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*tales of…*
a fancy button(セネル×クロエ)/10000hitお礼SS。
【a fancy button】


 総ての物が色を失った様に白く浮上がった。来る…!
ドカアァァァンン…
「きゃぁあっ!!」
 余りの大音響にクロエは腰を抜かしそうになった。とりあえず近くにあった“もの”に力一杯しがみつく。
「近かったな…」
 ──!!?
 すぐ。本当に自分のすぐ上で聞こえた声に再度びくつき、“何に”しがみついているのかをようやく理解して慌てて飛び退いた。
「ぁ、わ…、すまない」
「あ…。いや」
 頬を紅潮させながらぎこちなく謝る。何だかセネルの頬も赤いようだ。ほてった顔に当たる雨が少し心地良かった。
 それにしてもさっきのは本当に近かった。もし自分達の上に落ちていたらと思うと、ぞくりとクロエの背中が粟だった。
 遠くの空がまた光り、ドオン…という音が聞こえ、クロエは震えた。
 クロエは雷が苦手だった。
 あの音も苦手だし、落ちる前の稲光も気持ちが悪くて苦手だ。
 ──また来たら…。
 先ほどセネルにしがみついたのを思い出し、ぎくりとする。
 ──不可抗力だ!わざとじゃない。
 ぶんぶんと被りを振り、必死に誰にする訳でもない弁解をする。
 大体、怖いものがあれば人は誰でも何かに縋りたくなるだろう。もしそこに何も無ければ、早くそれが去る事を祈りながら、縮こまって震えるだけだ。
 ──ここに居るのがレイナードやシャンドルでも、同じ事になった筈だ。うん。
 セネルが適当な洞穴を見つけた的な事を言っていたが、クロエには全く聞こえていなかった。

「クーリッジは苦手な物とか無いのか…?」
 ぱちぱちと眼前ではぜる焚き火を見つめながら、クロエはふと気になった事を聞いてみた。
「別に無い」
 さらりと返されてしまい、何となく理不尽な物をクロエは感じた。
「な…、何かあるだろう!ずるいぞ!私の秘密ばかり…」
 別に知りたくて知った訳ではないが、ずるい、と言われてしまってはセネルも返答につまる。
 苦手な物と言えるのかは分からないが、実は無い事も無かった。
「絶対に言わないと駄目か…?」
「当たり前だ!」
 容赦のないクロエの言葉に困った様に俯くと、観念してぶつぶつと呟いた。
「女…にくっつかれた時に、どうしていいのか分からない…」
「え…?」
 一瞬何を言っているのかがわからなかった。しかし、ノーマやグリューネさんに抱き付かれて固まっていた彼のを思い出し、クロエは納得した。
 そうか、そうだったのか。確かに彼の性格上だとすぐにでも振り払いそうなものを、決してそうしなかったのはその為だったのか。
 クーリッジにも可愛い所あるんだな、と微笑ましく思いながら、先ほど自分がしてしまった事に愕然とする。
「あ…、あの、クーリッジ、さっきは…」
「いや、いいんだ。クロエは…。その、大丈夫だから…」
 それって女として見られてないという事かと思ったが、焚き火に照らされた顔でも分かるくらいに紅潮しているセネルを見ると、何だかそうでもない気がしてきて、よく分からないまましばらく見つめ合っていた。


【END】





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