でもきっと 「え、え〜と…失礼します」 ツナは翠から渡された鍵で開けゆっくり入っていった、骸の登校を確認してからの行動だ。そして言われた通りにベッドの下に手を伸ばした、が言われた物が手に触れない 「あ、あれ?」 ツナはグッと手を潜らせもう一度確かめるが無い、困って電話しようと携帯を手に取り電話をかけた、瞬間声をかけられた 「不法侵入ですか、沢田綱吉」 「えっ…えぇ!骸」 「これをお探しですか?」 パッと見せられた写真にツナは言葉を失った、骸の顔は非常に怖い 「もしもし?」 タイミングの悪い事に電話から声が漏れた、それに骸は無表情に携帯を取り上げた 「もしもし、綱吉くん?」 受話器から聞こえる懐かしく自分が求めていた声に骸は喉を詰まらせた。涙が出ないのは衝撃からだろうか 「綱吉くん?」 「…………翠」 「っ」 息を呑む翠の息遣いが受話器越しから伝わった 「お久しぶりですね」 「骸、」 「えぇ、そうです」 骸は待っていて下さいと言い携帯を切った、そしてツナに視線を移した 「分かっていますよね沢田綱吉」 骸はまだ赤い目を感じさせないくらい真剣な面立ちで低くドスの聞いた声で言った ─────────ガチャン 「……………骸」 「見つけましたよ翠」 翠は開いた口をしばらく開けたまま反応が鈍った、そしてその口から出たのは「どうして、」だった 「どうして、ですか?よくそんな事言えますねわざわざ写真を隠して置いて…見つけたのは偶然ですが」 「そっか…記憶戻ったんだ?もう君が悲しまないようにと思って取りに行ってもらったのに」 「沢田綱吉から全部聞きました」 「そう」 「……なぜ記憶を消したんですか」 「俺が病気だから」 淡々と言った翠に骸は拳を握り冷静に言葉を紡いだ 「それが原因で僕の記憶を?」 「うん、嫌だろ?おっさんを看取るのは…もういいんだよ骸、もう自由になって」 翠がそう言い笑うと骸の顔には影が覆った。 「そんな理由で…僕はあなたの記憶を奪われ悩んでいたと言う事ですか」 「うん、もう一度記憶を無くして欲しい」 「!お断りします」 「どうして?」 疑問を問いかけた翠に骸はわなわなと感情が壊れたように怒鳴りつけた 「どうして…ってあなたはそれほど僕に記憶を無くして欲しいんですか?どうしてなんて…こっちが聞きたい、あなたは僕で遊んでたんですか?なら愛してるなんて言わないで下さいっ期待…させないで下さいっ!」 骸はまた瞳に涙を溢れさせ睨む骸に翠は手を差し伸べようとして途中で躊躇した、それが骸を苛立たせた 「なんとか言ったらどうなんですか!嘘だったんですか、好きだと言ったのも全部…嘘だったんですか…」 涙が零れた。拒絶された悲しみや不安、虚無感、焦燥感、喪失感、閉塞感が全ての感情が入り混じって支配している気分に陥った、計り知れない感情に自分でも稀有な出来事で理解出来ない 「骸、俺は死ぬんだよ?」 「そんな事、聞いてません!あなたは僕といるのが嫌…だったんですか、」 「嫌だったらわざわざ写真を隠すと思う?それに嘘はついてないよ、俺は君が好きで愛してる」 「なら…どうして」 「触れてしまえば俺は君を手放さなくなる、知っているだろう?俺が執着心や独占欲の塊だって」 少し自虐的な笑みを見せいつもなら骸を触る翠に骸は手を振りかざした ───────────パシン 小さく、だけど響いた音に翠は目を見開きその瞳には骸が映っていた、叩かれたと気づくのに少し時間がかかった 「僕はそんなに弱くないっ見くびらないで下さい…好きだと言いました、僕はあなたを愛してると…あなたと一緒にいたいと、あなたはどうなんですか?翠は僕をもう愛してないんですか!?」 涙をポロポロ流す翠の拳は握り過ぎて爪に赤が付いていた。 翠は目を泳がしていた、そして手をゆっくり伸ばした → |