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*destiny*
a perverse person(シン×ルナマリア)/吉川リオ様、6000hitキリリク。
貴方の冷たい眸があたしを見下ろす。
どうして、
どうして。
貴方が
分からない。

【a perverse person】

「レイ機、ルナマリア機、収容完了。インパルス、帰投しました。」
 一通りの仕事を終え、MS管制担当メイリン・ホークはインカムを外し、機器の上に置いた。
パイロット達と自分達の搭乗艦の無事に安堵の息を一つ吐く。
戦争中だと理解していても、開戦してからの連続的な戦闘に、心身共にやつれる思いだった。パイロットを信じていない訳ではないが、本当に毎回生きた心地がしない。疲れを満面に滲ませ、シートを離れる。事後処理でまだ慌だしさの残るブリッジを後にした。

 朱のツインテールを左右に揺らしながら廊下を歩く。ふと、角の向こうから聞き慣れた声がメイリンの耳に届いた。
「だから、反応が甘いんだよ、ルナは」
「何よ、あんただってそうじゃない」
 ──お姉ちゃんとシンだ。
 相変わらずの二人に、メイリンの顔に笑みが浮かぶ。労いの言葉を掛けようと、レクルームへと向かう足を方向転換させ、角を曲がった。
「おねぇ……──!?」
 思わず息を呑む。体が勝手に後ずさり、角へと隠れてしまっていた。
 いつもの痴話喧嘩だと思ったのに。そこに漂う空気はまるで…──

「最近甘い物が美味しくてしょうがないのよね。疲れてるのかしら」
 レクルームのソファに腰掛け、ルナマリア・ホークはしみじみと言った。手には、“イチゴ牛乳”と書かれた缶が握られている。
「そんな甘いのばっか飲んでたら太るよ?」
 同じく隣りに腰掛けた同僚のパイロット、シン・アスカのさりげない一言に、ルナマリアのこめかみに青筋が浮き上がった。
「るさぃっ!!ていうか、あんただってコーヒー牛乳じゃないのっ!」
 シンの両頬を思い切りつねり上げる。ムキになる、ということが気にしている証拠だとも気付かずに、ルナマリアはまくし立てた。
「ぃででで!!ひゃめ、ぅナッ!」
「何言ってんだか分からないわねー!!」
 シンの頬を解放し、代わりに首を絞めにかかった。見事な絞め技が決まる。
「…なーにやってんだよ、お前ら」
「うわっ!シン大丈夫かぁ?!」
 声と共に、若草色の作業着に身を包んだ、ルナマリア達の友人にして“ミネルバ”の整備スタッフでもある少年が二人、レクルームへと入って来る。
「ヨウラン、ヴィーノ!お疲れ。」
 労いの言葉と共にシンの首から手を放す。ようやく解放されたシンは、ルナマリアを横目で睨み付けながら懸命に息を整える。
 缶のプルトップを開けながら、向かいのソファに腰を降ろした。その褐色の顔に明らかな呆れを滲ませ、ヨウラン・ケントが口を開いた。
「ホントお前らって仲がいいのな」
「からかわないでよ!」
 ルナマリアが憮然とした表情で即座に返した。シンもむっつりとした表情を見せている。
「あーはいはい。照れなくていいから。」
 尚も続けるヨウランに、ルナマリアとシンは思わず立上がり、同時に叫んでしまった。
「「そんなんじゃないってば!!!」」
「ハモってるし…」
 ヨウランには完璧に“照れ”だということが解る。三人のやり取りを、ドリンクを飲みながら傍観していたヴィーノ・デュプレは、そのことに理解している様子でもない。唐突に口を開いたかと思えば、幼さの残る顔をきょとんとさせ、これまたストレートに言い放った。
「えっ、お前らマジ付き合ってんじゃないの?」
 一瞬にして空気が凍り付いた。ただ一人、空気の読めないヴィーノを残して。
「ば…っ、お前、何もそんな直球…!」
 ヨウランは気が気でなかった。必死にこの天然直球素直少年を救おうと口を開くが、うまい言い方が思いつかない。
──解ってんのか?お前、今アウェーだぞっ?!!
「な…、何言い出すのよ!ばかじゃない?」
 一方、ルナマリアは違う意味で焦っていた。
 ──付き合う?シンと?!あたしが?!!
 何だか分からないが、すごく苦しい。1000メートルを全力疾走した後みたいだ。
 彼女自身、自分の気持ちを解り兼ねていた。
──怖さ?
──嬉しさ?
──解らない。
 彼女の脳が高速回転し、やがて一つの結論に辿り着く。しかし、ルナマリアはその気持ちを完全否定した。彼女の本能が奏でる心臓の音を、心の中で耳を塞ぎ、聞こえないふりをする。
──ありえない…!
 予想外の雰囲気に、ヴィーノがようやく異変を悟る。
「え…、違うの?だってメイリンが…」
「…やめろ」
 ヴィーノの言葉を遮り、シンが口を開いた。どこか怒った様な顔で、続ける。
「おれとルナはそんなんじゃないし。…ってか──」
 心底、迷惑といった表情で吐き捨てた。
「ありえないし。」
 そのまま無言でレクルームを後にする。
「何怒ってんだ、あいつ?」
「オレ、何かマズい事言ったかな…?」
 心配そうに呟く少年二人をよそに、ルナマリアは一人、頭を殴られたかの様な衝撃を受けていた。
“ありえない”
 自分でもそう思った筈だった。なのに、何なのだろう。この絶望感と、悲しさは。無意識に涙が込み上げ、視界が滲む。涙を二人に気付かれない様に、レクルームを飛び出した。
「きゃ…!」
 入れ替わる様にメイリンがレクルームに入ってくる。ルナマリアとぶつかりそうになり、小さく悲鳴を上げた。
「なぁに?どうしたの、お姉ちゃん。」
 不思議そうに姉の背中を見送りながら、尋ねる。
「なぁっ、メイリン!」
「きゃっ!な、何?!」
「お前シンとルナが付き合ってるって言ってたよなぁ?」
 ヴィーノがメイリンの肩を掴みながらすがる様に詰め寄った。
「…もしかして、お姉ちゃんの前で言っちゃったの…?」
 呆れ果てた様に半眼で見つめる。少し背の高い彼を見下ろすといった器用なことをしてみせた。
「しかもシンもいる前でな。」
 ヨウランが付け足すと、メイリンは大仰に溜め息を吐いた。なんて空気の読めない奴なのだろう。
「わたし、そんな事言ってないっ!ヴィーノのばかっ!!」
「はぁ〜?何だよそりゃ〜!!」
 レクルームにヴィーノの泣きそうな声が響き渡った。

 ようやく涙は治まった。なんとか流さずにすんだ。
 まだ心臓を握り締められている様な痛みは引かないけれど、ルナマリアは射撃訓練場へと歩を進めた。とにかく、早く拳銃を思い切りぶっ放したいという衝動につき動かされていた。
 ゴーグルと拳銃を用意し、訓練場へと入る。
 すでに先客がいるのが判る。
「…シン…!?」
 思わず口を突いて声が出てしまっていた。
 弾倉を込める手を止め、振り返る。しかし何も言わずに、一瞥をくれただけで視線を拳銃へと戻した。ルナマリアの胸がまたズキリと痛んだ。
 先程のこともあり、気まずい空気が流れる。自室に戻ろうか。でもそれだと避けていると思われかねない。立ち尽くすルナマリアにシンの声が掛けられた。
「しないの?訓練。」
「え?す、するわよ。」
 うわずった声でそう答え、彼から一つ分のスペースを空けて、準備に取り掛かった。 深く考えるな。気にすることなんてないのだ。そう、自分に言い聞かせる。自分達は何も変わらないのだから。心の中のもやもやを払拭するかの様に、努めて明るく振舞ってみせる。
「それにしても、さっきは驚いたわよね。ヴィーノったらいきなり変なこと言い出すんだもの!」
 シンが、一発発砲する。
「ほんとありえないっていうか。シンだっていい迷惑だわよねっ?」
 重い音を響かせ、おもむろに拳銃を台に置いた。ルナマリアが背を竦ませた。ゴーグルを外し、ルナマリアに向き直る。
「──ってない…」
「え…?」
「ルナは何も分かってないっ!!」
 シンの歩が進み、ゆっくりとスペース一つ分の距離を無くしていく。気付けば、背中が台に付き、前方はシンが阻み、一歩も逃げられない状態となっていた。
「ほんと分かってないよ。」
 シンの紅い眸がルナマリアを射抜く。
 声も出せなかった。何故こんなことになってしまったのだろう。
 分からない。シンが分からない。
「おれは…っ」
 シンの顔がゆっくりとルナマリアの顔に近付けられる。唇と唇が後少しで触れようとする、その時──
──!!
 シンがルナマリアから顔を離した。
 見開かれた蒼の眸から涙が止めどなく溢れていた。細い肩は強張り、小刻みに震えている。
「なん…で?何でっ、好きでもないのに…こ、こんなこと、する…の…?」
 嗚咽を堪え、涙を拭うことも忘れ、必死に訴える。
「あ…、あたしっ、んむっ…!」
 言葉を遮り、ルナマリアの唇にシンの唇が重ねられた。頭を彼の右手で押えられ、腰には左手が回され、深く口付けられる。息が苦しくなり、彼の胸をどんと叩くと、ようやく解放された。息遣いも荒く、ルナマリアは呼吸を整える。
「誰も迷惑なんて言ってないだろ」
 頭上からシンの声が掛けられる。
「好きでもない奴に出来るか。…こんなこと」
 蒼い眸が見上げる。視線の先には、ほんのり頬を赤く染めた少年の顔があった。
「そんな…。あたしだってあんたのこ…!」
 もう一度塞がれた。今度はルナマリアも、シンの背に腕を回した。
──そうだった。この子ってば……

「じゃあ、シンは別に怒ってた訳じゃないのか」
 レクルーム。ソファに座したヴィーノが安堵の息を吐いた。
「当たり前でしょ!わたしが今日二人を見た時、すっっごく甘い雰囲気が漂ってたんだから!!」
 何もかも見透かした様な目で、言い放つ。
「そういえばあいつって、昔っからへそ曲がりだったよなぁ。ホントの事言われる程否定すんだよ」
 ヨウランもしみじみと言いながら足を組み替えた。
「シンなりの“照れ隠し”なのよ」
 貫禄を漂わせるその一言に、ヴィーノとヨウランは顔を見合わせる。改めて思った一言は、心の中だけで呟いた。
──女って怖えぇー…。


【END】

【後書き】
ここまで読んで下さってありがとうございます。

キャラクタークラッシャー・シリィです。誰だこれ。どんだけへその曲がったシンなんだ。そして、どんだけ気にしぃのルナマリアだ。謎の人物登場ですね。
やはりシリィの文はまだるっこしくていけません。

吉川リオ様、リクエスト通りに出来ているか、不安です。(オィ)
この様な駄文で本当に申し訳ありませんが、捧げさせて下さいませ。
リクエストありがとうございました!





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