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*the others*
egoist2
とにかく怖かった。
 落ちていく不安。
 見放されるかもしれない恐怖。
 綱渡りの一月間。ついにその瞬間が来たのだと思うと、怖くて怖くて、考えることすらもしたくなくて、僕はいつもの常套手段に出ることにした。
 そう。
 徹底的な逃避、だ。

【egoist2】

 逃れられないのなら、やり過ごそう。それがいつものやり方だ。何も聞かず、何も見ず。両極を歩き、自分の領域で丸くなってじっと待つ。そうすれば自然と対象は遠ざかってゆく。接触しないで済む。
 接触すれば一貫の終わりだ。守るべき心を、己の精神を喰われてしまう。そうなれば向かう先は暗く冷たい精神世界の底だ。それだけは絶対に避けなければならない。
 僕は守っていた。ひたすら僕を。
 やらなくてもいいことを無駄にやる。そうすることで、その場所にいる理由づけが出来る。
 対象はまだ、動かない。
 僕はじっと待っていた。
 部屋は冷たく暗かったが全然苦にならなかった。
 しかし限界はどうしてもやってくる。精神はまだ均衡を保っている。
 肉体の限界だ。
 覚悟を決める時がきた。
 たとえ最悪の事態が起こっても、少しでもダメージを減らせるように自分で自分の精神を痛めつけておく。毒を少しずつ飲み、その耐性をつけるかのように。
 僕の読みが甘かった。対象が動くことは、結局なかった。
 僕は虎穴に入った。
 対象が僕を見る。その目ははっきりと僕を捉えてはいない。
 その言葉が、届く。僕は身構えつつも、異変に気付いた。言葉は、襲いかかってくるのではなく、届けられたのだ。
 僕の読みはまたも外れた。
 しっかりと、それでいて乱暴ではなく、諭すような言い方。
 心臓が張り裂けそうになった。辛うじて返事だけを返す。最後に対象の、僕を気遣った言葉。
 言えることは、確かなことは。
 僕はまだ、見放されていない……!
 情けなさよりも、ただ安堵感で胸がいっぱいになり、不覚にも涙がこぼれてしまった。



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