*the others*
餞
「言い訳は嫌いだわ」
と、女が言った。
何故なら、言い訳をする事によって自分は悪くない、だからこの結果は仕方無いと、駄目だった結果を“肯定”にしてしまうその行為が嫌なのだそうだ。
結果論で語られてはさすがに男としては何も言えなくなる。その結果を引き起こしたのは他でもない自分なのだから。
『だがそれは……!』
と言おうとした口を男は寸でのところでつぐんだ。
『理由があったんだ』
女は“過程”を見てくれない。その“結果”に行き着くまでの男の努力へは、決して目を向けてはくれない。
笑って許してくれなくていい。労いの言葉などいらない。
ただ、そういう“結果”になったのは単に男が不様だったとだけは思わないで欲しい。
そこにどれほどの男の想いがあったのかを、知って欲しい。
もし、彼女じゃなく別の誰かだったとしたら、違っただろうか。
出来ただろうか。しても良い、言い訳が。
そして男は女から離れてゆくのだ。
眩しい光が差す中で出会った彼女は、やわらかな仕草で男を抱きしめる。
肩胛骨の辺りから鳥類を模した白い羽を広げた彼女がわらう。右腕に男を抱き、左手で見覚えのある容姿の女の腕を引きながら。
足の無くなった男へと向けられたのは、心から労った様な笑みだった。
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