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*destiny*
a loadstone(シン×ルナマリア)/みゆみゆ様12345hitキリリク。
 ずっと。ずっと。

【a loadstone】

 繋いだ手から伝わる彼の温もりをずっと感じていたくて、目的の場所である自室に辿り着いてもルナマリア・ホークは手を離そうともせず、逆に彼の手をきゅっと握り直した。
「ルナ…?」
 紅い眸をきょとんとさせて、こちらを見つめるシンの視線を感じながらルナマリアはうっすらと頬を赤く染め、我ながら子どもみたいだと、自身を揶揄する。
 だけどこのまま別れてしまうのがとても忍びなくて、この後の彼に予定がありません様にと、精一杯祈りを込めてシンを見上げた。

「ね、喉渇かない?」
 そう言って自分を見上げる彼女が凄く可愛くて、何故だかシンは泣き出したい衝動に駆られた。
 ああ、彼女が生きていて良かったと、今日何度思ったか知れないその科白をまた頭の中で噛み締める。
 作戦とはいえ、彼女が単機、自分の目の届かない危険な場所に行くのだと思うと最初は気が気でならなかった。それは彼女の“大丈夫”という言葉を聞いても同じ事だった。
 しかし、こうして彼女は成功させた。それは“ミネルバ”にとっても、彼女にとっても喜ばしい事だったし、シン自身、途中、大切な彼女を守り通せたのだという嬉しさでいっぱいだった。
 たくさんの笑顔と称賛の言葉と拍手に囲まれながら彼女の細い身体を力一杯に抱きしめた、あの時の感触が。そして温かい温もりが。シンの手に、腕に、全身に蘇る。その何とも言えない幸福感を今また感じたくて、目の前の少女を抱きしめたくなった。
 しかしそうせずに、繋いだままの彼女の手をぎゅっと握ると、何か飲もうか、とだけ口にしてレクルームへと向かい歩き出した。

 戦闘が終わって疲れている筈なのに誘ってしまって、少し悪い事をしたかな、という罪悪感がルナマリアの胸をちくりと刺した。
 だけど、シンは優しいからきっと断らないだろうという確信も、実はあった。
 いつから自分はこんなに嫌な奴になってしまったのだろう。心の底で、彼から片時も離れて居たくないと、ずっと願っている。手に入れた安心感に身を任せながらルナマリアはシンに寄り添った。

 自分に擦り寄る彼女の柔らかな感触に必要以上に意識してしまい、シンは頬が熱くなるのを感じた。
 彼女よりも彼の方が少しだけ高いといったこの身長差が、丁度良い具合に彼の鼻先に彼女の髪が触れるという状況を作り出す。
 本当に自分のと同じ軍支給のシャンプーを使っているのかどうか疑う程、ルナマリアの髪は良い匂いがした。それともやはり、女の子だから何か特別な物を使用しているのだろうか。
 いずれにせよ、この状況はまずい。気を抜いたらすぐにでも腕を広げてしまいそうになるのを必死に我慢して、深く息を吐きながらシンは目を瞑った。

 気の所為だろうか。何だかシンが小刻みに震えている様な気が、ルナマリアにはした。熱でもあるのかな。寒いのだろうか。一体どうしたのかと、彼に尋ねようとルナマリアが口を開きかけた刹那。
「…っひゃ!?」
 指先から伝わる奇妙な感覚に、思わず頓狂な声を上げてしまった。
「あ…、ごめん。嫌…だった?」
「ううん!そんな事無い」
 急いで否定の言葉を述べ、彼を安心させるかの様に微笑み掛ける。その顔色は、彼女の髪と同じくらい真っ赤に染まっていた。
 普段慣れない感触の所為か、指が酷くくすぐったい。
 手は依然として繋がれたままだったが、その繋ぎ方はいつもの手を交差させた繋ぎ方ではなくて、指と指とを絡ませた繋ぎ方だった。
 所謂ところの“恋人繋ぎ”。
 少し繋ぎ方を変えただけなのに。ただ手を繋いでいるだけなのに彼との密着度が増した様な気がしてとても不思議に思えた。

 とりあえず嫌がっている訳では無い事が判ると、シンはほっと胸を撫で下ろした。
 それにしても、自分の理性の弱さには嫌になる。
一体いつから、この少女に対してこんな気持ちを抱く様になったのだろう。以前からルナマリアの事は“好き”だったが、それはレイやヴィーノ達に抱く物と同じであって、きっとこんなにも、どうしようも無く“好き”では無かった筈だ。
 狂おしい程の幸福感を胸に感じ、彼女の手を握る手にきゅっと力を込めると、心の底からシンは誓った。

──ずっとずっと。守り続けるよ。

【END】

【後書き】
ここまで読んで下さってありがとうございます。

一応、45話の直後と思って下さると嬉しいです。

みゆみゆ様、大変遅くなり、申し訳ありません。愚にも付かない駄文ではありますが、少しでも楽しんで頂けましたら光栄に思います。リクエストありがとうございました!






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