twin eye(鉢雷)
「うーん」
「おや。また、悩んでいるのかい?」
「あ。三郎」
雷蔵は机に2つ置かれた硝子玉とにらめっこ。
赤と蒼のそれは、太陽の光を浴びてきらきらと輝いている。
「硝子玉か、綺麗だな」
まるで君の瞳のようだ。
あの日の澄んだ君の瞳のようだ。
ワタシの欲しクテたまらナイ君の瞳のようだ!
「いやね、先刻、学園長先生に呼ばれてちょいとばかりお手伝いをしたんだよ。」
「ああ、お駄賃ってコトか」
「そうゆうコト。」
「しかし、何故それで悩む必要がある?お守りにするか箱にしまうかで考えていたのでは無いだろう」
「まさか。違うよ」
おかしそうに笑う雷蔵に私も微笑を浮かべる。
雷蔵の笑顔は私を幾度となく救ってきた。それこそ、山のように(いや、どちらかといえば雷蔵は山より母なる海に近いかも、しれない)
だからこそ、私は欲しいんダ。
駄目ダよ、そんな表情を私に向けてしまってハ。
壊シテ喰ラッテ傷付ケテ、エイエンニシテシマイソウ!
「らいぞ…」
己が腕を雷蔵に伸ばし、欲するがままにしようと、爪を、立て、
「折角2つあるのだし、三郎に片方をあげようと思ったんだ!」
「え」
ギリギリ、彼の肉を掴む前に空を掴んだ。
ピタリ、一時停止。
「君は赤いのが好きかな。それとも蒼の方がいいかな。…考えてしまってね」
「………」
どうやったら悩み癖が治るだろう。苦笑しながら雷蔵はいう。
「三郎、君が選んで。僕はどちらも同じくらいに気に入っているから。選べないんだ」
掌に乗せられた硝子玉。
私だか、彼だかはわからないが、色素の薄い量のある髪と顔とがぼんやり映っている。(私?…ああちがうね、君だ。君しかいないじゃないか。)
「私は…」
「うん。」
「これがいい」
スッと…雷蔵の瞳を指差す。雷蔵は少しも動かない。
「これがいい、ちょうダい。」
欲しい欲シイホシイ
私の唯一愛する瞳
「今はまだ、駄目」
雷蔵は困ったように微笑み、でもはっきり言った。
(そっか、まだ駄目ナんだ)
「…そ、わかった。」
私はギュウと力一杯雷蔵
に抱きつく。
なんて落ち着く香りだろう。
「玉なんていらない。私には雷蔵がいればいい」
だからその君ヨリ劣る綺麗な硝子玉ハ君のモノ
「そう、なら、悩む必要無かったなあ」
先程より傾いた陽が私達を照らしていた。
twin eye
(そんなものより、私を見てよ、らいぞう!)
鉢屋は雷蔵に依存してると思う。はたから見ても解るくらいに。だけど案外雷蔵も鉢屋にかなり依存症だと思う。
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