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手繰り寄せた、紅き糸/前編(竹久々)


「なあ、綾部…お前は何がしたいんだ?」
「おやまあ、久々知センパイ。こんにちわ」

見上げた先には紫色の制服。俺は、綾部喜八郎の掘ったタコ壺に……思い切り落ちたのだった。

「なんだってこうも沢山掘るんだよ!掘ったならキッチリ埋めろ!」
「それにしてもセンパイ、よく嵌まりますよねえ。」
「人の話を聞けええええ!!!!!!」

綾部は何とでも無いように話を進める。
確かに俺は、綾部の(、趣味なんだろうか?)タコ壺に何度か引っ掛かっている。
3・4個は避ける、だが5個目位に見落として…ドボン。特に、最近は1個目で。(何でだ…!)

「センパイがよく嵌まる理由、僕、知ってます。」
「は?」
「ズバリ、竹谷センパイですねッ。」

自信有りと言わんばかりに、綾部はやはり上方から瞳を輝かせていた。

「なっ何で、竹谷が関係あるんだ。」
「おやまあ、…お気付きでない?」

俺はわからなくて眉を潜める。綾部は心底驚いたような表情を見せた。(あまりいつもと変わらないが、)

「よくわかんないけど、早く引き上げてくれないか。委員会に間に合わなくなる…」
「………あ。」

ふと、綾部は俺から視線を外して辺りを見渡す。
穴の中にいる俺には見えないけれど。

「どうかしたのか?」
「久々知センパイ、竹谷センパイがいます。」
「え!」

ドキリ、心臓が跳ねる。
顔まで赤くなった気がするが穴の中は薄暗いので、綾部に気付かれることはない。(よっ良かった…)

「虫籠を持っている辺り、また毒虫が逃げたのでしょうねえ」
「そうか…なあ綾部、早く引き上げてくれって…」
「そうだ、ついでに久々知センパイも見つけてもらいましょう。」
「………はい?」

ポンッと手を叩いて綾部は去っていこうとする。

(た…竹谷を、此処に呼ぶ気…か?)

四年生の掘った穴ごときに落ちてしまっただなんて、(しかも案外深くて出られない…)知られたくない。
俺は必死に声を上げた。

「ままま待て綾部っ!竹谷だって委員会中なんだぞ!虫達で頭が一杯な筈―――――」
「大丈夫ですよー。竹谷センパイは久々知センパイの為なら来てくれますから。」
「……え」
「無自覚だなんて、可哀想な竹谷センパイ。……ま、竹谷センパイには借りもあるのでちょうどいい。何度も僕のターコちゃん達に綺麗に引っ掛かってくださるセンパイ共々、少し手をお貸ししましょう。」

面白そうに笑って綾部は本当に行ってしまった。
かわりに、入れ替わるようにアイツの足音が近づいてくる――――――








手繰り寄せた、紅き糸/前編(ああ、困るのに、なのに期待している自分が憎い。)

続いたりします!次は、竹谷視点!

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