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第三話
―NBC203(食堂)―



「立花、仙蔵――」

雷蔵の後ろに立つ一つの影。私は、この男が酷く嫌いだ。
その端正な顔立ちも艶やかな髪も赤い唇も。女だけでなく男から見ても美しいと思えるその全てに嫌悪を感じる。
私は隠しもせずに眉間に皺を寄せながら奴を睨み付けた。

「おや鉢屋、仮にも先輩に向かって呼び捨てはないだろう?」

面白そうに笑みながら立花…先輩は私に突くような視線を向けた。雷蔵は慌てて私が次に口を開く前に立花先輩に声をかける。

「こんにちわ、立花先輩」
「やあ不破。元気そうで何よりだな」
「雷蔵に何の用だ」
「ちょっと、三郎!」
「…かまわないよ不破、鉢屋はこれで」
「でも…」
「悪いが鉢屋、今日は遊んでやる暇がない。」
「………あ゛?」

立花先輩を見れば楽しそうに笑いながら(いかにも冷たい目をしている、)話を続ける。視線は私から外れて隣の雷蔵に向けられた。

「不破、確かお前は資料室の鍵を預かっていたはずだな?」
「はい、確かに僕が持っていますけど。…何か探し物ですか?」
「ああ、少し調べなければいけないことがあってな。いつもなら長治に声をかけるんだが生憎と遠征に行っている。」
「成程、そうしたらば直ぐに取って参りましょう。」
「それと、悪いが一緒にきてくれ。私ではわからない代物がある」
「承知しました。」

雷蔵はガタンと椅子から立ち上がり、行ってくるねと私を振り返ってから食堂から姿を消していった。

「……ちっ」

これだから奴が嫌いなんだ。
ヒトの厭な所ばかりを突ついて楽しみやがる。


私は手に持っていたスプーンを力任せに握り締めた。





(第三話 了)

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