*destiny*
an impulce(シン×ルナマリア)/10000hitお礼SS。
【an impulce】
「シン」
また拗ねてる。すっかり慣れっこになった少年のこの表情に、ルナマリアはやれやれと嘆息した。
“触らぬ神にたたり無し”という概念は基本的にルナマリアの中には無い。
その為に彼の八当たりを受けて喧嘩になるのはしょっちゅうだった。だからといって放って置くなどという事は“世話焼き”の彼女には出来ない。
そして今も。
「まだ怒ってるの?」
「ルナには関係無いだろ!いいから放っとけよ」
眉をきっと吊上げてルナマリアを睨みながらシンは荒々しく言い返す。
いつもの彼の反応にいつもの様にカチンときながら小走りでシンの隣りに並んだ。大差無い身長といっても、怒りを足取りに滲ませながらどかどかと大股で歩くシンに付いていくには、普段の歩幅でな難を要する。
「おれは悪くない!」
「何もアンタが悪いなんて言ってないじゃない」
ただシンは自分の気持ちを表現するのが下手で、子供過ぎるだけだ。
以前からルナマリアはシンと誰かの衝突を見てきたが、シンの言い分も、これが納得出来る物が多いのだ。それも、自己中心な理由等では無く、誰かを慮った原因である事が多い。
──ほんとに優しい子なのよね。
誰もそこに気付かないけれど。
でもそんな彼の優しさに自分だけが気付いているのがルナマリアには少し嬉しくて、優越感を感じる所でもある。
そしてちょっと生意気だけど、そこがまた可愛いとも思えてくる。
いつも自分の感情に正直で、誰かの為に怒ってて。その度にルナマリアは少し複雑な、羨ましい気持ちになる。
シンに想ってもらえる人は幸せだと。いつか自分もあんな風に想ってもらえたらと。そう思ってしまうのだ。
「あたしは好きだよ。シンのそんなところ」
「は?」
そんなところってどんなところだよ、と怪訝そうに小首を傾げてこちらを見つめてくる。そんな可愛いところも全部。全部が好き。
「ほんと可愛いんだから、シンは」
そう言って、彼の手をとる。いつも何でもないかの様に頭を撫でたり、肩に腕を回したりするのに、何故かちょっと。本当にちょっとだけ、緊張してしまった。
「うるさい、ばか」
うっすらと頬を赤く染め、不機嫌そうにそう言いながらも、繋いだ手を振りほどこうとはしないシンを見て、ルナマリアは酷く安堵しながら、幸せそうに微笑んだ。
【END】
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