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捨てていった貴方が悪い(小平太+伊作+食満)


「っしょ、と」


私がイチモツを抜き、身体を離せば彼はグラリと床に倒れ込んだ。

「あ。やべっ」

咄嗟に背中に腕を入れて抱き止めればズシリと重い。…竹谷は完全に気絶していた(まあ、結構激しくしたし?)

「あははっ、これで私のモノだよね!」

私は上機嫌で腰ひもを結い直し、自分と竹谷の身支度を整えていた。ら、

「あーあ小平太。もう少し加減してあげなきゃ駄目じゃないか。」
「お、伊作と留ちゃんじゃん!」

いつの間にか小屋の扉に背を向けて食満留三郎と善法寺伊作が呆れたような顔をしてそこにいた。

「なあなあ、私さあ、竹谷捕まえたよ!優勝かな!?」
「阿呆。お前根本的に今回の条件聞いてなかっただろ」
「えあ?そーなの?」
「いいかい、小平太。ただヤるだけじゃ駄目なんだ、竹谷に『愛しています』と言わせないと」
「えー!!!!」

伊作は小さい子に言い聞かせるように人差し指を指して私を諌めた。(ああ、そんなルールだったのか。私は確かに竹谷を捕まえたのだけど、それだけじゃダメだったんだなあ)

「むーっ!じゃあ早速竹谷起こしてもう一回…!」
「あ。それは駄目、」
「……はあ?」

頭を動かして上方に見える伊作を見上げる。彼は人のいい笑みを貼り付けていた。

「小平太の出番はここまで。後は僕の時間だよ」
「伊作、…お前は私に勝てると思っているのか?」
「いいや」
「留ちゃんがいたとしても…時間稼ぎにしかならないぞ」
「そうかもねえ」

私はギロリと伊作の後ろの留三郎を睨み付けた。留三郎は動かずに殺気だけをガンガンに叩きつけてきている。

「そんなこと皆目承知の上だからさ、こうさせてもらったよ?」

伊作は懐から掌に収まる位の瓶を取りだし、中身を弛く振って見せる。
それはタプリと音をたて、異様なまでの青色を揺らめかせた。

「得意の薬品か、…今回は一体何なわけ?」
「ふふっ、それを言ったらつまらないじゃない」

正直、伊作の薬は質が悪いから嫌いだ(風邪薬なんかは死ぬほど苦い)
あの色からして、録なものでは無いと推測できる。

ならば、そうさせる前にこちら側から仕掛けるのみ…だ!!!!

「だけどそんなの、使えなければ意味ないじゃんっ!」

ヒュオッ!

私は身体を跳ねさせ突き立てた苦無を容赦なく伊作に向けた―――――…はずだった。



ぐ ら り、



「えっ…――!?!?!」

ドカッ

ガシャンッ!!!!!

確かに私は脚に力を込めて蹴りあげた。だがそれは叶うことなく少し動いただけであって決して跳ねたと言えるものではない。
気付けば肌にピリピリとした痛みが走り抜ける。

「伊作…お前…!」
「どう?僕お手製、無味無臭の痺れ薬は…最も、霧状にしてあるからわかりにくいかもしれないけれど。」

伊作は嬉しそうに微笑んで私を見下ろす。
その掌にはもう、瓶は無かった。かわりに、伊作の足元には無数の光る欠片が飛び散っている。


「僕、気付いたんだけどさ。」

留三郎が動けない私の後ろに横たわったままの竹谷を悠々と担ぎ上げて扉の前に居直った。
声を上げようとしたがしかし私の唇はもう、言葉を繋ぎたくても痺れで動かせない域にまで達している。

「うっうぅうっ…!!!!!」
「この液体とこの霧、合わさるとね。眠り薬みたいな効果が出るんだ。」
「こ、の…ヤロ…!!!」

私は何とか動けないかと這うように身体を進ませるが無駄なもので、段々と意識が遠退いていく。

ただ、最後に見えたのは



「ゆっくりおやすみ。小平太」



日常と変わらぬ笑みを浮かべる伊作の姿だけであった。






捨てていった貴方が悪い
(勿体無いじゃない?)

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