんやり思う。

「・・・そうだ。」

折角早く起きたのだから動かなくては勿体無いと思い立った俺は手早く支度を済ませ、徐に彼の部屋へと向かう。たまには俺が彼奴を起こしてやるのも面白そうだ。






襖越しの部屋からは人の動く気配はなく、部屋主が寝ていることを告げているかの様だった。少し考えてから、俺はとりあえず中に声をかけてみることにする。

「おーい、新八。朝だぞ」
「・・・・・・・」

周りのことも気にして抑えた風に呼び掛けるも返事はない。予想していた事に ふむ、と顎を一撫でしてから俺はゆっくり襖に手を掛けた。

「入るからな、」

一応礼儀として、今一度声をかけてから薄く光の射し始めた部屋へと静かに足を踏み入れた。

(そういやあ、新八の部屋に来るのは久しぶりだな。)

そんなことを考えながら、見えてきた部屋の輪郭を頼りに俺は新八にたどり着いた。

「・・・コイツ、寒く無えのか?」

上から見下ろして見た新八は大口を開けて眠っていた。夜着は着崩れていて広く肌けている。夏に近い今の気候だけれど、朝は冷えるもので新八のような寝方は身体に良いとは言い難い。

(しかし、こんだけ気持ち良さそうに寝てんのを起こすのも憚られるよなあ・・・)

仕方がないので、俺はずるけて端に寄っていた蒲団を引き上げる。わざわざ起こしに来たはいいが無駄骨になったようだ。

「ん・・・」
「あ、」
「・・・?」

一瞬身動ぎをした新八がうっすらと目を開く。ばちりと掠めた視線に声を出せば新八は不思議そうに此方を見返した。

「悪い、起こしちまったか?」
「・・・さの・・・・?」

とろんとした眼で俺を見返す彼に、ガラにもなくドキリとしてしまう。慌てて掴んでいた蒲団から手を離し、乾いた笑いを浮かべた。

「その、今朝は早く目が覚めてな。お前を起こしに来てみたんだ」
「・・・・・の、」
「・・・うん?」
「さの・・・」

グイッ!

「どわっ!!?」

ぽんやりとしたままだった新八は俺の言葉にふにゃりと笑んで、あろうことか強く腕を引いてきた。突然の事に対処出来なかった俺は勢いのまま蒲団に倒れ込む。

「さのーさのー」
「ちょ、新!」

腹に絡ませられた腕は解けず、新八はグリグリと頭を擦り付けてきた。ふわふわした茶の髪がくすぐったい。新八は心底嬉しそうに笑いながらギュウギュウくっついてくる。

「さのあったかい。」
「!!!!!!」

ほわほわと笑う新八の可愛らしさに胸が高鳴る。それは今の俺には大層堪えた。(コイツほんとは解ってやってるんじゃないか!?)俺は必死で理性を保ちながら現状を打破しようと試みる。

「おい、新八、お前いい加減に・・・!「さのに会えるなんて、いーい夢だなあ」
「・・・・・・は?」

俺の声に被さるように新八は言って、呆けた顔の俺を気にも止めず、更に彼は言う。

「左之、すき」
「え、」

ぽやぽやした笑みで至極幸せそうに言うものだから、愚かな俺はまんまと不意打ちにやられてしまった。頭の中がぐるぐるしているし、顔は自分でも解るくらいに熱くて、開いたままだった口はパクパクと開閉を繰り返すのみ。

「し、んぱ、ち、」

やっと紡げたのは彼の名前だけ。
正直これだけでも頑張った方だ。だって新八は普段恥ずかしがってなかなかこういった言葉を吐かない。(それがこんなに嬉しい、だなんて!)
名前を呼ばれた彼はほんのり頬を桜色に染めて、いそいそとまた顔を埋めてしまう。その愛らしい仕草に、俺は柔らかく微笑みを浮かべた。

「俺も、お前が好きだぜ」
「ん、」
「愛してる。」

新八の蕩けてしまった顔を引き寄せて柔らかく口付けを贈れば、安心したかのように瞼が閉じられる。

「・・・夢でなら、・・・いえるん・・だけどな・・・あ。」

そうして最後にポツリと呟いてから静かな寝息が聞こえてきた。どうやら、新八は今の俺を夢だと判断していたらしい。そんな彼は、またこうして本当の夢の世界へ旅立った。

「全く、・・・かなわねえな・・・お前には」

俺は新八の髪をもう一撫でしてから苦笑いを浮かべる。そしてゆるく抱き締め直しながら夢見る彼に囁いた。

「俺は夢なんかじゃ無いんだぜ・・・新八、」


この声が、想いが、どうか君に届きますように――――




Sleeping Dreaming(さあて、コイツは起きた時どんな顔をするかな?)
普段新八のが早起きだと思うんだ・・・!(昼間は隊士の稽古をつけなきゃいけないので、自分の稽古は朝にしか時間が取れない)
左之は寝坊助ではないけど新八ほど早くは起きれず。寧ろ新八が部屋に来た時に毎回身体を起こした位のタイミングだといい^q^!

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