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第七話
―SH-201(部屋)―



やんわりと、この部屋に一つだけ存在する窓から光が降り注ぐ。俺はゆっくりと瞼を開けた。

(…朝、)

何度か瞬きをしたあと、自分を後ろから抱き締めている男の方に視線をやる。相変わらず力強いその腕のせいでキチンと顔を見ることは叶わなかったが、彼の規則的な寝息を聞いて俺は酷く安心した。


俺は八左ヱ門が好きだ。

コイツは素直な性格で、情も厚く到底俺とは似ても似つかない。だから惹かれあったのか?それは俺にもわからない。男同士という、自然の理に反した非生産的な関係でも、俺は八左ヱ門を愛している。もうそれは理屈では語れないほどに。

俺はそっと自分の身体に巻き付けられた腕に触れた。
指令を出すような俺の役職とは違い、敵地に自ら飛び込んで行くその身体には数えきれない傷跡が残る。

(この腕で、どれだけ罪を犯してきたのだろう。)

するりと傷跡をなぞるように追いかけながら俺は思った。

俺達は軍人だ。
民間人を家族を大切な人々を、そしてこの国を護るため、進んで罪を犯し続ける。それに疑問を持つべきではない。
そう、思っていた。

八左ヱ門に出会うまでは。八左ヱ門という人間を知るまでは。

彼は俺に世界をくれた。

言うなれば、風。
あたたかな春風が、俺を拐ってくれたのだ。
罪にまみれたこの腕が。罰に飲まれそうだった俺を。

(どれだけ、俺を救ってくれただろう。)

本当は傷ついて欲しくない。傷つけて欲しくない。だけど、救うこの腕は罪を重ねて存在する。そういった意味で俺達はやはり、軍人でしかないのだ。

(嗚呼、あとどれだけ)

優しさで溢れた綺麗な君が

(傷つかなきゃならないのだろうか)



もぞ、と後ろから気配を感じる。ふああと欠伸が聞こえて、間の抜けた大好きな声が聞こえた。

「んあ、兵助?」
「お早う、八」

俺は静かに笑みを溢す。






(第七話 了 )

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あきゅろす。
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