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*destiny*
feel at ease(シン×ルナマリア)/レン様4500hitキリリク。
どうしてだろう……
君と一緒だと
──安心して眠れる…──

【feel at ease】

「──〜っ!」
 その日幾度目かの寝返りを打ち、ついにシンはがばっと上体を起こした。
──眠れね─…
 眠りたくないというか、身体が全力で眠ることを拒否しているみたいだ。
──寝たら…また…
 “PTSD”─心的外傷後ストレス障害─いわゆるトラウマ。
 シンが医者にそう診断されてから二年が経った。あの日から彼を悩ませてきた悪夢。突然の開戦のこともあり、前ほど頻繁にうなされることはなくなった。しかし、最近になってまた彼は悪夢にうなされる様になっていた。
 “フラッシュバック”
──ステラの死──
──アスランとメイリンを自身の手で討ったこと──
 これらは彼の傷をえぐり返すには十分の出来事だった。
──くそっ…
 この時間が嫌いだった。眠ろう、眠ろうとする程眠れず、ただ寝返りを打つだけの時間。余計な事ばかり考えて逆に冴えてしまう目。それなのに、限界になった身体が結局とってしまう、次の任務までの2、3時間程度の睡眠……。
 悪循環だな、と思いながらもシンは眠る事を諦め、部屋を出ようと立ち上がる。
「…シン。また眠れないのか?」
 同室の少年の声がかかった。
「ごめん、レイ。起こしちゃった?」
 申し訳なさそうに謝る。すると少年──レイ・ザ・バレルはさほど気にも留めない様子で
「睡眠はきちんととっておけよ。戦闘に支障が出る。」
 そう言うと、もう一度ベッドに横になった。
「分かってるよ。ちゃんと…寝る。」
 そう言いながらも、上着を着込み、シンは部屋を出ていった。
 ひっそりとした廊下を歩く。軍靴が鳴らすカツカツという音だけが辺りに響く。
 ドリンクを買う為にレクルームへと入った。
「シン?どうしたんだよ、こんな時間に」
レクルームに入るなり声をかけてきたのは、自分達の搭乗艦、戦艦“ミネルバ”の整備スタッフであり、シンの友人でもあるヴィーノ・デュプレだ。
「何、お前も眠れねーの?」
 ドリンクを片手に、ヨウラン・ケントが言う。彼もヴィーノと同じく整備スタッフで、シンの友人である。彼らは今日は夜勤だった筈だ。おそらく休憩中だろう。
「お前…も、って?」
 怪訝に思い、シンが尋ねた。
「あー、さっきルナもレクルームにいたんだよ」
「眠れないんだってさ!」
 そう言うと、ヴィーノが長椅子から立ち上がる。ヨウランの空の缶を受け取り、自分の分と一緒にゴミ箱に押込んだ。
「じゃあ、オレら行くから。」
「またな、シン!」
「あぁ。」
 二人を見送る。すると、ふと思い出したかの様にヨウランが振り返った。
「お前、ルナに添い寝でもしてやれば?」
「な…っ!?」
 シンが何かを言うよりも早く、その場を去っていった。
──ガコンッ──
「あ…」
 彼の動揺を忠実に汲み取った人差し指は、彼が全く飲みたくもない物のボタンを見事に押してしまっていた。

「くそっ、まっずぃし、スチール缶だし…」
 一旦部屋に帰ったものの、口直しの為に再度レクルームを訪れる。
 長椅子に誰かが横になっているのが分かる。
──何こんなとこで寝てるんだ…?
 缶をゴミ箱に投げ入れ、呆れた様子で除き込む。
 そこで寝ていたのは、シンの同僚のMSパイロット、ルナマリア・ホークだった。
──ルナ?
 彼女の表情が苦しそうに歪む。小さく呻いた。
「ぅ…、ぃや……」
──うなされてるのか…?
「…メイ…リ…」
──!!?
 ルナマリアの口から紡がれた人物の名前を聞いて、シンは心臓をわし掴みにされた様な感覚に陥った。彼の表情からは血の気が失せ、呼吸が荒くなる。
「ルナ…ッ!!」
ルナマリアの肩を揺さぶり、彼女を起こす。
「ん…、何……」
 寝ぼけ眼を擦りながら目を覚ます。目の前にいる人物をようやく認識し、上体を起こした。
「…シン?あ、寝ちゃってたんだ、あたし…」
「うなされてた」
 見ていた夢を思い出したのだろう。ルナマリアの表情が曇る。
「あ…、ていうか、シンはこんな時間に何してるのよ?ちゃんと寝ないと戦闘に響くよ?」
 話題を変え、取繕った笑顔を見せたルナマリアを見、シンは胸が苦しくなる。こんな時まで人の心配だ。自分は悪夢にうなされていたくせに。
 それも、その悪夢の原因を作ったのは、彼女に“PTSD”を負わせたのは
──このおれだ。
「おれは…、ルナも、自分の部屋で寝ろよ」
──今さっきうなされてたのに、また寝ろ、というのかよ、おれは?
「あたしなら、何だか眠くないから…」
──違う。眠りたくないんだ。眠ると、夢を見るから。
 自分が彼女を守る、と決めた筈だった。彼女を傷つける何者からも。しかし、現に今、彼女は傷つけられている。
──他でもない、この自分に。──
 たまらなくなって、シンはルナマリアの腕を掴んだ。思いが口を突いて零れる。
「眠れないなら」
 ルナマリアが蒼の眸を大きく見開き、シンを見あげる。
「眠れるまで…、おれがついてるから…っ」
 ルナマリアの表情が歪む。双眸に涙が溜まる。シンの腕にしがみつき、
「ぅく…っ」
 何も言えずに俯き、涙を必死に堪えることしか出来なかった。

 ヨウランに言われた事を思い出し、シンは赤面する。さっきは咄嗟だったけどよく考えてみればとんでもないことになってしまった気がする。
ベッドに腰掛け、すぐ側で眠る少女を見やる。限界だったのだろう。ベッドに横になるなり、すぐに寝息を立ててしまった。実際、自分なんて居る意味があったのかを考えさせられる程に──
 彼女の場合、眠りたくないと思っていても身体がそうさせてはくれない様だ。自分も始めはそうだった。今は寝ようとしても身体の方が寝かせてはくれないけれど。
 少女の閉じられた瞼から涙が伝い落ちる。シンはそっと指ですくってやった。
──それにしても…
 何て殺風景な部屋だろう。妹の私物は全て回収されてしまっている。
──誰だってこんな部屋で一人で寝たくないよな…。
 ルナマリアも眠りに着いたことだし、そろそろ自室に戻ろうと立ち上がろうとする…、が──
「えっ…?!」
 彼の赤の上着の裾を掴まれ、バランスを崩す。ルナマリアに覆い被さる様な形でベッドに倒れた。
──び、びっくりした…。
 心臓がばくばくとうるさい位に鼓動を刻む。
「ほんとに、寝てる…のかよ?」
 規則正しい寝息が聞こえる。眠っている…様だ。
──ここで寝ろってのか?
 自制心より先に、彼の眠気の限界が来る。いつもならまだ眠れない時間の筈なのに。瞼が重い。脳が働かない。
──だめ…だ…
 シンはルナマリアの隣りに倒れ込み、寝息を立て始めた。

 シンは走っていた。ある物を必死で追いかける。
 目の前を、手が届きそうで届かない距離を保ちながら、風船がふわふわと飛んでいる。
 急に、風船が加速した。
向かう先には森があった。葉が鋭い針葉樹の森だ。風船は吸い込まれるかの様に森へと飛んで行く。
 シンは全速力で走った。手を精一杯に伸ばす。
 風船の、紐に触れる。何回か掴み損ね、風船が針に当たる寸前でようやく掴み取った。
 その時、彼は今まで感じた事の無い程の幸福感を感じた。もう二度と離すまいと、掴んだ風船を見る。
 深い、朱色の風船を──

 一人用のベッドに、少年と少女が寄添う様に眠っていた。その表情は二人共に安らかで、少年はまるで大切な物を守るかの様に少女を懐に抱いていた。
「……」
少年がゆっくりと目を覚ます。何だろう。今日はいつもの夢じゃなくて、すごくいい夢を見た様な……
 こんなに心地が良い目覚めはいつ位ぶりだろう?久しぶりにぐっすりと眠れた気がする。
 外が騒がしい。もう起きなければならない時間だと理解する。
 ふと、腕の中で何かがもぞもぞと動いた気がした。段々とまどろみから抜け出し、意識がはっきりとしてくる。
──っ!!?!
 腕の中を見て、愕然とする。あまりの驚きに、大声を出しそうになった口を慌てて左手で押えた。
──なっ、何でルナがおれの部屋にっ?!あ、いや、てか、えぇっ?!!
 完全に動揺していた。しかも、右腕が彼女の頭の下にあり、身動きも取れない。
 少しずつ、昨夜あったことが思い出される。あの時の科白を思い出して赤面した。
 ちらと腕の中の彼女を見る。夢は見なかったのだろうか、安らかな顔をして眠っている。長い睫毛。白くて柔らかそうな頬。形の良い唇。
 シンの胸が切なく、彼を締め付ける。
 無意識に左手が伸びていた。
 額に散りばめられた深朱の髪に触れる。滑り心地の良い髪を優しく撫でた。今彼を支配しているのは、昨夜感じた自己嫌悪の気持ちなどでは無い。それは、ルナマリアを心から愛しいと思う気持ちだった。
 彼女の横髪をそっとかき上げる。深朱の髪と自分の漆黒の髪が重なり、交わった。
──っ…。
 左手で自分の唇に触れる。頬が熱い。
「ん…」
 ルナマリアが目を覚ました。囁く様に声を掛ける。
「おはよ、ルナ。」
「あ…、シン…」
 ルナマリアも成り行きとはいえ、一つのベッドに二人で寝てしまった今の状況に頬を紅潮させた。
シンは一番聞きたかったことを聞いてみた。
「夢、見た…?」
「うぅん。見なかった。シンがついててくれたから…かな?」
──おれも。ルナと一緒だったからかな、いつも見る夢、見なかったよ。
 そっか、とだけ答え、安堵に胸を撫で下ろす。
「あの、シン…、ありがとう」
 ルナマリアが少し照れながら礼を述べる。返事の代わりに、シンは彼女を抱き締めた。ルナマリアの戸惑った様な、蒼の眸と目が合う。シンの紅の眸が彼女を愛おしむ様な光を湛え、ルナマリアを見つめた。
──ルナ…。もう、泣かなくていいんだ。
おれが絶対に守るから。
それがたとえ悪夢であっても、君を傷つける何者からも守ってみせるから。
──おれは──
「おれの総てを懸けて、ルナを守るから…!」
「…っ」
 ルナマリアはシンの胸に顔を埋める。嬉しさで真っ赤に紅潮した顔を見られたくなかった。埋めたまま、彼に言う。
「…あたしも。あたしに出来る事があるか分からないけど、あたしもシンを守るから…」
少なくとも、もう君はおれを悪夢から守ってくれたよ。ルナと一緒だと、こんなにも安心して眠れたんだから。
 お互いの体にすがりつく。体温が心地良い。
──おれは君を、
──あたしは貴方を。
今はお互いがお互いにもたらした安心感に満たされながら、あたたかい温もりに心が癒されていくのをただ感じていた──。


【END】
【後書き】
ここまで読んで下さってありがとうございます。
なげぇよ!シリィの小説は前置きが長くていけません。しかも、ほんとに、あほの一つ覚えですみません(泣)ていうか、ルナマリアもシンも、またキャラが壊れてるじゃねーか!!


レン様、カイラ様、この様な場所での少しの(?)言い訳と突っ込みをお許し下さい。

昼寝の続き、という事でしたのに、続きから始まらない作品で申し訳ありません。しかも、昼寝じゃなくて申し訳ありません。(謝って済むならポリスメンなんかいらねんだよ!)そして、相変わらず訳の分からない話ですみません。

本当に謝り出したら止まりません。こんな駄文ですが、捧げさせて下さいませ!リクエスト、どうもありがとうございました!!





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