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*tales of…*
glad to see you back(ルーク×ティア)/ED後捏造話。ネタバレ有。みゆみゆ様、13000hitキリリク。
「ルークッ!本当に、本当にルークなの?!」
「よくぞ、ご無事で…!」
 アニスとナタリアの泣きそうな声が、夜のタタル渓谷に響いた。
「馬鹿野郎!!心配ばかりかけさせやがって…!」
「…全く貴方という人は、信じ難い程の生命力ですね」
 ガイとジェイドの声からも、嬉しさが滲み出ている。
 仲間達に囲まれた彼は少し恥ずかしそうに、特徴的な赤い髪の頭をがしがしと掻く。そんな所もあの頃とちっとも変わってなどいない。
 ふと。仲間達の間を縫って、優しく細められた彼の瞳がティアを見つめた。


【glad to see you back】


「どうかしたか?」
 渓谷からの帰り道。ティアとルークはパーティのしんがりを歩く。頭上から掛けられた声に僅かに肩をびくつかせ、声のした方へとティアはその碧い瞳を向けた。
「な…、何?」
「何って…。お前が元気なさそうに見えたからさ」
「そんな事…!」
 ある筈が無い。今日というこの日に。大切な仲間が帰って来たこの日に。元気が無い訳が無いではないか。
 ティアは今日程、ローレライに、始祖ユリアに感謝した日は無い。
「メシュティアリカ…」
 ルークの口から発せられた久しぶりに聞く言葉に、在りし日の激闘を。兄の最期を思い出しティアは淋しげに目を伏せる。
 世界は今、こんなに穏やかだけど、それはあの日々があったから。そして、それは彼と出会えた事で大きな渦となったのだ。
「あの頃みたいに、“ティア”って呼んで」
「…そうだな。お前の本当の名前、呼びにくいよ」
 そう言ってへへっと笑った彼を見、ティアは泣き出しそうになるのを懸命に堪える。眉根をきゅっと寄せると、悪かったわね、と、消え入りそうな声で呟いた。
 やっぱりだ。夢なんかじゃない。ルークは確かにここに居る。本当に帰って来たのだ。

「変わんねえな、ここも」
 自分の知っている風景がある事で、居場所が、帰る場所がある様に思う。
 変わらない。この場所も。そして、この少女も。
 それが素直に嬉しくて、だけど何故だか切なくて、悲しげな笑いをルークは浮かべた。
「変わったわ」
 隣りを歩く少女の言葉に、ルークは意識を戻した。
「世界は動いているもの。少しずつ、でも確実に、変わって行くわ」
 理屈っぽい考え方。毅然とした物言い。あの頃のティアそのものだ。少しも変わった素振りを見せない彼女の様子に、ルークはふっと笑みを零した。
「そして貴方も」
「俺も?」
 自分の一体どこが変わってしまったというのだろう。少しも実感が沸かずに彼女の次の言葉を待つ。
「髪が…伸びたわ」
「そう、だな…」
 そういえばあの頃は短くしていたのだっけ。その前はずっと長かったから、全然気が付かなかった。
「服も。変わった」
「うん…」
 なるほど、これが彼女のいう所の“変化”だというのなら、今、世界はどんな風に“変わった”のだろう。そして、自分はこれからそんな世界に順応する事が出来るだろうか。
「世界も変わったのか?」
 これから暮す環境について少し興味が出てきてそう尋ねると、ティアは何かを考えるように瞳を彷徨わせた。
「そうね…ダアトだったら、フローリアンを次の導師にしようっていう動きがあるわ」
「ははっ。大変だなー、アイツも」
「グランコクマでは、ピオニー陛下のブウサギに子供がたくさん産まれて大変だったわ」
「そっか。じゃあ次はどんな名前なんだろな。“ティア”とか付けられるかもしれねーな」
 ティアの話に耳を傾けながらもルークはある疑念を抱いた。
──ティアって、こんなに喋る奴だったっけ…。
 そう思い、こっそりと彼女の横顔を盗み見る。こちら側からでは、長い前髪に隠れてしまって表情が分からない。
「バチカルだって、貴方っ…の……っ」
 しかし、その声色から溢れ出すある事に、ルークは気付いた。

──違う。私は、ルークにこんな話をしたかった訳じゃない。
 もっと別の言葉を、ずっと言いたかった筈だ。
 つくづく自分の口下手さが嫌になる。さっきも皆が彼に掛けてあげた様な言葉が言えなかった。
 何故、何故。気の利いた言葉の一つも言ってあげられないのだろう、私は。
 とうとう、その場に立すくんでしまうと、ルークも歩みを止めた。
「ティア…?」
 気遣わしげな彼の言葉を聞いても、溢れる涙はもう、抑えが効かなかった。
 みっともない。一体何の涙だというのだろう。自分への悔しさ?彼が帰って来たという嬉しさ?
「何だよ、泣くなよ、ティア」
 頬を伝う涙を拭ってくれようとしたのだろう。ルークの指がティアの顔に近付けられると、それを拒否するかの様にティアは顔面を両手で覆った。
「う…、っく…!」
「お前、今日泣いてばっかだな。さっきも泣いてたろ」
 泣きたくもなる。それ程大きくなっていたのだ。この少年の存在が。ティアにとって。
 彼女の顔を隠す長い栗色の髪を優しく払い、そのまま両肩にぽんと、手を乗せられる。
「…お前でも、泣くんだな」
「当たり…っ、前でしょ……っ」
 激流の様な感情が、彼の居なかった時間を埋めるかの様にティアの内から溢れ出す。それは止どまる処を知らずに、真っ直ぐにルークへと向かってゆく。
「本当に…っ、貴方が居ない間……──!」
 言葉を遮るかの様に、ルークに抱きしめられる。初めて味わう彼の腕の中は、信じられない程の安心感があった。
「淋しかった…」
 ずっと、ずっと。身体の中に穴が空いた感じだった。何をしている時も満される事は無かった。
「…うん。うん。ごめんな、ティア」
「もう…、何処にも、行かないで」
「約束するよ。ずっと、ティアの側に居る」
 ああ、これでやっと私は心から安心する事が出来るのだろう。これからたくさん、彼に弱い部分を見せる事も出来るのだろう。彼は帰って来たのだから。
 もう、何処にも行く事は無いのだから。
 少し落ち着きを取り戻すと、しがみついていた身体を放す。今更ながら自分の弱い部分をさらけ出してしまった事が、少し恥ずかしくなった。
「ルーク…」
「ん?」
──あの時言った事、覚えてる?
 その言葉が果たして声となり、口から出ていたのか、ティア自身にも分からなかった。しかし声になっていても、突如強く吹いた夜風によって彼に届いていないだろう事は明らかだった。
「え…?今なんつったんだ?」
──ほら。貴方が聞き返す。
 だから、今は一番言いたかった言葉。

「おかえりなさい、ルーク」


【END】


【*an extra*】

「はゎ〜、行け!やれ、ルーク!」
「ほぉう…」
「んなっ!アニス!大佐も、はしたないですわよ!?(ドキドキ)」
「そう言うナタリアまで…。ほら!行くぞ!こんな時ぐらい二人っきりにさせてやろうや!」
「ご主人さ…!!」
「はーいはい、お前も行こうな〜」
「みゅうぅぅ!!」

【*a close*】

【後書き】
ここまで読んで下さってありがとうございます。

ED後のルークはアッシュと一つになったのでしょうか?わかりませんが、何か大人っぽい、落ち着いた感じを受けたので、そう表現させて頂きました。

でも日常に戻るといつもの彼に戻るんでしょうね、絶対。なんにせよ、今後の二人が楽しみです。

みゆみゆ様、駄文ですが、捧げさせて頂きますね。リクエストありがとうございました!






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あきゅろす。
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