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*tales of…*
digging into…/主にセネル視点でギャグ。
 最近気になることがある。別に俺は気の利いたことなんて言えないし、どっちかというとこっちの方が楽だからいいんだけど…。
 ほら、まただ。

【digging into…】

「大人しくメルネスの娘を渡しな!」
「くっ!閃紅のメラニィだとっ?!」
 ウィルが悲痛な面持ちで叫んだ。
──いやいや、そこじゃないだろう、驚きたいのは。
──何だ?こいつは。何、頭に角なんかつけちゃってるんだ?
──あれか?どっかの原住民か、お前は?

「兄さん達を知ってるキュ??」
──お前が末っ子かよ!!どう聞いてもお前だけだぞ?
──声変わりしてる奴は!!

 つくづく思う。
 何で誰もつっこまないんだ?
 それとも俺のツッコミを待ってるのか?
 駄目だ…。俺はもう疲れた…

──決めた。──
 俺は、もう、つっこまない!つっこまないからな!
 何があっても!!

「もぉ〜、誰かつっこんでよぉ!!」
 ノーマが地団駄を踏んで訴えている。
 抗議したところで無駄だからな。俺はもうつっこむことに疲れたんだ。

 だけど今気付いた。
 ──このパーティ、ボケばっかじゃないか!!!
 もどかしい気持ちを抑えたまま、秘密の地下道を出る。
はるか遠くにゲート族の魔物が見えた。俺達に気付いてはいないようだ。
「おぉっ!ゲートじゃあ!!」
──ゲートはもういいだろ!!聖爪術ならもうもらったじゃないか!
 モーゼスが槍を掲げて闘いを挑もうと、今にも走りだそうとしている。ゲートを発見したら追い掛ける、という習性が染み付いてしまったようだ。
 早く止めないと!!
「待て!モーゼス!!」
──ウィル!助かった。もぅお前しか頼れるやつはいないな…。(ツッコミを)
「今度こそ生け捕りにしてやる!いいな!生け捕りだぞっ!!」
──………。
「何言ってんのー!このオヤジ!…って、待てぇ!山賊バカ〜!!」
──〜〜〜!!
「だあぁーーー!!!」
 耐えきれずに俺は絶叫をあげてしまった。
「お兄ちゃんが壊れたッ!!」
「違うだろっ!!」
「なっ、何が違うんだ。クーリッジ?」
 クロエがうろたえた声で俺に問う。
「だからっ!ツッコミどころが違うだろっ!!」
 つっこまないと決めたはずなのに。もう自分でも止められない。
「ウィルッ!ずれてる!お前はもぅ、ずれてる!!標本とか生け捕りじゃなくて、今の俺達の体力考えろよっ!つか、骨格標本とか作ってどこに置くんだよっ!あれか?今度はリビングにぶら下げるのか?!!」
 俺の剣幕にウィルがたじろいだ。何、『セネルなんかに言われた…』みたいな顔してるんだよ…!
「あはは、ウィルっち言われてやんの〜♪」
 ノーマがウィルをからかい、笑っている。
 ──お前もだよっ!
「ノーマッ!!」
「ひゃいぃっ?!」
 ノーマがすっ頓狂な声をあげた。まさか自分にもとばっちりが来るとは思ってなかったみたいだ。
「お前何だ、“山賊バカ”って!!いいか!お前、例えば“納豆バカ”と、“バカ納豆”は全然違うだろッ!」
 セネルを覗く全員の動きが固まる。しかし、セネルの凄まじい抗議は尚も続いた。
「“納豆バカ”ってのは、納豆に目が無い奴のことであって!“バカ納豆”ってのは、納豆そのものをっ……って、あれ?俺は何を言おうとしてたんだっ…け…」
 世界がぐらりと傾く。
「お兄ちゃんっ!」
「クーリッジ!!」
 大平原にセネルの倒れる音が遠くまで響いた。
「あらあら、セネルちゃん、大丈夫かしら?」
「結局、何が言いたかったんでしょうね、この人は。」
 薄れてゆく意識の中で思った。
──そういうツッコミが、欲しかったんだよ…!

──俺は、どうなったんだ?
──…そうだ。秘密の地下道から帰る途中で倒れたんだ。
──ここは…、どこだ…?
 トントンと何か食材を切る音が聞こえる。パンの焼ける良い匂いもしてきた。
「シャーリィ、もうすぐ出来そうだぞ」
──クロエ…?
「お皿出しましょうか」
──シャーリィ。飯、作ってくれてるのか。そうか、ここは俺の家か。
 何て心地良いのだろう。もうちょっと寝ていたい気もするけれど。セネルの睫が震える。
「あら、セネルちゃんが気がついたみたいよぉ」
──グリューネさん、ずっとついててくれたのか…。
 ゆっくりと瞼を開けると、俺の視界にまず飛び込んできたのは…
 ねじり鉢巻きを装着したグリューネさんと、レースが可愛い、ひらひらエプロンを着た、ウィルの姿だった。
「……ど…」

「どこからつっこめばいいんだーーっっ!!!」


【END】






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あきゅろす。
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