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2倍の濃さで泣いた彼女 【夏切】




「夏切さんっ!」
「…えっ?」



それは、少し前の話。

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「ゲームつけたまな寝てるし…」



ちゃっかりクリアさせたゲームを持ったまま、ぐおっとソファで寝ている夏切を発見した。
黒白さんのご飯抜き宣告をされたみたいだったから、ご飯をこっそりと持ってきてあげたのに。



「寝てる時も、ゴーグルかけてるの?」



「目が可愛いのに…もったいないっ」



自分が持ってきたご飯と夏切のゴーグルを交互に見て、ふと思いついた。



「はい、夏切。ここにご飯置いておくね」



近くにあったテーブルにお盆とメモを置いておく。
そしてゴーグルに手をかける。



「…ちょっとの間、これ借りるね?」



「あっ、これ眼鏡だったんだ」



廊下を眼鏡をかけながら、歩く。
硝子を鏡かわりにしてファッションチェック。



「おっ。似合ってる!!」



でも、似合ってるのって決してプラスではないような。
複雑な気持ちでいるところに、全力疾走で麒春が走ってきた。



「麒ッ春ーーー!」
「あっ、いたいた!!!!」
「見てよ、これねー、」
「夏切さん!!!!」
「え?」

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で、今にいたる。


今もなお麒春は私を夏切と勘違いしたまま腕を引っ張られてずるずると引きずられてどこかに向かっている。



「やばいって、やばいって…っ!!」
「なー、麒春ー?」
「夏切さん!!…黒白さんに呼ばれてるんだって!!」
「は?なーーーんで?」
「…わかんねえーっ!あれとかあれとか!?」
(何したんだ?)



コンコン



「…し、失礼します…」
「失礼しまーーすっ♪」



部屋のオーラがすごく重く感じたけど、気のせいだろう。



「…そこに立ってろ。」
「はっい……」
「はーーーいっ!」




「夏切、元気そうだな…?」
「そりゃ、も、」



ガッ、ぷちゃっ



「(ぷちゃ?)」
台詞が言い終わる前に強い音が聞こえて、視界から麒春がいない事に気づいた。
すごく怯えていたので逃げたのと思い、周りをぐるっと見渡すと麒春が遠くの方でのびていた。



「…あれ?」



頬がくすぐったくて、触ってみるとぬるっとした感触と一緒に赤色の液体が手についた。



「血っ…?」


「さあ、次は夏切。お前だ」




悪寒が走った。
黒白さん、目が笑ってないですよ。




「待って待って、待ってーーーーっ!!」
「…さっきの元気はどうしたっ」




「私だってばっ!!」
「っ!?夏流っ!!」



いそいで眼鏡をはずすと、さっきまで出し続けていた殺気が消えていつもの黒白さんに戻る。
そのまま抱き寄せられた。



「良かった…、危うく夏流を傷つけてしまうところだった…」
「よ、良かった〜…」



若干、トラウマが残りましたが…。

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カチャ…パタン


「麒春の無事も分かったし、とりあえず…」
「あーーーっ、いた!!夏流、俺の眼鏡返せよ!」



「夏切ーーーーーーっ!!」



がばっ




「何…、え?お前泣いてねえ?」
「うあ〜こ、怖かったよ〜っ」
「めちゃくちゃ泣いてんじゃん」



何があったのか聞くのは後にして、よしよしと頭は撫でて落ち着かせてやる。



「後、夏切っ」



肩をがしっとつかまれる。



「眼鏡以外で夏切って認識されるように頑張ろ!?」
「まぢで何があったんだ?」


2倍の濃さで泣いた彼女




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