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*destiny*
regret(シン×ルナマリア)/現代パロ。GRAYMAN様5555hitキリリク。
「じゃあ、また帰りにね!」
きみがいつもと変わらない笑顔で電車を降りていく。
──何でおれは、
──おれたちは…!
そして、またおれは後悔に苛まれる。

【regret】

〔ごめん、シン。また急にゼミが入っちゃったの。(>_<)何時に終わるかわからないし、ずっと待っててもらうのも悪いから、先に帰っててくれる?(^人^)〕
──またかよ。
 教室の後方、ドアに近い所の席で、シン・アスカはこっそりと溜め息をついた。
 先程までの睡眠で、彼の漆黒色の髪には寝癖が付き、半分しか開いていない真紅の眸には明らかに嫌悪の色が宿っている。
──ったく、ほんとにどれだけ気紛れなゼミなんだよ…っ!
 心の中でぼやきながら、素早くメールを返す。横に座っている友人の肘が強く当たり、画面がぶれた。偶然に当たったものではない。二、三度、肘で小突かれ、故意だという事に気付き、鬱陶しそうに友人を見やった。
 その時──
「Bクラス、53番。シン・アスカ!次の所読んで」
「……何ページですか?」
 眠気が完全にぶっ飛び、冷や汗が流れた。

ヴヴヴッ…ヴヴヴッ…
「ぁわ…っ」
 机上の携帯電話のバイブレータが勢いよく震え、ルナマリア・ホークは慌ててそれを掴み上げた。
〔いや、おれもレポートとかあるしいつもの駅で待ってるよ〕
──あれ、シン確か昨日、家のパソコンでレポート終わったって言ってなかったっけ?
 ルナマリアの蒼の眸が優しくなる。彼なりの気遣いに嬉しさを憶え、微笑んだ。
〔ありがと、シン。でもほんとにいいから。そのかわり、今日はシンがご飯作ってくれると嬉しいんだけど☆〕
 会えない時に限って、無償に会いたくなるのは何故だろう。家に帰ると会えるのに。まるで惚気たカップルみたいだ、とルナマリアは自分を揶揄した。

「遅いっ!!」
 1DKの狭いアパート内に、不機嫌な声が響き渡った。
「もぅ…」
 二人分の食事を前に、シンは頬を膨らませた。
 いつもは狭すぎるこの部屋も、ルナマリアが居ないと広すぎる。暖房を入れている筈なのに、思わず身震いをしてしまった。…何だか寒さも倍増だ。
──二年か…。
 早いものだと感じる。高校の卒業式の時に告白しようとして、うまく言えなくて。痺れを切らしたルナマリアの方から告白してきて。
──『好きだよっ、シン。』──
 何故同じ大学に行かなかったのだろう。ふられて気まずくなるのを畏れたからだったか。……いや、単に自分の偏差値が足らなかっただけだ。
 つくづくルナマリアと違う大学に入ったことを後悔する。その度に自分はルナマリアのことが本当に好きなんだと実感出来る。
──会いたい、ルナ。早く帰って来いよ…。
 まだテーブルの上で、わずかに湯気を立上ぼらせているパスタに目を落とす。
──折角ルナの好物を作ったってのに。
「冷めちゃうだろが……」
 幾度目かの溜め息をついた。

「ぅ〜〜っ!」
 突如強く吹いた木枯らしに、ルナマリアは身を竦ませた。
 すっかり遅くなってしまった。五限にゼミを入れるのだけは本当に勘弁して欲しい。先生は車だから寒くないんだろうけど。
 いくらタイツとブーツを履いているとはいえ、こんな寒い日にスカートなんかを履いている自分が馬鹿みたいに思えてくる。
 ふと鼻の頭に冷たいものを感じ、天上を見上げた。はらはらと、月明りに照らされた雪が舞い降りてくるのが見える。
──寒いと思ったら…。
 左手が寂しい。いつもシンと繋がれている彼女の手は、今日は吹きさらしの風に晒されている。
自然と足早になるのは、アパートが近付いてきた証拠だ。冷えた体が温もりを欲している。
 シンは怒っているだろうか。拗ねた様な顔が頭に浮かび、ルナマリアの表情にくすっと笑みが浮かぶ。
 ブーツの踵をカンカンと鳴らしながら、アパートの階段を足早に登っていった。

「わっ…!」
「きゃ!!」
 扉を開けた瞬間に視界に飛び込んできたのは、あまりに大きなお互いの驚愕の顔だった。
「あ…、ルナ、おかえり」
「シン〜、もぅ、びっくりしたぁ」
 おかえり、と言った時には嬉しそうな光を湛えていたシンの眸が、一瞬で不機嫌そうなものに変わる。やっぱり拗ねている様だ。目の前の恋人の相変わらずの可愛いらしさに、堪え切れない微笑みがルナマリアの満面に浮かぶ。彼の襟首に抱き付いた。
「ごめんね。ただいま、シン。」
「もぅ…。遅すぎるんだよ」
 ルナマリアの体を受け止めながら、シンは口を尖らせる。もう一度ごめんね、と言った後に、ルナマリアは気になった事を聞いてみた。
「ね、そういえば、今どこに行こうとしてたの?すっごく急いでたみたいだったけど」
 一瞬シンは何かを思い出した様な顔つきになり、どこか決まり悪そうにそっけなく返す。
「べ、別に。コンビニに行こうとしてただけ…」
 彼自身、そう言い張ってはいるが、抱き付いた肩越しにある物を見つけ、更に意地悪そうに尋ねた。
「財布。テーブルの上に置いたままだよ?」
「ぅ、あ…っ、それは〜…」
 自分を迎えに行こうとしてくれていたことは彼女自身もう悟っていた。ただ、拗ねながらうろたえるこの少年が可愛いくて。
「うそ。ありがとね、シン。」
 更に彼の体にしがみついた。
シンは彼女の体を抱き返しながら、あることに気付き、ルナマリアの顔を半眼で見やった。
「ルナ。おれで暖を取ろうとしてるだろ」
 ばれた?とでも言う風にルナマリアがシンを見上げる。やっぱり。執拗に自分にすり寄ってきたのは寒かったからか。
 本当に子犬みたいだ。放っておいたら寂しくて死んでしまうのではないだろうか。心なしかがっかりした様子の彼を見、子犬いじりを十分に楽しんだルナマリアの胸に少しだけ罪悪感がよぎる。
 まだ不満をぶつぶつと呟くシンの唇を、自分のそれで塞いでやった。酷く驚いた真紅の眸と目が合った。しかし、すぐに目を瞑り、お互いを支配する甘い感覚に身をゆだねた。
「ん…」
 ようやく唇を放す。頬を上気させ、先にルナマリアが口を開いた。
「唇も…あたためてもらっちゃった。」
「…まだ冷たいよ。」
 同じくらい頬を赤く染め、恥ずかしそうに、シンが返す。その眸に少し嬉しそうな様子が伺える。どうやら機嫌は直った様だ。
「ねぇ、シン」
「何?」
 何かを言いかけて、口をつぐんだ。どうせ言ったってどうにもならないことだ。何でもない、と言うと、シンは不満を返す。それ以上、ルナマリアは何も言わずに、ただシンの胸に顔を埋ずめた。
 ──ねぇ、シン。あたしってば何で無理してまで今の大学にしちゃったのかな。あの時、シンと付き合うって判ってたら一つ落としてシンの大学にしたのにな…。
「ルナ。おれやっぱり、ルナの学校のゼミが入っても駅で待つよ」
 ルナマリアがシンの胸から顔を放し、彼を見上げる。真剣な紅い眸が彼女を見つめていた。
「もう、ほんと後悔してんだから」
「そうね。ほんと後悔ばっかり」
 後悔するのは恋しいから。こう思う自分達はやっぱりただ惚気ているだけなのだろうか。それとも、例えば今のこの状態の様な、少しでも幸せな時間があるならそれでいい、なんて妥協した方が良いのだろうか。
 その答えは出せないまま。ただこの温もりに少しでもすがりつく。
「あ、そういえば」
 シンが突如口を開いた。
「風呂。沸いてるけど、入る?」
 “先に”を言い忘れたシンの意図を汲めずに、勝手に“一緒に”と解釈したルナマリアは、盛大に顔を赤く染め上げたのだった。


【END】
【後書き】
ここまで読んで下さってありがとうございます。

甘ーーーーーい!!!(ワゴン風に)

え?あんまり甘くないですか?すいません、これが限界ですι

てか、玄関先で何やってんだ!!これは…大丈夫ですか?まだ“甘”の領域内ですか?“バ〇ップル”の領域ではないですか?(聞くな)

や、でもシンはいい奥さんになれますね。ご飯作ってくれる上にお風呂まで沸かしてくれてるなんて、最高ですね☆えー、ちなみに1DKのアパートというのは、マンスリーのことです。二人で住むには狭過ぎですね。

GRAYMANさま、こんな駄文ですみませんが、捧げさせていただきます。苦情、大歓迎です…!リクエストありがとうございました!






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あきゅろす。
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