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*destiny*
happy days(シン←ルナマリア&ラクス&カガリ)/はや様リク。
 今日はきっと厄日だ。

【happy days】


「ルナマリア」
 特に用は無かった。
 この間の報告書だってもう提出してもらったし、何か手伝ってもらいたい事がある訳でも無い。それでも、よく見知った人間の後ろ姿を見掛けるとつい声をかけてしまう。アーサーもそういった人間の一人だった。
「……ぃっ?!」
 思わず小さな悲鳴が洩れてしまうほど、振り返ったルナマリアのそれは、剣呑な顔つきだった。
「……なんですか?」
「何って……、えらく機嫌が悪いな」
 口許が引きつり、鼓動が早まる。完全に怯えていた。一体どちらが上司で、どちらが部下なのか分からない。動揺が招いた思考不足は、余計な言葉を彼の口から飛び出させる。言わなくていい、一言。
「一体どうしたんだ?……え?ぅおっ!?」
 疾風のごとき早さで手が伸びてきて、アーサーの胸倉を引っ掴んだ。そのまま斜めの角度で顔を除き込まれる。
「どうしたもこうしたもありませんよ……」
 ドスの効いた言葉が、まるで蛇の舌の様にアーサーを下から舐め上げた。
「何なんですか、あの人達はっ!」
「……は?」
 今ここにあの上司が居たら間違いなく窘められていただろう、と思う様な情けない声が、間抜けに開いた口から零れる。
「ったく、ここをどこだと思ってるんだか!そんな事してる暇があったら政治しろっての!」
「あ、あの、ルナマリア?」
 すっかり混乱した彼に構う様子もなく、ルナマリアはがなり立てる。依然として胸倉を掴まれたまま、訳が分からない、という顔をしてみせると、ルナマリアは低く呻いた。
「ラクス様とアスハ代表ですよ……」
 折角のオフの時間がルナマリアの愚痴で潰れるのを、ここへきてやっとアーサーは覚悟した。部下の相談に乗るのも上司の務めだ。うん。
 確かルナマリアもオフだったのを確認すると、アーサーは何があったのかを聞いてみる事にした。
「実はさっき……」
 ようやく落ち着いたのか、ゆっくりとルナマリアは語り出した。

 ……何か今日もあの人達来てるみたいで、艦長の命令で艦を案内してたんです。
「こちらが格納庫になっております」
 あたしは満開やる気無しで、適当に案内してました。てか、案内とかもういいんじゃないかと思うんですけど。四回目ですよ?この人達来るの。
「ええ、分かっています。ありがとう」
 ですよね。と思いながら、律義に礼をするラクス様に、あたしは“どうも”とだけ返しました。すると、隣りを歩くアスハ代表は誰かを探す様に辺りを見回しながら、
「それより、アイツはどこにいるんだ?」
 なんて言うから、あたしは、
「は……、“アイツ”でありますか?」
 とぼけてやりました。彼女達の前で、彼の名前を出すなんてどうしても嫌だったし。
 するとその時、ラクス様の後ろに控えていた、付き人?マネージャー?みたいな人の無線から、くぐもった機械音が聞こえてきました。付き人?マネージャー?……もう付き人でいいや。付き人は、無線を耳に当て、何かを聞くと、ふんふんと頷きながら、“3メートル、2メートル”と訳の分からない事を言ったかと思えば……。
「?!」
 あたしは見ました。
 付き人が自分の右腕の下に忍ばせた左手の指で、ラクス様の背中を、トンッと押したのを。
「あら」
 押されたラクス様は長いピンクの髪をなびかせながらバランスを崩し、通路の角の方へ倒れます。ってか!何やってんの、付き人!助けなさいよ!とか思った瞬間。
「──っわ!!」
「あらあら」
 角から現れた人物にぶつかり、その人物によって助けられたラクス様。その姿は何かに似てると思ったら、あれだ。小さい頃に見た物語の、勇者様に助けられたお姫様。あれにそっくり。
「シ……」
「シン!」
 あたしの言葉を遮って、アスハ代表の驚いた様な、嬉しそうな声が一際高く響きました。ていうか!!
「シ……!」
「シン!どこ触ってんだ!!」
 あたしの言葉を遮って、アスハ代表の憤慨した声がまたもや高く響きました。視線の先は、ラクス様の胸元に添えられたシンの、手。
「し……っ、仕方ないだろっ、いきなりこの人が飛び出してくるんだから!」
「あらあらあら」
 顔を真っ赤にしながらシンが慌ててラクス様から飛び退きます。あたしとしては面白くない。盛大に面白くない。だってシンったら満更でも無い様な顔してるんだもの。
「素敵な偶然ですわね」
 いやいや!!偶然じゃないから!何か若干うっとりしてるけど、これ完全にヤラセだから!
「ずるいぞっ!ラクスばかり……」
「はぁ?だから、さっきのは、……っ!?」
 あたしが言いかけた瞬間、背中に違和感が走りました。突き付けられている硬い物には、あたし達には物凄く馴染みのあるもの。軍歴だって短くないつもりだから、迸る殺気から相手が何を思ってるかなんてムカツクぐらいに伝わってきます。
“おい。おい。何しよんねん、自分。いらん事言いよったらシバき倒すぞ、こら”
“うるっさい、黙れ。完全にヤラセじゃない、こんなの。大体、何なの?アンタのその喋り方。訳分かんないのよ”
 ゴリッ。
 痛っ!そこ骨!骨だからっ!何なの、もう、ムカツク!ていうか、どこ行くのよ!連れてかないでよ(あたしの)シンを!あたしだってシンに用……なんて別に無いけど……、って、痛た!だからそこ骨だってば、痛……、痛たた、痛い……

「痛いって!!ルナマリア!!」
「あ……、すみません」
 ようやく解放された首をさすりながら、アーサーはごほごほとむせ返った。少しだけ涙を滲ませながら、殺す気か、と言うと、
「いいじゃないですか、別に。副長の一人や二人くらい」
 などと、恐ろしい言葉が聞こえてきたので、アーサーはさっと青ざめた。冗談じゃない。いつまでもこの少女に関わっていたら、いつか本当に殺されそうだ。早い所切り上げなければ。
「そ、それじゃあ、な。まぁ、頑張れよ」
「ちょっと、副長!逃げないで下さいよ!」
「逃げてるんじゃないぞ。し、仕事……そう!やり残した仕事があったんだ!それじゃあな」
 そう言い残すと、アーサーは急いでその場を離れた。背後から低い声で、「クソ、逃げられたか……」と、聞こえてきた気がしたが、ぶんぶんと被りを振り、聞かなかった事にした。

 今日は厄日だ。メイリンから借りた雑誌には、今月の乙女座は最高だって書いてあったのに。やっぱり占いなんて信用出来ないな、と心から思いながら、細長い戦艦の廊下をシンは走る。走るったら走る。
 さすがに少し息が切れてきて、足を遅める。その場で膝に手を付くと、肩を大きく上下させながら息を整えた。
「さすがに……、ここまでは追って来られない、だろ……」
 全く。何だというのだ?自分が何か悪い事でもしたというのか?頭をよぎるのはそういった疑問ばかりだが、一向に身に覚えが無い。それほどまでに彼は“鈍感”という種に属しており、彼女達の想いにカケラも気付いていなかった。またそれが、プラントのアイドル歌姫と一国の代表首長だというのだから、周りの兵士達からの殺気も尋常ではない。だから余計に訳が分からない。どうして自分だけがこんな目に遭うのだ?
 あの後(ラクスとカガリに連れさらわれた後)、散々な目に遭った。初めは彼女達二人で自分を色んな事に誘おうとした。気が乗らないので断った。背中に銃口が当たるを感じた。今度はそいつに銃口が向けられた。このままだと本当に銃撃戦でも始まってしまいそうな雰囲気だったので、「ちょっと!何してるんです!」と、止めようとして──、それが始まりのゴングになってしまった。ラクスの付き人とカガリの護衛が揃ってシンを捕えようとしたのだ。急いでその場から抜け出すと、追ってきたので更に逃げた、という顛末だ。遠く後ろの方で、「多少の傷は構いません」とか、「生かして捕えさえすればいい」とか、確か言っていた様な気がする。
 思い出すとぞっとした。身震いを一つしてから再び歩き出す。と、その刹那。
「おったぞ!」
「させるか!!」
 ──っ!!?
 見つかってしまった。何てしつこい連中だ。とりあえずこの場から離れなければと、シンは走り出す。
 レクルームの扉を見つけると、素早く滑り込んだ。

「シン!?」
 レクルームへ飛び込んで来た人物を認識すると同時に、アーサーの頭脳が超速回転を始めた。
 シン→強奪戦の原因→青春→焼きもち→とばっちり→首絞め……イコール。トラブルの種。
 アーサーは慌ててレクルームを飛び出した。これ以上の面倒はたくさんだ。しかし、何故かシンが後を追って来る。
「ちょっ、何で逃げるんです!待って下さい!匿って下さいよ!副長室に!お願いしますよ!」

 自分の姿を見るなり、何故か即行で逃げ出した副長に、シンは声の限り懇願した。しかし、想い虚しく、返ってきたのは、
「来ないでくれ、来ないでくれー」
 という情けない叫びだ。冗談じゃない。今から銃撃戦が始まるかもしれないってのに。何としてでも捕まえなければ。そう気合いを込めて角を曲がった。相手の腕を掴んだ。
「きゃっ……!?」
 “きゃ”?
 掴んだそれは、細くて柔らかい。
「シ、シン?!」
「あ……、ルナ?」
 そこに居たのは紅い髪の少女。驚いて目を丸くしている。
「ルナ、どうしたの?」
「あたしは副長を探してて……」
 互いに混乱していると、またもや後方で騒がしい声と足音が聞こえてきた。それにシンが肩をびくつかせると、突如ルナマリアは何かを察して逆に彼の腕を引っ張る。
「えっ?」
「追われてるんでしょ?こっち!」
「わっ、ちょっ……、ルナ?!」

「……行った?」
「みたい」
 薄暗い部屋──というか倉庫の中は、互いの顔さえもはっきりと見えない。その中でシンが安堵の息を吐くのが聞こえた。
 ──ていうか。
 ルナマリアはここで初めて自分の置かれた状況に気付いた。
 ──あたしチャンスじゃない?
 今、彼女達は居なくて、隣りには彼が居て。逸る気持ちを抑えようと、深く息を吐く。何か喋らないと、と口を開きかけた。その時。
「何でこんな事になるんだよ……」
 その言葉にびくりとルナマリアの肩が震えた。同時に高ぶっていた気持ちはへなへなと萎れてしまった。
 そうだ。何を考えているのだろう。彼はこうして散々な目に遭ったというのに。これでは一緒じゃないか。自分も。彼女らと。
「……ここにいたら大丈夫だと思うから。それじゃ、あたし行くね……──?!」
 立ち上がろうとして、出来なかった。
「シン?」
 彼が腕を掴んでいた。微かに光の入る倉庫で、彼の紅い眸が見えた。
「……ごめん。もうちょっと、居て。ルナの隣り、何か安心する」
 泣くかと思った。心臓が壊れるのではないかと思う程、ぎゅっと収縮した。大丈夫?あたしの心臓はまだ大丈夫?
「……ちょっとだけだからね」
 心にも無い事をつい言ってしまう自分は可愛くないなぁ、とつくづく痛感しながら、ルナマリアはシンの身体に身を寄せた。


【END】

【*an extla*】

「はぁ、はぁ……、あれ、もう追って来ないな……。やっと解放されたかな」
「……何から?」
「か、かか……艦長!!!」
「アーサー!!!全くどこに行っていたの!!休憩時間はとっくに終わっているのよ?!!いつまでも戻って来ないで、何をしていたの!!!」
「……やっぱり厄日だ」
「何ですって!?」
「い、いえ!申し訳ありません〜!!」

【*fine*】



【後書き】

 ここまで読んで下さってありがとうございます。
 そしてすみません!!もう、謝る事しか出来ません。とりあえず謝りたい事を箇条書きでまとめました。

●アップが遅くなってすみません。
●訳分かんなくてすみません。
●キャラ壊れててすみません。
●尻すぼみですみません。
●多分要望通り出来てませんよね?すみません。

 とりあえずこれだけでも謝らせて下さい。
 そして、こんな駄文ですが、はやさま、捧げさせて下さい。
 リクエストありがとうございました!






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あきゅろす。
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