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信愛なる君へ(竹久々)


スパーンッ!

「うわああああん!へーすけえぇええええ!」
「うぉっ!?」

勢いよく襖を開けられたかと思えば鉢屋がいきなり泣き付いてきた
その衝撃で俺は少しよろめく(仕方ないだろ!体格も身長もこいつのがデカイんだから!)

「うううっ」
「どっどうしたんだよ鉢屋」
「雷蔵がああああ」

話始めたと思えば鉢屋はじわりじわりと目に涙を溜めてボロボロと泣き出した


「とりあえず落ち着けよ、」
「うううううう………」

ぽふぽふと背を叩いてやると鉢屋は落ち着いたようで俺から手を離し、ぺたりと座布団に腰掛けた

「で?雷蔵が?」
「…雷蔵が、私よりハチのがいいって!」
「は?」
「ハチも雷蔵がいいって、言うんだ!」

どういうことだ?八が雷蔵を選ぶ?雷蔵も八を選ぶ?

竹谷、…ハチが雷蔵を、
、雷蔵を…?

くらりと目眩がした。
視界に入る鉢屋が一瞬ぐにゃりと歪む

「それ。本当、なのか?」
「ああ!」
「…」

彼奴は確かに俺を好きだと言っていた 呆れる位に真っ直ぐ真っ直ぐ
…心変わりをしたのだろうか?それとも今までが全部、嘘だったのだろうか?




「あー!やっぱり三郎此処にいた!」
「らっ雷蔵!」
「お〜、流石雷蔵だな…鉢屋の居場所がわかるなんて。」
「…………八」

襖から現れたのは雷蔵と八
俺は何故だか顔を合わせられない

「ごめんね兵助、三郎が邪魔しに来ちゃって」
「…ああ、いや…そのっ…」
「何だよー!俺邪魔モノ扱いかよ!元はと言えば二人がいけないんだ!」
「「…は?」」

雷蔵と八はポカンとした顔を向けたがすぐに何のことか理解したらしく苦笑いを浮かべた

「まだすねてたのかお前…」
「煩い馬鹿ハチ!俺の雷蔵をよくも!」
「煩いのは三郎だよ馬鹿」
「あたっ!」

パシンと軽く頭を叩く雷蔵
ニコニコとしてはいるが確実に黒いオーラが見えた

隣で呆れたような表情で立つ八に

胸が、キュッとしまる想いがする

「ら…雷蔵、八…」
「ん。どうした?兵助」
「本当、なのか?雷蔵が八を選んで。八が雷蔵を選ぶっての…」
「…それ、三郎から聞いたんだね?」
雷蔵が困ったように兵助を見つめる 俺は小さくコクリとうなづいた

「確かに僕はハチを選んだよ、ハチも僕を選んだ」
「!」


心臓が ドクリと 跳ねる
目頭が ワッと 熱くなった





「棒術練習の相手にね」
「…………へ?」

ぴたりと動きが止まる
俺の耳は今なにを聞き取った?

「どうゆう…こと?」
「うん、あのさ。僕ってあんまり棒術が得意じゃないだろ?そしたら次の実技のテストでそれが課題になっちゃって…」
「棒術に関しては俺の方が三郎より得意だからな、色々教えてやれる。そしたら三郎がすねやがって…」
「雷蔵と組むなんて許せるか!俺だって雷蔵に手取り足取り腰取り バキィッ! ぐあっ!」
「三郎、いい加減にしなよね。僕、単位落としたくないんだ。特に君の変態のせいで」
「……すみません」

鉢屋の体を足蹴にしたまま雷蔵は笑顔を崩さなかった
(雷蔵を怒らせることだけはしないようにしようと俺は心に誓う)

「ごめんね、兵助」
「雷蔵?」
「誤解させちゃったみたいだから」

それじゃあ僕達はお暇するよ。と言い、雷蔵は鉢屋を引きずりながら俺の部屋を後にした
それを見届け、残っていた八はゆっくりと俺の正面に腰を下ろす

「鉢屋にも困ったもんだな。雷蔵の事となると何時もああだ」
「本当、いい迷惑だよ」
「…なあ、兵助」
「ん。何」
「お前は、不安になったのか?」
「、何が」
「俺が兵助以外のやつを好いたのかもって」
「…………」
「兵助?」
「………………………少し」
「そ、か。なんだ、あはははは」
「なっ!何で笑うんだ!俺がどれだけお前を…!」
「俺を?」

ハッとして八を見れば深いその瞳に釘付けになる
真剣で真っ直ぐでだけど優しい八の、瞳に

「俺を、何だ?」
「おれは、八を」
「うん?」
「………………愛してる」

真っ赤であろう俺を八は満足そうに見てから
その逞しい腕で抱き締めてきた






「俺も、兵助を愛してるぜ」



信愛なる君へ

(愛して信じて、信じて愛す)

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あきゅろす。
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