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37℃の恋人



「なぁどーするよ帝黒、俺どんな顔して会えばいいんだよ…てゆーかお前どんだけ浦原さん嫌いなんだよ」
真っ黒い剣を突き刺し語る篤人は非常に変だ。正式名称を呼ばすそう呼ぶが返事を返す斬魄刀は余程持ち主を気に入っているように見える
なかなか解放しない斬魄刀をこれほど従わせられるのは彼の器だろう


「はいはい、ずーっと前から嫌いだもんなぁ」
篤人は人間に化ける帝黒を思い浮かべていた、真っ黒の髪の毛に白い肌それと自分と同じ金色の瞳は高貴を現している

「嗜好(あそ)べ帝黒」
「名を下せ皇帝黒彼岸」

「卍解は未だに見た事ないな」
「おー真子」
「そない怒んなや、斬魄刀やのにいっちょ前に支配しようとしとんのか」
カタカタ揺れる黒帝に真子はそう言った、お前の敵は俺やない、と目は語っていた



「昨日どうやった?」
「!!」
ビックリした顔をする篤人に真子は口端を上げ話を続けた

「好きやって言え」
「好きじゃねぇよ」
「さよか」
「っんだよ」
「お前が嘘つくからや」
「ついてねーよ!」
「戻りたいくせに、本間かなわん。ナンギな性格しよって」

複雑そうに顔を歪めた篤人は真子を見ていた。


「どないすんねん」
「………なにが?」
「お前は喜助とどないなりたいねん」
「………………別に」
「もーえぇわ、話にならん」
「なんだよ!」
「素直にならんで後悔したらえーねん、喜助取られんで」
「!」
目を泳がした篤人を横目に真子はスタスタと歩いて去った、残された篤人は屋上のコンクリートを背に寝転がり目を手で覆った


自分の気持ちがわかんねぇ、喜助は好きだ。浦原は嫌い。同一人物なのに…俺がほしがってるのは喜助だ
────────何故?
自分が知っているのは"浦原"ではなく"喜助"だからだろうか?自分が好きなのは本当に喜助なのだろうか?浦原喜助ではないのだろうか?喜助は…俺をどう思っているのだろうか、



「なんなんだよっ!ちくしょう」
───────素直になりぃ
「わかってるっつーの」
「でも…できねーんだよ」
篤人は自暴自棄になりながら刀を鞘に戻した。





「……どうした喜助、その手形」
頬にくっきり残る紅葉に喜助はポリポリと頬を掻いた


「いやぁ〜篤人サンは手が早くなりましたぁ」
「お主が優柔不断だからじゃろ?」
「優柔不断…?」
「曖昧な態度をすれば篤人の心は戻って来ぬ、貴様は賞賛のない勝負には出ない訳ではなかろうな」

「なんですか…それ」
「篤人を好む奴は山のようにいる、お主が本気にならぬ限り篤人は直ぐに離れると儂は思うがな、篤人は素直になれないとお主なら知っておるじゃろ」

「……………………」
表には出さないが荒々しく揺れる霊圧を夜一は感じ取っていた。喜助の霊圧が乱れるのは決まって篤人がらみだ、


「取られてからは遅いのだぞ」
「………わかっています」
喜助は弱々しく返事をした。

わかっている。
でも、言えないのだ。自分の感情をわかってもらえる筈がない、自分でさえ理解出来ない。こんなにも愛おしく、これほどまでに狂おしい。
いつ自分があの時のように篤人を傷つけるかわからない、欲しくてたまらなくて…誰にも視界に入れたくないし入れさせたくない。監禁して自分だけを求め自分だけしか映らず自分だけしか彼を知らない。自分だけが彼から愛されたいなんて…こんな醜く歪な感情を…見せる訳にはいかない

────でも
彼を手に入れたい。だなんて…本当にアタシは…

「愚かだ」



でももし…許されるのなら、
俺は…
アタシは…


「「あなた(アンタ)に愛されたい」」





37℃の恋人
(染まる彼を見て自分は焦がれたいのだ)






「っき…浦原」
「昨日はいきなりキスをしてスイマセン」
「……………」
「でも悪いと思ってません」
「?」

「アタシはしたくてしたんです」
「な、にが言いたい?」
「明日、話があります。あの場所に5時」
「な!」
「待ってます」
「いっ行かねーよ!」
「待ってます、ずっと」

「なっ!」
「篤人、その時伝えますから」


「…………え?」
篤人はあまりにも喜助が優しく微笑むから言葉を失い、喜助の綺麗な背中を見つめ続けた





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