*the others*
freesia
フリージアは小さかった。
フリージアは良い子だった。
フリージアはそこで何事もなくただ良い子でいれば何の問題もなかった。
私はフリージアを見ていなかった。
しかしフリージアもまた私を見ていなかった。私はそれを知らなかった。
分からない。
フリージアが泣いている意味が分からない。
フリージアは良い子なのに。フリージアは泣いてはいけないのに。何事もなくニコニコとしている事が、フリージアの存在意義なのに。
それを、私は煩わしく思う。
何故。
何故フリージアは私の手を煩わせる?
何故フリージアが私の手を煩わせる。
私はフリージアの手を引いた。フリージアは付いてくる。フリージアは泣いている。
私はそれでもフリージアを見ていなかった。私の視線の中にはフリージアはいなかった。
見ない。
聞かない。
フリージアは大丈夫だ。何せ私が手を繋いでいるのだから。フリージアは良い子なのだから。
右へ左へ。目まぐるしく移動する私の手が重い。フリージアは私に付いてきているはずなのに。
足下を見る余裕がない。フリージアはそこにいる。しかし私はフリージアなど目もくれずに、遠くを見続ける。フリージアを越えて目線は先へ、先へ。そこへ介入したい。私が行かなければならない。フリージア?は。居るだろう?そこに。
いた。
フリージアは変わらずそこにいた。
そして見ていた。その幼い瞳で、私を見上げていた。
フリージアは私を。
私だけを。
必要としていた。
「──っ!!!」
それが全てだった。フリージアは全てだった。私の。
足下がようやく見えた。
私はフリージアを抱き上げ、固く、抱きしめた。
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