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*destiny*
special treatment(シン×ルナマリア&レイ×メイリン)/はや様7000hitキリリク。
「え、上陸許可?」
 自室のインターホンが鳴らされ、シンがドアを開けると、ルナマリアが腰に手を当て、焦れったそうな表情で待っていた。

【special treatment】

「そーよ。時間が勿体ないから早くして」
 言いながらすでに私服に着替えたルナマリアが、シンの袖を引っ張る。
「わ、わかったから、引っ張るなって!おれまだ軍服だぞ」
 いつもは妹と一緒に買い物に行く筈の彼女が自分を呼びに来たということは……相当な量を買込むつもりだろう。憮然とした表情でルナマリアを見る。
「…てか、何でおれがお前の買い物に付き合うことになってるんだよ…?」
「へぇ、そういうこと言っちゃうんだ。あの事、みんなにばらしちゃおうかしら?」
「はぁ?」
 あの事って、どの事だ?思い当たる節は……有り過ぎる。不安になったシンは易々とルナマリアのハッタリに引っ掛かった。
「わかったよ。買い物でも何でも付き合えばいいんだろ!」
 半ばやけくそ気味に了承すると、ルナマリアはにっこりと微笑んだ。
「よろしい。」

「もぅ行ったよね…?」
 入念に人の気配をチェックし、柱の影からそろりとと足を踏み出した。
「何をこそこそしている、メイリン」
 レイに指摘され、メイリンは頬を膨らませてみせる。
「だってぇ、こんなとこ、見られたくないんだもん。おねえちゃん、ぜぇーったい!うるさく聞いてくるに決まってるんだからっ!」
 何がそんなに不満なのだろう。聞いてくるなら見せつけてやればいいのではないか?彼女の言葉に少し失礼なものを感じ、レイの端整な顔が不満に歪んだ。
「行こっ、レイ」
 文句の一つでも言いたい所だが、無邪気に自分の手を取り走り出す彼女を見て、今だけは目を瞑る事にした。

「ぅわぁ……」
 メイリンの口から思わず溜め息が零れた。
──可愛い〜……
 ガラスケースの中できらきらと可憐な光を反射させる小さなピンクトルマリン。シルエットは、この間雑誌で見た、今評判と言われているクラウンだ。
 自分は一応軍人で。リングなど持っていても用途が無いことは、頭では理解している。
 しかしながら、自分の中の正直な乙女心が、そのリングから視線を外させてはくれなかった。
「これが欲しいのか?」
 頭上からかけられた声にびくりとしながら振り替える。自分は一体、何分これを見ていた?
「え?あ、うん、でも使い道無いよね。しかも高いし。…次行こっか!」
 急いで出口へと向おうとするが、レイに呼び止められる。彼は懐から財布を取り出し、メイリンに尋ねた。
「何号だ?」
 まさか、買ってくれるというのか?あまりの驚愕に、声が出せない。すると、レイがメイリンの手を取った。
「9…、いや、7か?」
 メイリンの頬が一気に紅潮した。
「いっ…、いいよ!悪いし…。っていうか、これ、めちゃくちゃ高いし!」
 必死で恐縮するメイリンに、普段の艦内でのおねだり上手はどこへ行ったのか、レイは薄く微笑んだ。
「気にするな。こういう時でもないと、金など使わないからな」
 確かに、生活必需品の大半は軍で支給されているし、ましてやレイなど滅多に金を使うことは無いと思うが…。
「ほ、ほんとにいいの…?」
「ああ」
 しかし、メイリンは先ほどのクラウンのリングではなく、別のガラスケースをちらりと見やり、
「こっちがいいなぁ…」
 控え目な声で呟いた。

「ふふっ」
 嬉しそうに左手を頭上に掲げる。太陽の光に当てると、きらきらと輝いた。「レイ、ほんとにありがとう!ずっと大切にするねっ」
 彼女が選んだのはずっと見入っていたゴールドのクラウンではなく、シンプルなシルバーのリングだった。
 返事の代わりに微笑む。こんな笑顔が見れるなら、何でも言う事を聞いてしまいそうだ。だから彼女はおねだりが上手なのか。口に手を当て、くすっと笑う。その指には、彼女の要望によって、彼女と全く同じリングがはめられていた。

 今のシンの気分は最悪だった。前が見えない。腹も空いてきた。
 予想通りルナマリアは大量の買い物袋をシンに預け、一人涼しい顔で前を歩いている。大体、何だってこんなに服を買込む必要があるんだ?着る機会もないだろうに。気付かれない様にこっそりと溜め息を吐く。時間が勿体ない。
──解ってんのかな。
 二人だけでの外出。結構楽しみにしていたのに…。

──シンったら、解ってんのかしら。
 前を歩きながらこっそりと溜め息を吐く。何を着ても“いいんじゃないの”ばかり。せめてシンの前でだけは可愛いく居たいのに。折角の二人だけでの外出だというのに、自分だけがはりきっているだけなのだろうか。
 そういえばお腹も空いてきた。何が食べたいのか提案する為、振り返る。その時、角から人影が飛び出してきた。
「あっ…」
シンは大きな袋を抱えている為に前が見えていない。
「きゃっ!」
「ぅわっ?!」
 ぶつかった女の子が後向きに倒れる。抱えていた荷物が散乱した。
「だ、大丈夫……えっ!?」
 倒れた女の子に手を伸ばしかけて、ルナマリアは目を見張った。そこで尻餅を付いていたのは──
「メイリン?!」
「お、おねえちゃん!」
「だから行っただろう。前を見ろと」
「レイ!お前何で、こんなとこに!?」
 行き交う人々の邪魔になっている事にも気付かずに、混乱するばかりだった。ただ一人、表情一つ変えないレイだけを除いて──。

「何?メイリン。あたしの顔に何か付いてる?」
「えっ?ううん。何でもない…」
 急いで目を逸らし、グラタンに口をつける。成り行きで四人で昼食を摂ることになっていた。
 もう一度ちらりと姉を見る。驚いた。てっきりあれこれ聞いてくるかと思っていたのに。気にならないのだろうか。わたしとレイの事──。
「で、次はどこに行くんだ?」
 パスタを食べる手を休め、唐突にレイが口を開いた。
「あ、えっとぉ。見たい映画があったんだけど…」
 
 何だってこんな事になったのだろう。ルナマリアは何が原因なのかを探ってみる。
“見たい映画があったんだけど…”
「きゃあぁっ!!」
 メイリンが隣りのレイにしがみついた。
 それがこのホラー映画だった訳で。
“ね、おねえちゃん達も一緒に見ない?それとも、何かこの後用事ある?”
 要するに怖かったからあたし達にも付き添って欲しかった訳で。
──てか、何でそんなわざわざ人気の無い所に逃げてくのよ。
 とか突っ込んでみる。こういうときにびくびく震えてた方が可愛いのだろうか。……妹の様に。次に怖い場面が来たら抱き付いてやろうか。隣りに座るシンを横目で見やる。
──……寝てるし…!!
 シンの足をヒールで思い切り踏んづけてやった。
「のわはぁあ!!!」
 場違いな場面に、違う意味での悲鳴が響き渡った。

「あぁ、面白かったぁ。ね、レイ」
「あぁ。傑作だった。」
──!!?
 レイの言葉に大いにびくつきながら、ルナマリアはカプチーノを口にする。
──レイったらああいうのが好きなのかしら。
「あのお墓のとこなんか、超怖かったよね」
 シンに話が振られる。しかし、彼は煮え切らない返事を返し、カフェオレをすすった。
「へ?えと、あぁ、うん。マジ怖かった。」
──当然の反応よね。寝てたんだから。
 ルナマリアは半眼でシンを見やる。
「そろそろ艦に戻るぞ」
 コーヒーを飲み終えたレイが時間を確認し、とうとうその言葉を告げた。
「あっ、そうだ!ごめん、レイ。もう一件付き合ってくれない?すぐ終わるからっ!」
 店を出るなりそう言ってきたメイリンに対し、レイは渋々了承した。
「ありがとう!と言うわけで、おねえちゃん達とは一旦お別れねっ!」
 嬉しそうに微笑んだ。
「なるべく早く帰ってくるのよ」
「解ってるわよぉ。」
 いつものやりとりを終え、ルナマリアと、再び荷物を抱えたシンが去って行く。メイリンは急いで追いかけ、シンの腕を掴んだ。
「な、何だよ、メイリン!?」
 困惑するシンの耳元でメイリンが何事かをこそこそと囁くと、彼は顔を真っ赤にして絶句した。
 そのままツインテールを揺らし、レイの元へと走っていった。

 対岸に“ミネルバ”が見える。赤く大きな夕日が沈みゆく海を眺めながら、港沿いをシンとルナマリアは無言で歩く。
 夕日に照らされたルナマリアの横顔を見、先ほどメイリンに言われた言葉を思い出した。夕日に負けず劣らずシンの顔が真っ赤になる。ふるふると被りを振ると、意を決して口を開いた。
「ルナ」
「何?」
 更に深みを増した深朱の頭が振り返る。
「荷物。一つ持てよ」
 言われてルナマリアはぎくりとした。さすがに機嫌を損ねてしまったのだろうか。
「あ、そうね。ごめんね、ずっと持ってもらっちゃって」
 そう言うと、一つ紙袋を受け取る。右手に抱えた。
 すると、その瞬間に左手が、温かく少し大きな手にふわりと包まれた。
「シン…?!」
 驚いて隣りを歩くシンを見るが、顔を逸らされてしまったので、表情が窺えなかった。ただ、耳だけが夕焼けの中でも分かるくらいに赤くなっていた。
 きゅっと手を握り返され、心臓が一つ大きく跳ねた。手を繋いだだけなのに、なぜこんなにも、どきどきするのだろう。
 シンの心を羞恥心が襲う。しかし同時に、幸福感と満足感にも満たされていた。
“おねえちゃんのこと、大事にしてあげてよね”
──言われなくても解ってるさ。ルナはおれにとって──
 誰よりも大切なひとなのだから。
 一つに繋がった影が長く伸びる。真っ赤に染まった夕焼けの港を、ただ黙って手を繋ぎながら歩いた。


【END】



…おまけ…


「おねえちゃん、聞かないの…?」
「何を?」
「や、ううん、別に」
──ほんとに解ってないみたい。超鈍感!
──解ってるわよ。あんたとレイの事でしょ?
 おそろいのリングまでつけちゃって。ま、前から知ってたけど。こそこそしてたけど、バレバレだったわよ?
 でも…、おそろいのリング。いぃなぁ……。


【fine】

【後書き】
ここまで読んで下さってありがとうございます。

今回、初めてレイメイに挑戦させて頂き、とにかく、各キャラを壊さない様にするのが精一杯でした。若干(?)レイが壊れてますが。ではここで、恒例の突っ込みを。

何の映画だよ!!てか、この港町どこだよ!映画館あるのかよ!そんな都合良くばったり出会うか!服の紙袋、手提げじゃないのかよ!パチンコか、コルァ!!
えー、デートを考えた時に、(いきなり)シンルナってどんなデートをするのだろう、と考え込まずにはいられませんでした。シンルナよりはレイメイの方がデートらしいデートをするのではないか、という考えは捨て切れませんでした。

はやさま、Wデートっぽくなりましたでしょうか?恥ずかしながらシリィはWデートと呼べる物は未経験なので、あっぷあっぷしながら、でも楽しく書かせて頂きました。こんな駄文ですが、少しでも楽しんで頂けたら幸いです。リクエスト、ありがとうございました!    






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