高らかに、高らかに(竹久々)
「好きだ」
「……………へ?」
いきなり、いきなり何なんだろう。この男、竹谷八左ヱ門
俺を呼び止めたと思えば。いきなりだ本当に
「えっ、えっ…えっ!?」
って何で俺、焦るんだ?
真っ赤だろ絶対!何で何で何で
(どうしよう、どうしよう)
心臓がやけに煩い
彼奴の顔が見られない
「俺は…っその…」
「くぉら!鉢屋あああああ!!!!」
「うあっ!」
バキバキバキみしッ!
突如、部屋の扉の破れる音と共に男が入ってきた
こいつは、竹谷八左ヱ門だ
……ちょっと待てよ?どうゆうことだ?
これじゃあ八が、二人いる事になるぞ
一人は床に押し倒されて額に汗かいてる、もう一人は顔を赤くしながら首ねっこつかんで押さえ付けてる
(これは、つまり)
俺は身動き出来ない方の八を指差す
「…お前鉢屋か」
「バレちゃったじゃんかよ〜八ぃ」
「うるせえ!それよかお前何してやがるんだ阿呆っ!!」
「おおっと!」
ヒュッと八(本物)が拳を走らせるが八(偽物=鉢屋だ)は隙をついて素早くかわした
「ちょーっとお前らの手伝いしてやっただけだよ。恋のキューピッド鉢屋様とでも言っておこうか♪」
「三郎、お前、歯ぁ食い縛りやがれ」
八の拳が鉢屋に向く前に奴はヒョイと庭に逃げ出した
「待てッ!」
「悪いがそれは勘弁だ!お前の拳は俺でもちとキツイからな」
一度此方に目を向けたが鉢屋はもういなくなってしまった(きっと雷蔵の所に戻ったのだ)
部屋に残された俺と八、
あんなに慌ただしかったのがうそのように
「彼奴め…絶対一発かましてやる…!」
今だに八は立ちっぱなしで庭を睨んでいた。只俺はそれをポケッと見つめる
すると八は静かに口を開いた
「迷惑、かけたな」
「や、まあ、俺も気付けなかったし…うん、此方こそごめん」
「…………あのよ、」
「ん?」
「あれは、満更でもねえからな」
「は?」
「だから…そのっ…ああもう。」
「??」
八がボサボサの髪を更にがしがし荒らしてキッと今度は俺を睨んで叫ぶ
「お前が好きって事が!」
「!」
吐いた言葉を置き去りにして八はもうダッシュで消えていった
「……………」
小さくなっていく背を追い掛けることも出来ずにペタリと床に座り込む
「……………言い逃げかよ、馬鹿」
明日から一体どんな顔して話せばいいんだろう
(返事なんか、決まってんだろ)
高らかに、高らかに
(この声を言葉を想いを受け止めて下さい。)
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