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覚めぬまま、冷めぬまま(竹久々)

ふわり ふわり
心地良い。

ぼんやりとした俺の脳はゆるやかな眠りから覚めようとしている。(ああ、もう朝なのか…)
ふと、何とも甘い良い香りが漂う。

「むにゃっ…甘ぃ――― ?」

目をぐしぐしと擦り、ぼやけた視界をはっきりとさせる、と
俺とは違う、漆黒の髪が投げ出されていた。

(綺麗な黒髪。だ)

さらりとしたそれを一房持ち上げてパラリ、パラリ
とても柔らかい、愛しい

……
…………
……………!?!?

「えっ!?」

どうゆうことだろう。何で、兵助が此処にいる?

「んッ…」

(やべっ。起こしちまったか!?)

見じろいだ兵助に慌てて自分の口元をつぐんだ。

「……………」

しかし兵助は寝返りを打っただけで、また均一な寝息が緩やかに聞こえる。

(ほ…大丈夫だったみたいだな…)

今度は此方に顔を向けていて、俺はやはりコイツが兵助であると知った。
だが、いくら考えても昨日一緒に床に入った覚えは無い。
俺はゆるく息を吐いてから、起こさないように兵助を腕に抱き締める。

「…何かよくわかんねえけど…幸せだからいっか。」

愛しい温もりをギュウと抱きしめ、俺は今一度目を閉じた―――――――












程よくして、静かな寝息が聞こえてくる。
俺、久々知兵助はゆっくり目を開いた。

「狸寝入り位、わかれよなー」

自分を真正面から抱きしめている男に膨れっ面を向ける。だが、起きはしないようだった。

「………幸せ、か」

ふと、先ほど聞き取った八の言葉を口にしてみる。
誰にでもなく放ったそれは宙を舞って消えた気がした。

(忍を志す俺達が、将来的な幸せを手にすることが出来るのだろうか?)

自分で考えて背筋がひやりと冷たくなった
忘れようと頭を数回振るう。

「なあ、八。」





「もう少し位、夢見てていいよな?」







夢が覚めぬようにと



眠る彼に小さな口付けを落とした――――――――







覚めぬまま、冷めぬまま
(流れゆく刻を共に…)

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