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interdependent(シン×ルナマリア)
 もともと思慮深い性格ではないし、じつのところ考えるよりも体が先に動いてしまうタイプだ。だから、士官学校時代でも座学よりも実技の方が好きだったし、得意だったのだ。とは言っても、今のこの状況では悶々と考えを巡らせるより他、ない。テーマは――、
「なんなの……、シンったら……!」
 シン・アスカ。もっぱら気になる少年について、だった。


【interdependent】


 彼が今向き合っているのはオペレーターの一人だ。最近見ない顔。プラチナブロンドの髪を制帽から横に流し、切れ長の瞳を持つ少女。恐らく副長から何かしらの言付けを頼まれたのだろう。その少女の手を握って向かい合って何か喋っている。手を握るその様子に、忌々しいというよりはショックを受けた。
 何故そうなったかもわかっている。オペレーターなら普段立ち入ることのない、格納庫という場所。お世辞にもよく整えられて通り易さに配慮したとは言えない、無機質な狭い通路。そこで彼女がつまづいたのだ。当然だ。こんな場所を歩くのに軍服のブーツなどお呼びではない。それを、シンが受け止めて支えた。そしてそれを、ルナマリアが目撃した。
 ある程度離れているので何を話しているのかは分からない。だけど、オペレーターの少女の顔が紅潮していることに疑問を抱かずには居られない。それをきょとんと見つめるルナマリアの大好きなシンの赤い瞳。何故だか無性に心が傷ついた。ルナマリアは愕然と立ち尽くしていた。自機の整備へと戻る動きの予兆もない。オペレーターの少女が何かをシンに伝え、足早に去っていく。相変わらず覚束ないブーツの足取りで。
 ルナマリアの視線に気付いたシンが、こちらを見た。ルナマリアの心臓がどきりとなった。不思議そうにこちらをしばらく見た後、彼は視線を逸らし、愛機へと戻っていった。
 ルナマリアはしばらくそこから動けなかった。

 お節介、とまではいかないが、困っている人や苦しんでいる人を放っておくことが出来ない、優しい少年。それがルナマリアの知っているシンだ。そう。自分はちゃんと彼がそうだと分かっている。なのに、胸がざわついて落ち着かないのは、自分のシンへの想いが大きいからだ。
 ――いつからこんなに、あたしシンのこと好きなんだろう。
 辛い事が多すぎて、忘れがちになってしまっていたが、そういえばシンとは色々あった気がする。抱きしめられたり、しがみついたり、抱き合ったり、キス、したり――。
「!!」
 思い出して一人で勝手に赤くなる自分に情けなさすら覚える。
 ――だって、シンといると、何だかほっとするんだもの。それだけなのに、彼が女の子を助けて、一緒に居るのを見ただけで焼きもちを妬くなんて、つくづく自分は情けないなあ、と思った。
「どうしたんだよ、ルナ。ため息なんて吐いて」
 気が付くと、自分と同じ赤いパイロットスーツに身を包んだシンが、すぐそばまできていた。
「さっきもなんか言いたそうだったし。何かあったのか?」
 普段は怒ったような顔で何かを考えているか、ぼんやりとしているかで、こちらが話しかけても上の空のくせに、今日に限ってよく見ている。
 あんたはあたしが転びそうになっても手を取って助けてくれる?
 あたしがさっきの子に焼きもちを妬いてたの、知ってる?
 あんたは、あたしのこと、どう思ってるの?
 訊きたいことが頭に浮かんでは消える。彼は依然として怪訝そうにルナマリアを見つめる。結局、そのどれもを胸の中に仕舞い込み、ルナマリアは自嘲じみた笑みを浮かべた。
「あたしのことなんて心配しなくていいから。あんたは自分のことだけ考えてなさい」
 そう言ってシンの頭をぽんぽんと叩く。少年は怒ったように口を尖らせた。
「頼りにしてるんだから」
「なんだよそれ……」
 シンを好きだと思うほど、自分は彼の中で一番の存在で在りたいと思う。だけど、そんなことはきっと、我が儘なのだろう。少年のちょっと怒った様子にささやかな気分の向上を感じ、ルナマリアは彼の隣で可笑しそうに笑った。




ここまで読んでくださってありがとうございます。

アスランとミーアのあれを目撃した時は子供っぽい怒り方でしたが、今回はちょっと大人めに。持ちつ持たれつでちゃんとくっついてるシンルナが大好きです。

リクエストありがとうございました!



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