心配しなくとも 「先生は彼女いるんですかー!?」 「彼女はいないね」 翠のフェロモンに当てたられた男子が興奮気味で聞いて翠は笑って返事をした。 そもそもなぜ翠がここにいるのかと言うと体育教師が風邪で休みなので代わりに保健を教える事になったのだ 男子も女子も興奮状態だ。そもそも翠は綺麗で有名だ、それが教室にいるのなら興奮しない訳がない。 骸は教卓に立っている翠を見ていた 「先生好きな人は!?」 「うん、いるよ」 「年上!?年下!?」 「年下かな」 次々上がる問いかけに全部答えていたらきりがない。翠は「では授業を始めます」と言って教科書を開いた、性教育を改めて教わると何故か恥ずかしい感じがした あまり聞きたくないほど卑猥と言っては何だが聞きにくい内容をあのエロい声で聞くはめになるとは思っていなかった。 男子でも腰にくる声なのだから女子からすればたまらないだろう、それに何故かムッとした 「先生」 「なに?」 「ここ合ってますか?」 そう言ってノートを指差して聞けば翠は見るために近くなる、それに骸は気が気じゃなかった。翠の肌や顔に惚れて集(たか)られるのは見ていて気分が悪い。 「うん、あってる」 にっこり笑う翠に女子は赤面した、チラリと視線をこちらに向ける翠は笑っていて目をそらした そんな光景を見てふと、意地悪をしたくなった。ただ自分ばかり好きで振り回されるのは嫌だったから だから少しだけ意地悪をして、歪む翠の顔を見たくなった (僕もつくづく性格が悪い) ただ目の前で女性と話すだけだったが相手が悪かった。相手は調子に乗って僕にキスして来たのだ、それを翠は見た。直視していた 「………翠」 「お盛んだねぇ、それは目立たない所でやらなきゃダメだよ?お二人さん、次回は気をつけてね」 あくまで上辺だけの笑顔を貼り付けて笑っていた。手を伸ばそうとすれば翠は嫌そうな顔をして骸を見た 頭が真っ白になった。 少し嫉妬して欲しかっただけなのに全て手から滑り落ちた気がした 「翠!」 「なに?六道くん」 今は名字で呼ばれるだけで胸が締め付けられる。 「あのあれは誤解で…」 「そっか。でもそれって俺に関係ないよね?」 「………」 「ほらチャイム鳴るから戻りなさい」 「嫌、です」 「俺は授業あるから先に行くよ」 無表情で少し軽蔑を含んだ笑い顔で離れて行く翠に骸は思わず腕を掴んだ 「………なに?」 「…いえ、その」 「じゃぁ離してくれない?」 「翠」 「今、君と話したくない…いやもうずっと話したくないかな、俺は言ったよね同じ事はしないでねって…でも君はした、君なら避けれたのにそれをしなかった。悪いけど今、触られるのも嫌なんだ」 いつもならやんわり言う翠に怒りより悲しみが先に来てるのか少し悲しそうな顔をした 「…………………」 「しばらく距離を置こうか」 「い、やです」 「俺はねされた事は仕返すタイプなんだ、タチが悪いだろう?」 「………」 「我が儘でゴメンね、だけど今君と冷静に話せないから話したくない」 一切骸に触らない翠に骸は泣きそうな顔をした。いつもなら抱きしめてくれる腕はただ下にあって動く事はなかった すっと離れた翠にまた手を伸ばそうと脳が働いたが「触られたくない」と言われた事がチラリと重なり手が空をかいた (取り返しのつかない事をした) (ただ、出来心だった) (どうしたらいいか分からない) (好きなのに) (別れたくないのに) (翠が手に入らない) 心配しなくてもわたしはひとり (プツンと糸を切られた) |