隷属 -I'm Your SLAVE-
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長いながい、退屈な話が終わった。
『で? それと俺と、どんな関係があるっていうんですか?』
「僕は……身体こそ七海くん以外の人に汚されちゃったけど、心は七海くん一筋なの。だから……」
『【付き合え】?』
「うん……付き合ってください」
結局それか。
うんざりした俺は何も言わずに立ち上がり、屋上から出ていこうとした。
が、腕を掴まれた。
「七海くん! どこに行くの!」
『……静かに寝られるところ』
こうなったら保健室にでも行くか。
「僕への………返事は?」
『それなら最初に言ったと思いますけど』
「え?」
『俺は葉月の恋人なんです。もう葉月以外の人とセックスとか、したくない』
「! 僕には……七海くんだけなのに?」
まだ言うか。
『お言葉ですが、先輩。本当にレイプされた人間はそう易々とその時の話を口になんてできませんよ?
相手が同性ならなおさら』
俺は先輩と向き合った。
『俺は、俺や葉月に嘘をついてまで俺と一緒にいようとする先輩の気持ちがわからない』
俺も葉月も自分の気持ちに嘘をついていたけれど、それとは違う。
『それに、俺が好きなのは……愛しているのは葉月なんです』
先輩は目に涙を浮かべている。
『だから……俺のことは諦めてください』
泣くんだろうな、と思ったから、言うだけ言って屋上から出ていこうとした。
けど、またもや先輩に引き留められた。
「七海くん………今、【愛してる】って言った?」
『………ええ、俺は葉月を愛しています』
「本気、なんだね」
『はい』
なんだ?
俺が訝しんでいると、先輩は俺の腕を離し、ついでに俺からも離れた。
「七海くん。一つ、聞いていい?」
『はい』
まぁ、聞くぐらいなら。
「【愛しい】って、どんな感じ?」
『綺麗な感情も汚い感情もなにもかも、俺の全てが葉月に向かっているような……そんな感じですかね。
うまく言えませんけど』
答え終わって先輩を見てみると、先輩は笑っているような、それでいて泣いているようなよくわからない表情をしていた。
「七海くんにそこまで想ってもらえるなんて、葉月くんが羨ましいな。
七海くんの気持ち、僕にはまだよくわからないけれど、でも七海くんには葉月くんしかないんだね」
『………………』
これ以上言うべき言葉がわからないから、とりあえず黙っておく。
「七海くん、思いきり振ってくれてありがとう」
『………………』
本当に、なんて言えばいい?
「僕、七海くんも葉月くんも羨ましくてしょうがないよ。
僕も、本気の恋をしてみたくなっちゃった」
『………今の先輩なら、できるんじゃないですか?』
今度は簡単に言葉が出てきた。
いや、なんとなく出てきただけなんだけど。
すると、先輩は綺麗に笑った。
「ありがとう。僕、頑張るよ!」
『はい』
「いつか必ず振り向かせるからね、七海くん!」
そう言って、先輩は屋上から出ていってしまった。
……いや、ちょっと待て。
なんだか面倒臭いことを言われたのは気のせいだろうか?
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