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管理人が頂いた素敵な宝物です。
▽ひじり様より(文&絵)
*ひじり様より頂いた小説&絵です!





「ちょっと旦那!いい加減にしてよホント!」

「何を言っておる!これこそお館様への…」

「だぁーもう!こっちの身にもなれって言ってんの!」

上田城の一室。
包帯を手に持って叫びあっている忍とその主の長い口喧嘩はもう半刻程続いていた。

廊下を通り過ぎる女中や兵はそのやり取りを聞く度声を抑えて笑い、歳の若い小姓はどうしたらいいのか分からないと慌てている。
城内に居る忍達は主と言い合う長の姿に呆れながらも羨ましく、微笑ましく思っていた。

「うぐっ!」

「ほら!叫ぶとそうなるでしょー?」

「…佐助っ!お前も一度交えれば分かる筈! 歯を食いしばれぇい!」

「謹んで辞退致しまーす」

戸惑っていた小姓の目の前で急に襖が思い切り開かれ、スパーンと音が辺りに響く。

中から流れる様な動作で現われた佐助は瞬く間に木の上へと登ってしまった。
一拍遅れて所々に包帯を巻いた幸村がドタドタと出て来る。

「降りてこい佐助!」

「旦那が大将との殴り合いを自重してくれたら考えるかもね」

「無理でござる!」

「じゃ、俺様も無理」

喧嘩の場所が室内から外へと変わったことで、彼らの声の大きさは更に上がった。
遠くから笑みを浮かべ眺めている城内の人々など眼中にない幸村と佐助は、しばらく二人きりの世界から戻っては来ないだろう。

今さらだが、喧嘩の原因は先刻の信玄との殴り合い。
師弟の愛故に拳を交えると声を揃えて言うのだが痣をいくつも作る程の本気のそれはいつもの事。
しかし呆れつつそれを眺めるのも佐助にとっては慣れたことだが、今回気に食わないことが合ったらしい。

「だからお前とも拳を交えると…!」

「それは嫌だって!旦那に本気で殴られたら俺様死ぬから!」

「軟弱なことを申すな!」

木の幹が大きな音を立てて揺れた。
慌てて佐助は下を確認するが時既に遅い。
幸村の拳がまた幹にめり込んであまりの衝撃に落下してしまった。

「ってぇ……忍失格だろーこれ。自然破壊反対だぜ旦那」

溜め息を吐いて観念するように両手をあげれば満足げに笑みを浮かべる幸村の、差し出された手をとって起き上がる。

「加減はしたぞ。折れてはない」

横目でチラリと木を確認すれば拳の形が綺麗に抉れていた。
まともに食らったらと考えると背中に冷や汗が伝う。
しかしここで主張しておかねばきっと半永久的にあのもどかしい苦しみを味合わねばならない。

「そもそも、俺様の存在を忘れる旦那が悪いんだからな! 少しくらい拗ねたって罰はあたらないって!」

「佐助こそ、忘れてなどおらぬと何度言わせる! 俺はこんなにもお前の事を考えて…!」

幸村の世界に一瞬でも居なくなることが堪えられない。
それは信玄と殴り合いしかり、政宗との決闘しかり。
戦馬鹿の幸村は佐助のことなどすぐに視線を向けなくなってしまうのではないかと考えると忍ぶことすら恐くなる。

「でも旦那…!」

「っえぇい!いい加減にしろ佐助ぇ!!」

胸倉を思いっきり引っ張られて身体が前のめりによろめいた。
咄嗟に足を踏み出さなければ鼻の骨くらい折っていただろう。
馬鹿力とは恐ろしい。


――ちゅ


体勢を完全に立て直す前に軽い音をたてて唇に柔らかいものが触れた。
少し乾いていたそれは恥ずかしさに微かに震えて短い時間で離れてしまう。

「こ、こんなにもす、好いておるのに、忘れることなど出来るわけがない!」

幸村は分かったか!と頬を服に負けないくらい真っ赤に染めて唇を手の甲で押えている。

佐助の身体に熱と言葉に言い表せない震えが巡り、手を目一杯伸ばして目の前の主を抱き締めた。

「っさ、佐助?」

「あんた馬鹿だ、絶対馬鹿だ」

「なんと!馬鹿呼ばわりとはなんでござるか!」

「漢らしいのか可愛いのか分かんないよホント…」

腕に更に力を込めて体温の高い身体をもっとと掻き抱く。
胸が圧迫されて幸村から色気のない呻き声が漏れるがお構いなし……のつもりだったが忍として敏感である聴覚が別の笑い声を捉えた。

血の気が引きつつ顔を上げ幸村の向こうを見る。

「……や、べ」

「佐助…どうし…た」

佐助の視線を追いかけた幸村の表情は、青くなっている佐助とは反対に更に赤くなっていく。

彼らの視線の先には微笑ましく笑顔を浮かべている城内の人々と忍が居る。
二人の視線に気付き慌ててバタバタと仕事に戻っていった。

「あ…あはは…旦那?」

忍としてどうなんだと乾いた笑いを浮かべるも幸村を離すことなく自問自答を頭の中で繰り返していたが、幸村の体重が全てのしかかってきたことに気付いて肩を起こした。

「ちょ、旦那!」

目撃されたことにより彼の破廉恥の基準を大幅に上回ってしまったようで、目を回している幸村は完全に意識がない。

必死に呼び掛けるも幸村がぐったりとしなだれかかって来た為に、佐助も一杯一杯だ。

「起きてって!旦那ァ!」

叫んだ声は烏の羽ばたきと共にと吹いた風にのり、城内はおろか城下町にまでも響いたらしい。

フラリと町に立ち寄っていた風来坊が何事かと首をかしげるも町人達は顔を合わせて笑った。



おわり。





* * *



ほのぼのした佐幸ににんまりしてしまいます///
漢らしいけど可愛い幸村に振り回される佐助が羨ましいっ!
絵のほわほわした感じにもとっても癒やされました///
2人の表情にキュンvときます!(気持ち悪い発言失礼しましたっ!←

ひじりさんの愛ごと受け取らせて頂きます…っ!///
私もひじりさんが大好きですv

素敵な文&絵、本当にありがとうございました!

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あきゅろす。
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