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そんなことよりキスをしよう?



「………篤人サン」
「話聞きに来ただけだから」
「それでも…嬉しいです」
「で、なに?」
もう背中に温もりは感じられず目の前にいる篤人に喜助は少し安心したような寂しそうな顔をした。触れられない事がこんなにも辛いなんて思わなかった。喜助は少し目を泳がせた

「覚えてますか?ここ」
「………忘れた」
「ここ日が沈む瞬間凄く綺麗なんです、それにここは夜もネオンで綺麗なんスよ」
「……ふーん、そう?」

しばらく続く沈黙に篤人はチラリと喜助を見ると喜助は何やら思いつめた顔をして夕焼けを見ていた。びっしょり濡れていた体は少し冷える


「風邪引きますし…帰りますか?」
「………で、ここに呼んだ理由は?理由があるんじゃねーの?」
そう言う篤人に喜助は少し黙り込んで息を吸った


「単刀直入に言います、僕は篤人が好きです」
「…それだけかよ」
「………え?」
「好きなのは知ってんだけど」
「…まぁそうですよね」
悩みだした喜助に篤人は口を開いた。それに喜助は篤人をじっと見た

「それだけなら帰る」
「ま、待って下さい!」
「もーなんだよ!?俺だって暇じゃねーんだけど」
「………好きです…だから、もう一度…やり直しましょう?」
必死な表情で腕を掴み言う喜助を見ていた篤人は一瞬目を泳がしてからプッと笑ってしまった。それに喜助はきょとんとした

「ご、ゴメンでも…無理!!」
ぷくくくっと笑う篤人に喜助は唖然とし呆然としていると篤人はヒーヒー言いながら笑いを堪えて喜助を見た

「ゴメンっ…でも嬉しい」
「はい?」
「俺を許してくれるのか?」
「許すも何も…あれは僕が悪いので、許すなんて考えた事なんかないです」
しゅんとする喜助に篤人はまた笑った。笑い上戸はどうやら治りそうにない


「アタシ真面目に言ってるですけど…いい加減怒りますよ?」
「だって真剣に言うから…!」
「当たり前じゃないっスか!告白なんてあの時以来なんスから!!」
「そ、そんな怒んなよ」
「怒りますよ」
「でも喜助が俺とまた付き合うって思ってくれて嬉しい」
カーッと赤くなる篤人に喜助も赤くなり顔を隠す篤人の手を握った

「好きです、僕と付き合って欲しいです」

暫し沈黙の後、コクリと頷く篤人に喜助は握っていた手を引き寄せて抱き締めた。ギューっと効果音が鳴るくらい抱き締めて「良かった」と呟く喜助に篤人も応えるかのように背中に手を伸ばした。それがまた喜助には嬉しくて顔を篤人の肩に押しあてた


「喜助、ちょ…重い」
「やっと呼んでくれた」
「?」
「篤人サンはアタシの事嫌いでしょう?」
「俺に告白したのは浦原さんじゃねーし?それに…」
「?それに、?」
「喜助は喜助じゃん?それに気づいたみたいな?」
その言葉に喜助はキュンと胸を打たれて思わず顔を反らした



「喜助、」
「はい?」
「なんでもない」
プイッ向いた篤人に喜助は頭を傾げれば注がれる視線を辿れば喜助はぐっと口端を上げた


「手繋ぎませんか?」
「!!!!……う、うん」
はいっと出した手を篤人は手を重ねて嬉しそうに笑うとこれまた喜助の胸を鷲掴みしたのか喜助は真っ赤になって左手で顔を隠した




そんなことよりキスをしよう?
(なんて今は一緒に居れるだけで幸せなんです)








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