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*destiny*
my sweet sister(ルナマリア&メイリン)/はや様、15000hitキリリク。
 大好き。


【my sweet sister】

 ──あれ?この話、二回目じゃない?
 全くこれっぽっちも興味の無い、しかも単調で面白くもなんともない話から、一度聞いた内容がもう一度話されている(恐らく本人に自覚は無い)事に気付くなんて、あたしってばリスニングこんなに得意だっけ?と自分の隠された才能に驚きながらルナマリア・ホークはドリンクボトルから伸びるストローをぐりぐりと掻き回した。
「──って言ったの。超ウケるでしょ。…って、聞いてる?おねえちゃん!」
「はいはい。聞いてるわよ。ってか、さっきも聞いたわよ、その話」
 あれ、そうだっけ?とでもいう風に小首を傾げ、メイリン・ホークはそれから何も無かったかの様にまた語り出した。
 妹に気付かれない様にこっそりと溜め息を吐き、ルナマリアは残り時間を確認した。まだ結構ある。
 全く。休憩にもなりやしない。折角珍しく休憩時間がかぶったと思ったのに、メイリンの話す事といえば、レイ、レイ、レイだ。久しぶりに姉妹水入らずで話が出来るのに他に話す事は無いのだろうか。
 というのも、無理な注文である様な気がする。只でさえ突然の開戦に、進水式を待たずしての急な出航で、あの日からこちら、ずっと艦でのすし詰め生活を強いられている。テレビをつけてみれば地球でもプラントでも戦争関係だ。そんなものいちいちニュースで教えてもらわなくても直接現場にいるのだから近況など身をもって理解している。
 もしくは、あの“ラクス・クライン”。この二つが全テレビ局をジャックしていると言っても過言では無い様な気がする。それにしても、彼女の雰囲気はイメージチェンジにしては変わり過ぎだとルナマリアは思う。曲調も変わったかと思えば、女でも“うわっ”と思う程のキワドい衣装。男にとっては目の保養としか言えないありがたいチャンネルでも女からしてみれば、『ラクス様ってホント歌上手いしスタイルもいいよねー』『いいなぁ、私もあんな風になりたいなー』としか言い様が無い。
 とどのつまり十代の少女が興味を抱く様な、変わった、面白い話題が、無い。
 それに加えてこの手の話が妹は大好きだ。アカデミーの頃から、一体どこから仕入れてくるのだろうと思う程に“誰と誰が付き合ってる”だの、“誰は誰が好き”といった情報に精通していた。だからこういった話を話し出したら止まらないという事も、ルナマリアは解っていた。
「──でね、レイったら……」
 ──嬉しそうなカオしちゃって。全く……。
 明日には自分の身がどうなっているか分からない戦場の真っ只中で、こんなに幸せそうな笑顔を見せる妹にルナマリアは苦笑しながらも、少しだけ複雑な想いを抱く。
 妹の惚れやすい性格は昔から解ってはいるが、ちっさい時からいつでも自分の後ろをくっついて歩いたあのメイリンを。妹をこんなに幸せそうにしているのは、さっきから彼女の口から幾度と無く出て来る、レイだ。
 妹が産まれて間もない時の両親を取られたかの様な、変な嫉妬がルナマリアを満たす。レイの話など聞いても、『ふぅん。あのレイがねぇ……』としか感想が出て来ない。
 依然退屈そうな、それでいて拗ねた様な表情でストローをいじくる。思い出したかの様に中のドリンクを吸うと、すっかりぬるくなった液体に、ルナマリアの眉間に不機嫌そうな皺が寄った。
「あれ?ルナ達、オフだったのかよ」
 見知った声が聞こえた。それにどこか安心感を覚え、ルナマリアは声の主を見やる。漆黒の髪にクセを残し、軍服の襟を寛がせた相変わらずだらしない少年と、如何にも品の有りそうな薄い金の髪にこれまた端整な顔を持つ、先程の妹の話の中心人物だった少年が、レクルームの入口で立っていた。
「シン、レイ。お疲れ!あんた達もオフなの?」
「そんな訳あるかよ。…てか、何飲んでんの、ルナ?」
 ずかずかとレクルームへと入ると、シンはルナマリアの持っていたドリンクボトルを容赦無くひったくる。
「あ……、それ」
「うぁ…、何だこれ?ま…っずぃ」
 不味くない方がおかしい。もう捨てようと思っていた、すっかりぬるくなったドリンクだ。
「シン。油を売っていないで行くぞ」
「分かってるよ」
 そう言い残して二人はレクルームを後にする。
 そういえばと、すっかり大人しくなった妹を見やった。
 ──さっきまで“レイ”“レイ”言ってたくせに。
 いつもそうだ。好きな人の前ではもじもじと萎縮してしまう。自分の彼氏だろうに。レイと二人きりになったら一体どんな風になるのだろう。

 ──おねえちゃん、可愛い…──
 驚いた。何ともないかの様に平然とした様子を装ってはいるが、ルナマリアの頬は紅を落したかの様に色付いていた。男勝りだの何だのと言われている姉のあんな顔を、今まで何人に見せた事があるだろう。妹の自分だって滅多に拝む事が出来ないというのに。しかも、その顔を引き出しているのが、あの──。
 納得行かない。認められない。自分と年端も変わらない、子供っぽくてだらしが無いあの男の子に。おねえちゃんにはもっと相応しい相手がいる筈だ。
「…おねえちゃん、シンのどこが良いの?」

 言われて少しイラッと来てしまった。妹と同じ深蒼色の眸でキッと睨むと、メイリンがびくっと肩を強張らせたのが見えた。
 大人気ないなぁ、とルナマリアは胸中で反省した。解っている。今までにも何回かあったのだ。今回の様な妹の、自分を思いやってくれている発言は。
 しかし、“自分のもの”を馬鹿にされた様な感覚に、どうにも我慢出来ずに思わず睨んでしまった。
「あのねぇ…、メイリン。シンにだって良い所あるんだから」
「えーっ、どこに?」
 そんな事言わせないでよ、と思う。しかし、じっと自分を真っ直ぐに見据える妹に、ここでそういう事を言って逃げてしまえば、『ほら!やっぱり無いんじゃない』なんて言われるだろう事は目に見えていた。
 ──何でこんな事……。
 顔が熱くなるのを感じながら、ルナマリアは弱々しく呟いた。
「か…、可愛い所とか…」
「可愛い?シンが?!」
「他にも優しい…所とか……ちょっと!何よ、その目は!!」
 半ば呆れた様な妹の視線に、ルナマリアは既に赤くなった顔を更に紅潮させて喚いた。折角恥ずかしい思いをしながら言ってあげたと言うのに。というか、どうして自分だけこんな目に合わないといけないのだ。
「あ、あんただって!レイの一体どこが良いのよ!あんな鉄面皮!」
「な…っ、ちょっと!レイをそんな風に言わないでよ!レイだってすっごく優しいし、シンとは違って全っ然、大人なんだからっ!!」
「“違って”って何よ!シンだって、…そりゃちょっと子供かもしれないけど…、でもいざと言う時すっごく頼りになるのよ?!!」
 かなり恥ずかしい事を大声で喋っている事に自覚は全く無く、通りすがった人々が好奇や不審の目を向けても姉妹の口論はヒートアップするばかりで、レクルームに響く大声はしばらく止みそうには無かった。

「何なんだよ、さっきから…っ!」
 先程から自分の背中をじーっと見つめる視線にいい加減嫌気が刺し、シンは背後を振り返った。
 それで隠れているつもりなのか、柱の陰から朱のツインテールを揺らしながら、ひょこっと少女が顔を覗かせた。その表情は拗ねた様に頬が膨らんでいる。
「…納得行かない」
「はぁ?」
 訳が分からずに理不尽な思いを抱いた。しかし、直後の彼女の言葉でシンはこの事を一瞬で理解し、さらにその顔面を彼の眸と同じくらい真っ赤に染める事となるのだ。

「分かってるでしょうね?」
 何時に無く抑圧的な少女の物言いに、レイはその端整な顔を怪訝そうに歪めた。無駄口を叩く暇があったら機体の調整でもしろ、と言いたい所だが、何だか彼女が重要な事を言いたげな雰囲気を纏っていたので、次の言葉を待つ事にした。

 深蒼色の眸で挑む様に相手を見上げる。
 何であんたを選んだのか分からないけれど。あんなにもあんたの良い所を聞いても未だに納得出来ないけれど。それでも信じられないくらい幸せそうだったんだから。もうあの顔を引き出してあげられるのは、守ってあげられるのは自分じゃなくなってしまったのは、事実だから。
「おねえちゃん幸せにしてくれないと──」
「メイリン泣かせたら──」
「絶っ対に許さないからっ!!」

 眼力だけでモビルアーマーを一機くらい堕とせるのではないかと思う程の勢いで、少女は、そう言い放ったのだった。


【END】

【後書き】
ここまで読んで下さってありがとうございます。

彼氏自慢なんて、し出したら止まらないだろうなー、と思い、フェードアウトさせて頂きました。メイリンは、ルナマリアとシンの交際に絶対に反対するだろうなと思います。好きだからこそ、納得出来ないし、反対する。いつかは訪れる試練です。兄弟、姉妹仲が良い人は大変だと思います。

はや様、この様な駄文ですが、少しでも楽しんで頂けると光栄に思います。リクエストありがとうございました!






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