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迷霧の森
嫉妬の病
お母さん
「じゃあ行ってくるわね。ピッツ、パピ」

SE:駆け寄る


「綺麗に着飾った母親は三姉妹を見遣る。だけど呼ばれるのはいつも二人だけ。まるで彼女一人いない存在の様に扱われ、マルはただ嫉妬に燃えるばかり」

マルM
「どうして、私だけ、いないように扱うの?」

パピ
「マール!あんたさぁ、お風呂沸かしてきてくんなぁい?あたくし達忙しいのよね〜」

マルM
「どうせお母さんからお菓子貰ってお茶でも楽しんでるんでしょ?」

ピッツ
「ごめんなさいね、いつもやって貰っちゃって。マルは何でも出来るから助かるな」

マルM
「どうせ便利な使えるやつだとしか思ってないんでしょ?」

お母さん
「マル、勉強しなさい。あんたが一番出来ない子なんだからね!お姉ちゃん達を少しは見習ったらどうなの?」

マルM
「お母さん、知らないでしょ。私が一番成績いいって事を」


「そして遂に嫉妬は暴走を始めた。歪んだ笑顔を口元に携え、そっと憎き姉達に囁いた」

マル
「ねぇお姉様達。恋に効く神社がある所に行ってみない?友達がね、お祈りした次の日から凄く格好いい恋人が出来たって言ってたから一緒に行こうよ」

パピ
「本当?!凄い情報じゃんっ。やっぱりマルは役に立つねぇ。勿論あたくしが一番最初にお祈りするからね!」

ピッツ
「いいぞ、私も年頃だし恋人の一人や二人、欲しい所だな」

マル
「うっふふ。じゃあいきましょ。お姉様」


「その霧立ち込む森へ入れば…二度と出ては来れぬ。姉達が気付いた頃には、もう遅かった」

パピ
「マル!どういう事なのよ!なんで出られないの?!」

ピッツ
「さっきから同じ所ぐるぐるしてるし、歩き疲れたぞ」

マル
「うっふふ…何言ってるの?お姉様達。お姉様達は今夢の中にいるのよ?私の、夢の中でね…!!」

ピッツ&パピ
「…!!」


「衝撃的な言葉に身を固くする二人。もう抜け出せないと肌で感じたのだろうか。それともマルの狂気に気付いてしまったからなのだろうか。その後も彼女は続けて言った」

マル
「お姉様達、マルは便利な道具でしかないんでしょ?愛されてない私を憐れんでいるのでしょう?だったら死んでよ!死んでしまえばいいのよ!!お姉様達を助けてくれる奴なんてここにはいないんだから!あっははははははは!!!」


「おかしくておかしくてたまらない。騙された馬鹿な姉達に嗤いが止まらない。歪んでいく感情にマル自身よく分からなくなってきて発散するように夢を自分の憎しみで染め上げた」

パピ
「ひ…!」

マル
「パピお姉様、なぁんで…逃げるの?」

パピ
「マル…あんたの後…!変なのが浮いてるの!」

マル
「あぁ、これ?ナイフ。私の意思で自在に動くのよ?ふふっ便利でしょう?もういいの、誰も私を愛さないんだから何したって…!さぁ!殺って!!」


「鋭い矛先が姉達に向かう。悲鳴は轟(トドロ)き、もう駄目だと姉達は目を閉じた、その時だった。何者かが姉達を庇い、地面に血液が落ちる」

ピッツ
「はっ…!だ、誰?」

レトリ
「く…。大丈夫、かい?」

マル
「なっ!邪魔、しないで!誰よ!あんた」

メシアン
「こんな事したって…何にもならないぞ」


「二人は刃物に傷付いたまま、頑なにその場を動かなかった」

パピ
「あ、ありがとう。あたくし達、死ぬ所だったわ」

レトリ
「なんでこんな事になったのか良く考える事だね。自分達の事ばかり考えていたからこんな事態になった…そう思わないかい?」

ピッツ
「あぁ…そうだな。私達は自分のいい都合ばかり考えてばかりだった。蔑にされるマルを憐れんで何もしてあげられなかった。寧ろ、こき使って便利な道具の様に扱ってしまった。憎まれても当然だろう」

パピ
「いつもあたくしはお母様にもお父様にも我儘で傲慢で迷惑ばかりかけて、遂には妹にも姉にも迷惑をかけちゃったのね…その結果がこれなら、あたくしは、受け入れるわ」

ピッツ
「ごめんなさい、マル」

パピ
「ごめんね、マル」

マル
「…!お姉…様…」


「姉達は躊躇わずにマルを抱きしめる。その暖かな温もりが証明していた。共にいてくれる事を、そして今までの罪を償う事を」

メシアン
「お姉さん達、覚悟するんだな。両親や世間はそう簡単に見る目が変わる筈ない。ならどうしたら変わるかはお前達次第だ」

レトリ
「血の繋がった三姉妹だからね。絶対、諦めずに一緒に人生を支えて楽しめれば、もう何も怖くないさ」


「心の色が変わる事は奇跡に近かったかもしれない。なにか切っ掛けが無ければ起こりえないのだから。そんなマルの心情の変化に応じる様に夢の中は華やかな花畑に変化する」

マル
「私、お母様に認められるように頑張る事はもうしない、だって私には、お姉様達がいるから…」

ピッツ
「マル…!(笑う)そうだ、私達がいる」

パピ
「あたくしも自分で出来る事はするわ。マルとしなかった事も沢山これからしていきたい」

マル
「…!」

ピッツ
「寂しい思いをさせて、ごめんな」

パピ
「本当に、今までごめんなさい…」

マル
「お姉様…っ お姉様っ」


「しっかりと抱き留める二人の腕の中、マルは幸せな涙を流したのだった」

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