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*tales of…*
学園ヴェスペリア9〜falling girl〜
【falling girl】


 クラスメートの友人に、おまえにはなんか憑いてる、なんて言われたが、思い当たる節がないわけではないし、確かに厄介事にもよく巻き込まれる方だとは思う。
 けれども、人が誰かと出会うことに関してだけは別物なのかもしれない。人は常に誰かと出会っている。要するに、その出会いをどうするか、だと思うのだ。
 ――なんて、思ってはみたものの、そんな小難しいことを考えながらユーリは人と対峙するような少年ではない。もともと頭より体が先に動くタイプだ。
 思ったことは即実行。ユーリ・ローウェルはいつも、自分の感性に素直に行動しているのだ。
 だから、その瞬間もユーリは無意識に行動していた。
 見つけたのは、下校途中に校庭沿いの歩道を歩いていた時。人通りのほとんどないそこで、校庭と歩道との境目である柵のてっぺんに、突然手が現れた。無論、歩道側からは校庭の中は見えない。実際、手だけが現れた時、始めユーリは気付かなかった。それが、生徒の頭が出、足がかけられ、その時点で気付いた。
 ――あいつ、何やってんだ?
 と。
 何故か校門を通らずに柵を乗り越えて外に出ようとしているヴェ学の女子生徒が、足を滑らせたところで、ユーリの体が動いた。
 柵の高さはおよそ二メートル。想像しうる怪我は打撲、捻挫、酷ければ骨折――。
 少女が降ってくる。
「く……っ!!」
 少女の体の下に両腕を出すことは成功したものの、衝撃と重力に耐えきれずどうにかそれを逃がそうとそのまま少女を抱え込むようにしてユーリは仰向けに倒れた。背中に硬いアスファルトの衝撃。肺の空気が一気に吐き出された。
「はあっ」
 地面に転がってから思いっ切り息を吸う。
「な、なにやってんだ、おまえは!」
 少女を投げるように解放して、上半身を起こすとユーリは倒れたままの少女の背中に怒鳴りつけた。
「ご、ごめんなさい! まさか下に人がいるとは……」
「そういう問題じゃねえだろ――」
 同じように上半身を起こした女子生徒。白い肌。端正な顔。桃色の髪――。
 ――こいつ、確か……。
「……有名人」
「え……?」
 指差した先の少女の桃色の頭が、可愛らしく斜めに傾いだ。



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あきゅろす。
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