*destiny*
living in the ”tomorrow” (シン×ルナマリア)/FINAL PLUS捏造アナザーストーリー。はや様7500hitキリリク。
敵、味方関係無く、そこにある総ての戦艦、母艦から帰艦の意を告げる信号弾が発射される。
漆黒の宙を彩る赤や青の光は、さながら戦場に咲く華の様で。そこにいる軍人の誰もが動きを止めて、ただ見入っていた。
“帰っておいで”
“もう戦わなくていいんだよ”
鮮やかな光は、優しくそこにいる人々に手を伸ばす。
シンの紅い眸は、止めどなく咲き乱れる光弾をいつまでも映していた──。
【living in the "tomorrow"】
「ザラ一佐です。月面にて漂着していたザフト兵二名を保護……」
アスランによって救出されたシンとルナマリアは、“アークエンジェル”へと連れてこられた。
いざアスランと対面してみても、不思議と戦意は湧かなかった。
“インフィニットジャスティス”を降り、キャットウォークを歩く。当然と言えば当然なのだが、あれ程自分達の母艦と交戦した艦という事もあり、何とも言えない居心地の悪さがシンを支配する。
格納庫には、おそらくモルゲンレーテ、と思われる、の技術、整備スタッフが行き交い、懐かしい騒がしさが広がっていた。見ているだけでも、ザフトに勝るとも劣らない技術水準の高さが理解出来る。
──オーブの艦に乗るなんて…
思ってから一瞬考える。あの時言われた言葉がふとよぎった。
《了解しました。すぐにそちらに向かいます。》
格納庫の片隅に位置する、シン達には用途の判らない小さな小部屋に、無線が流れた。まだ自分達と年端も変わらぬだろう少女の声に、何を思い出したのか。ルナマリアの表情が曇った。
アスランが無線を切ると、小部屋に静寂が訪れる。外の騒がしさが嘘の様に、ここだけ隔離されてしまったかの様だ。
ルナマリアが、ここに来る途中に見た、ボロボロの状態で不時着していた自分達の母艦を思い出し、おずおずと口を開いた。
「あ、あの…、アスラン。“ミネルバ”は…」
その声に、シンが顔を上げる。彼も気になってはいたのだろう。あれには、大切な友人が乗っている。
「“ミネルバ”は…、君達も見たと思うが、動力系統を…損傷し、月面に不時着した。」
アスランの言葉にルナマリアの顔が青ざめる。
「だが、総員退艦して、クルーのほとんどは無事だそうだ…」
シンとルナマリアに少し安堵の様子が表れる。アスランは言葉を続けた。「君達に言っておかなければならないことがある」
不思議そうな眸が自分を見つめると、アスランは苦しそうに言葉を紡ぎ出した。
「グラディス艦長が、“メサイア”で戦死された。…レイも。その時に戦死した…」
衝撃が二人を貫いた。信じられない。信じたくない。艦長とレイが──?
「俺は助けられなかった…!」
アスランが悲痛に表情を歪める。
「そんな…!」
つい先程まで生きていた。会話だって交わした。在りし日の彼らが脳内に去来する。
“この"ミネルバ"クルーとしての誇りを持ち、最後まで諦めない各員の奮闘を期待する!!”
幾度となく危ない場面があった。艦長の采配があったからこそ、今まで生き残ってこられた。
“シン。ルナ。頼むわね。”
厳しかったが、優しい眼指しでいつでも自分達を見守ってくれていたことを知っていた。
「…うっ……!!」
ルナマリアがシンの腕にすがりつく。頭を俯かせ、声を殺して泣き出した。
“気にするな。俺は気にしていない。”
アカデミーから一緒だった。この大戦でだって、悩んでいる時は、いつだって側で助けてくれた。
“どんな命でも、生きられるのなら生きたいだろう。”
自分のことをクローンだと打ち明けてくれた。レイが導いてくれたから自分を見失わずに済んだ。
シンの眸からも涙が溢れた。それは止まることを知らずに、静かに頬を流れ続ける。
仲間の死を悼み、涙を流す二人に、アスランはもうそれ以上声をかけることが出来なかった。
その時短く電子音が鳴り、オーブ兵が二名、敬礼をして小部屋に入ってきた。
小部屋に入ってきたオーブ兵の一人は、シンに応急手当てを施すと、敬礼をして再び去っていった。
もう一人は、拘束具をシンの両手首に装着し、シンを拘束した。仕方ない。ここは“アークエンジェル”で、自分達はザフト兵なのだから。それにシンには、精神的にも抵抗する気は無かった。
──本当は、今の君達にこんなもの付けても意味が無いのだとは思うんだけどな…。
心の底で呟く。こんなことしなくても、もう彼らは脱走も抵抗もしないだろう事をアスランは知っていた。
続いてオーブ兵がルナマリアに近付くと、シンが立ちはだかり、オーブ兵を睨み付けた。しかし、ルナマリアは前へ出、自ら両手を差し出した。
「ルナ…」
「軍規よ」
ルナマリアにも拘束具を装着すると、オーブ兵は敬礼をし、小部屋を出ようとする。しかし、アスランがそれを呼び止めた。
「見張りはいらないと伝えてくれ」
それだけ言うと、了承の意を述べ兵士は去っていった。
「さてと…、俺ももう行かなくちゃならない。君達はここで待っているんだ」
信用しているのか、いないのか。そう言い残し、アスランは部屋を後にした。もしかしたら、そっとしておいてくれようとする、アスランの不器用な気遣いだったのかもしれない。殺風景な部屋に、シンとルナマリアの二人だけが残された。壁に背を付け、座り込む。
「何で」
沈黙を破って、シンが口を開いた。隣りに座るルナマリアがシンを見る。紅い眸には、いつもくすぶっていた怒りはもう全く見えず、虚ろな眸で、呟いた。
「何でおれって、生きてるんだろう……」
「──?!」
ルナマリアの眸が怯えた物に変わる。それに気付く様子もなく、シンは続ける。
「何でおれはいつも守れない…?なのに、何でこうやって、のうのうと生きて──」
「やめてよ!!」
耐え切れなくなり、ルナマリアが声を荒らげた。はっとなったシンが、ルナマリアを見る。
「そんなこと…、そんなこと言わないでよ。あ、あたし、あんたが死んだら生きてけない…!」
蒼い眸に涙をいっぱいに溜めて、しぼり出す様な声でシンに懇願した。涙が頬を伝い流れる。
「ルナ…」
拘束された両手をルナマリアの頬に近付け、人差し指で涙をすくう。ルナマリアは、シンの胸に顔を押し付け、肩を震わせて泣き出した。
「ごめん。ごめん、ルナ…」
胸が締め付けられる。両手を拘束されたシンには、泣きじゃくる少女を抱きしめる事も出来ず、ただ謝ることしか出来なかった。
うっかり欠伸を噛み殺してしまう。頭を二、三度振り、アスラン・ザラは自身を諫めた。
外は漆黒の宇宙の為に時間が掴みにくいが、すっかり夜半を過ぎていた。
まだやる事はたくさん残っている。ラミアス艦長は暇を見て休め、と仰って下さったが、そうもいかない。
顔でも洗おうと、格納庫へと向かおうとしていた足を反転させ、洗面所へと向かう。
展望デッキの前を通り過ぎようとしていた時に、丸く切られた窓から、中に誰かがいるのが見えた。それが誰だか判別すると、自然と足が展望デッキへと踏み入れられていた。
「こんな所にいたのか」
中で窓の外を見ていた人物が声に気付いて振り返った。その人物の拘束された両手首を見て、アスランは痛々しい思いに駆られる。
「その…、外してやれるものなら外してやりたいんだがな」
気遣わしげに呟くと、シンは窓の外に視線を固定させて応えた。
「…わかってます」
アスランがシンの隣りに並ぶと、四角く切開かれた窓から地球が見えた。こうして見ると、アスランは改めてその美しさに息を呑む。人工ではない、天然の風や空気の満ちた地球が、シンだけでなく、アスラン自身も好きだった。
「…オーブが…、撃たれなかったって判った時、悲しいんだか、嬉しいんだか解らなかった」
相変わらず視線は地球に釘付けになったまま、シンが唐突に切り出した。
「なんだか解んなくて、でも涙が出てきて…」
「悔しかったのか…?」
シンは議長の考えに酷く賛同していた。その議長がやると仰った事を、実行出来なかった事が。ザフトが負けてしまった事が悔しかったのではないか?そう考えたアスランの意に反した応えがシンから返ってきた。
「悔しい…。そうかもしれない。あぁ、またおれは駄目だったんだっていう……」
一瞬で理解した。そうだ。こいつは──…
「シン…」
「おれ、何も変わっちゃいなかった。何も出来てやしなかった。もう、二年前の様に大切な人を失うのは嫌だったのに……!」
目を伏せ、頭を俯かせた。一瞬垣間見えた表情は、苦痛に歪んでいた。
「…それが、戦争なんだ。」
自分達が乗っているのは兵器で、自分達は殺し合いをしているのだから。戦争に身を投じる者は、いつ訪れるかわからない死が常に付き纏っている。
「力があれば、変えられると思ってた。おれはただ…」
握り締めた両の拳が震える。
「大切な人を、平和な世界を、守りたかったのに…!!」
どうして自分とこの少年は、こんなにも立場が分かたれてしまったのだろう。
「目指す世界は同じだった…のにな。」
「なら!どうして!!」
どうして、アスランは、どうしてアークエンジェルは立ちはだかった?シンの紅い眸がアスランを射止める。眸がそう、問掛けていた。
アスランの視線がシンの視線と真っ向からぶつかる。翡翠色の眸でシンを真直ぐに見据えた。
「…デスティニープランが、どんな内容か知っているか?」
「……?」
訝る様な表情を向ける。やはり。一介の兵士には、その全貌は聞かされていなかった様だ。
「デスティニープランとは、個人の能力に合った役割を与え、そこに生きる人々を徹底管理する社会だ」
「徹底管理…」
「それだけだと、確かに戦争など起らず、平和で安全な世界なのかもしれない」
そう。確かに表面上では聞こえはいい。だが──。
「だが、そこに住む人々に選択権は無い。役割を果たさない人間は、容赦無く淘汰する!……そういう、世界なんだ…」
シンの双眸が見開かれる。混乱しているのだろう。頭を抱えようとして、拘束具に邪魔され仕方無く両腕を降ろす。
「おれたちは、その考え方に賛同出来なかった」
一瞬、目を伏せ、もう一度毅然とした眸を向けると、シンに語りかけた。
「人は生きている限り、色んな道を選ぶ事が出来る。いくらでもやり直す事も出来る」
だから──。
「だから俺達には、“明日”があるんじゃないのか?」
瞬間、シンはフラッシュバックした。無垢そのものの少女の姿が脳内に去来する。
“だから、シンとはまたあした…”
“あしたね。あした……”
「おれ…、おれは…っ!」 記憶を操作され、戦う為だけに生かされていたステラ。
“ステラ、きのうをもらったの。やっと…”
彼女の願いは果たされたのだろうか。
「アスラン…ッ、おれ…」
唇を噛み締めながら、泣きそうな表情で見上げてくる。アスランはシンの肩を優しく叩いてやった。
「お前は何も間違っちゃいない。戦争に正解も間違いも無いんだ。だが、お前は生きているじゃないか。…だから明日がある」
もう一度、ぽん、と肩を叩くと、アスランは踵を返した。
「また、明日だ。シン」
そう言い残して部屋を後にする。
「あ、えと…」
扉の外で待っていた人物が、もじもじとうろたえた。
「中、入ったらどうだ?」
苦笑しながら声をかけると、その人物は少し頬を染め、展望デッキへと消えていった。
かけられた声にシンは振り向いた。
「ルナ…」
先程の小部屋での事を思いだし、シンが謝罪を口にすると、ルナマリアは何でもない事の様に笑ってみせた。シンの隣りに立ち、地球を窺う。そして、唐突に振り返った。
「でも、両手が使えないのがこーんなに不便だったなんて、思ってもみなかったわ!」
拘束された両手を開いて、ひらひらと振ってみせる。
「お手洗いに行くのにも見張りに頼らないといけないなんて、人権侵害だと思わない?」
心外そうな面持ちで言われ、思わずシンは破顔してしまった。自分が元気づけられている事に気付いた。
いつもそうだ。この少女は、自分がどんなに辛くても、苦しくても、周りばかりを気遣う。
かつて、彼女の妹を殺したと思っていた時、自分を励ましてくれた様に。現に今も、少し無理をしているのが分かる。頬にうっすらとついた、涙の跡で。
「ほんと、不便だよ」
こんなにも健気で愛しい少女を抱き締める事も出来ない。
「ルナ。…目、瞑ってみて。」
「え…、何、急に?……これでいいの?」
言われた通りにルナマリアは目を瞑る。シンはそっと自分の顔をルナマリアの顔に近付けた。その瞬間──
「「!!?」」
信じられない程近くで見つめ合う。鼻先が触れ、くすぐったい。顔を離し、お互いに赤面した。
「な…っ、なんで目、開けるんだよっ!!」
「…だって、そ…、そんなことするなんて、思わなかったし…」
「嫌なら…、そうと…」
「嫌なんて言ってないじゃない…!」
虚を突かれ、シンは目を丸くする。ルナマリアが依然紅潮した顔で見上げてくる。シンの眸が優しくなった。
「いいの?」
問うと彼女はこくりと頷き、眸を閉じた。
「んっ…」
唇を重ねると、ぴくりと肩を震わせてルナマリアが反応した。シンはルナマリアの唇に触れ、その感触を確かめる。
生きていること。
明日があるということ。
明日を生きていくということ。
自分達がいずれ捕虜という立場から解放されて、この拘束具を外す時が来たら、一番にルナマリアのことを抱き締めよう。ぎゅっと、力いっぱい、抱き締めてやるんだ──。心の底で、シンはそう誓った。
唇を離すと、お互い、頬が上気しているのが分かる。
「ルナ」
「なぁに?」
ルナマリアの優しい眼差しを受け、シンは微笑む。
心穏やかに。
囁いた。
「ありがとう。ルナが生きていてくれて、うれしいよ」
【END】
【後書き】
ここまで読んで下さってありがとうございます。
FINAL PLUSのアナザーストーリーという事で、まず思ったことが、シンを言い聞かせるのではなくて、シンの事を誰かが認めてくれる、という事でした。でも、それはルナマリアではなく、というか、彼女は寄り添って支えてくれたので、上官みたいな人に認めてもらえればと思いました。そこで、アスランに白羽の矢が立ちました。でも、アスシンではないですから…!(逝)
はや様、こんなぐだぐだな駄文で申し訳ありません!!かなり独断と偏見が入っております。結局何が言いたかったんだ!みたいな感じです(爆死)苦情、いらっしゃいませです…!リクエスト、ありがとうございました!
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