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*destiny*
beautiful rain(シン×ルナマリア)/アスカ様3333hitキリリク。
どこにも行かないで。ずっとそばにいて。
その為なら
──あたしは──

【beautiful rain】

 戦闘区域を出たミネルバを、北欧の穏やかな空気が包んでいた。
 先程までの激しい戦闘がまるで夢であったかの様な感覚に陥りながら、シン・アスカは甲板の床に腰を降ろし、疎らに雲の散った空を見上げる。
──体が怠い…。
 昼下がりの陽光がぽかぽかと心地良い。シンの髪を優しく撫でる風が眠気を運んでくる。
 戦闘での疲労もあり、最近の睡眠不足のこともあり。襲い来る眠気をどうすることも出来ずに、シンはうとうとと寝入ってしまった。
 赤の上着に腕を通し、襟元のホックを留めると、ルナマリア・ホークはシャワー室を後にした。
──どうしようかな。
 艦長は次の戦闘に備えてゆっくり休め、と仰ったが、あの部屋に帰る気にはなれない。インパルスの調整をしようにも、機体は収納直後でMSスタッフによる修復・整備が行われている。
──!?
 ふいにルナマリアは悪寒を感じた。第六感、“女の感”とも言える、あれだ。
──嫌な予感がする。
「おぉ、ルナマリア!いい所にっ!」
 思いっきり顔をしかめて振り返ると、両手にたくさんの資料を抱えたアーサー・トライン副長が後方でにこにこと微笑んでいた。

 ルナマリアがようやく解放された頃には、もう夕刻を回っていた。
「副長ったら、こんな時間まで手伝わせなくてもいいじゃないっ」
──艦長に言いつけてやろうかしら。
 憤慨し、軍靴をカツカツと鳴らしながら廊下を歩く。
 その足は自然と例の場所へと向かっていた。
甲板への扉が開き、外へ出る。
「わぁ……」
 こんなに紅い太陽は見た事が無い。沈み行く夕陽を見ながらルナマリアは感嘆の声を零した。
 手摺を掴み、夕陽に見入る。少し冷たい風が彼女の髪をさらう。疲れがじんわりと取れてゆく感じがした。
──来て良かったな…。
 ルナマリアの鼻頭に滴が一つ、落ちた。
「ん…、雨……?」
 聞こえた声に振り返る。
 甲板の壁にもたれ掛かる様に座り込んでいたのは彼女の良く知る漆黒の髪の少年。
「──シン…?」
「ルナ…?何してんの、こんな所で」
 目をこすりながら、眠そうにそう言った。
「あんたこそ…って何、寝てたの?」
「そうみたい。それより雨が、……?」
 彼の反応で、ルナマリアも気付いた。
「うそ…」
 しとしとと、雨が降っていた。強くもなく、弱くもない、優しい雨。しかし、天上では鮮やかな夕空を彩っている。
「何で…、晴れてるのに…」
「狐雨……」
 初めて聞く言葉にルナマリアは耳を傾げた。
「オーブで、そう言ってた」
「そうなんだ…」
 ルナマリアは空を見上げた。彼女の髪を、顔を、全身を、容赦無く雨が濡らしてゆく。
「ルナ、風邪ひくよ?」
 ミネルバ内に戻る為だろう。シンが立ち上がった。
「なんて綺麗な雨。あたし、こんなの初めて見た…。地球ってすごいね…!」
 夕陽の光が雨を照らす。光を受けてきらきらと輝く滴はまるで宝石の様だ。降り注ぐ“宝石”の中で、ルナマリアが無邪気に笑う。
 そんな彼女にシンは目を奪われていた。
彼の視界の中でルナマリアがくるりと回ると、ピンクのスカートが遠心力でふわりと翻った。
──…!
 シンが頬を少し染め、顔をそらす。
──瞬間──
「きゃっ…!」
「ルナッ!!」
シンが瞬時に彼女の腕を掴み、引き寄せる。彼女は転倒を免れ、彼の胸の中にすっぽりと収まった。
「…ったく、こんな雨降ってる中ではしゃいだりするからっ…」
心臓が早鐘の様なリズムで鼓動を刻んでいた。転倒しそうになったからではない。
──驚いた。自分の腕を引っ張る力の強さに。自分を包む彼の肩の大きさに。
身体が硬直してしまう。身動きが出来なかった。
「ルナ?…──!!」
シンが何かに気付き、急いでルナマリアから手を放す。
「あ…、ご、ごめん。おれっ…」
ルナマリアがゆっくりと顔を上げる。濡れそぼった深朱の髪から雨滴が滴り落ちた。
シンの心臓がどきりと跳ねる。雨に濡らされた彼女は、いつもの勝気な彼女とは違って見えた。
 それはとても儚くて、それでいて
──とても綺麗で──
 見上げる彼女の深蒼の眸と、彼の真紅の眸が交差する。
 シンの頬をルナマリアの両手が優しく包み込んだ。
 少しだけ背伸びをする様に踵を上げると、ルナマリアはシンの唇に自分のそれを重ねた。
──!!?
 一瞬何が起こったのかが理解出来ずに、シンは目を見開く。ありえない程近くにルナマリアの顔。彼はゆっくりと目を瞑った。
「…っ、……っ!」
 呼吸が出来ず、少し息が苦しくなる。シンがルナマリアの背中に手を回すと、ようやく彼女は唇を放した。
「…っは、ル…ルナ」
 名前を呼ばれ、ルナマリアがびくっと大きく肩を震わせる。
「あ…、あたし…っ、ごっ…ごめ…なさっ…」
 おろおろと蒼の眸を彷徨わせる。
「──っ…!!」
 シンの腕を振り払うと、その場から逃げる様に扉へと走り出した。
──あたし、今、何を!?
 身体が自然に動いていた。
──シンに、あたしっ…!
「ルナ!!」
 追いついたシンに、後ろから腕を掴まれる。
「「──!!」」
一体自分は、ルナマリアを呼び止めてどうするつもりだったのだろう。彼もまた、身体が勝手に動いていた。彼女の腕を、無意識に掴んでいた。
「あ…、ぇっと……」
言葉が出てこない。言いたいことが何も浮かばず、シンは俯いてしまう。
「まもる、から…っ」
「…え?」
 ルナマリアの声に顔を上げると、彼女はシンに向き直り、柔らかく微笑んだ。
「あたしも、シンをまもるから…。ねっ。」
 照れ隠しで咄嗟に口をついて出た言葉だった。
 しかしそれは、ルナマリアに安心感と幸福感を与えてくれる彼への、紛れもない本心だった。
 お互いの頬が、みるみるうちに紅潮していく。
 シンは掴んだままのルナマリアの腕にわずかに力を込めると、
「……ぅん…おれも…。」
 今は、それだけを口にするのがやっとだった。
 しとしとと、優しい雨が降る。夕陽の光が雨を照らす。
 降り注ぐ“綺麗な雨”が、二人を包んでいた。


【END】
【後書き】
ここまで読んで下さってありがとうございます。

シ、シンが弱い!!こんな弱い子じゃないっ!!何かよく分からない話になってしまいましたι

そして──オーブで狐雨なんていうかっ!!シリィの地方では“狐の嫁入り”と言います。←どうでもいい無駄知識

アスカ様、すみません!もっとルナシン勉強します!!(土下座)こんなんですみませんが、捧げさせて下さい。リクエストありがとうございました!!





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