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触れる資格



安っぽい愛を呟く人だと思った。そう娼婦がよがり声を喘がせた時に出る卑猥で下品なそれみたいに

でも彼の声や顔は好きだ
綺麗で汚れていない気がしたから


「六道くん、またサボリかな?」
「今は二人きりですよ」
「でも学校だからね、俺はこう見えても教員だよ」
そう話す翠は白衣を羽織り黒縁眼鏡をかけていていかにも保健医のような格好していた

「六道くん、誘ってる?」
「はい。早くキスして下さい」
そう言われて翠は困った顔をして骸の唇を指で往復した


「家に帰ったらしようかな、じゃないと最後までしてしまいそうだからね」
にっこり笑う翠は骸に触れずに言った。
骸は今年で17歳、翠は見た目や雰囲気でもわかるだけ大人。推定24〜5・6歳だ。自分より年上の相手を好きになるなんて思ってもみなかった、ただ出会いは簡単で彼が僕に告白して来たからだ「好きだよ骸」そう言われて熱が集まった事をきっかけに気づいた、僕はこの人が好きだ、と


「昨日もそう言って触れませんでした」
「そうだったかな?」
言葉遊びが上手なのは前からだった。女性教員にも迫られているのに態度は変えずまた薄っぺらい笑みで「あなたは綺麗だから俺なんかより相応しい人がいますよ?例えば〇〇先生とか」それでも引き下がらない女性教員には「俺ね結婚出来ませんよ?」と言って頬に手を滑らしまるで催眠術をかけるように甘くゆったりした口調で口をくっつける手前で止める

「ほら今、怯えた」
と笑って「あなたは俺が好きじゃないんですよ」と残酷に切り捨てる。始めから興味がないと言えばいいのに回りくどく酔わせてなるべく傷つかないように優しい声を出す


「(性格が悪い、)」
「六道くん浮気ってどう思う?」
「してるんですか」
「ううん、してないよ?でもどこまでが浮気なのかなぁって思って」

「……僕にボーダーラインを決めさせてそれ以下の事を他にしようとしてるんですか?」
「君って案外嫉妬深いよね」
「……………」
「俺は君の意見を聞きたいだけだよ、俺の場合はドキッとしたら浮気とかね」
「あなたの方が嫉妬深い」
「そうだろうね、だって六道くんモテるから」

(どっちがですか)
内心毒づくが言葉には出さなかった


「今だってすぐに君を裸にして舐めたいし吸いたい、君の口内をしゃぶって俺の唾液でいっぱいにしたい」
「〜〜〜〜〜〜!」
真っ赤にする骸に翠はにっこり笑って続けた

「でもちゃんと理性はあるからね、我慢してる」
「理性なんて崩れればいい」
「やだよ、こんな盛った俺を見て嫌われたら嫌だもん」
嫌いにならない事をわかってそう言う翠に骸は心底性格が悪いと思った

「翠」
「だから学校って言ったよ」
「名前…呼んで下さい」
「そんな可愛い顔すると襲っちゃうよ?」
「(どうせしないのに)」


「触ってもいいかな?」
「なぜいちいち聞くんですか」
「君は綺麗だからね、聞く事によって俺も今から触るって心の準備をしてるんだ」
「(意味がわからない)」



「翠」
「骸」
甘く痺れるような低さに腰が浮いた。白いカーテンで隔離された空間に何故か眩暈がした

「君がトリガーを引いたんだよ?」
「え?、ンン」
降って来た柔らかい唇に骸は心が熱くなった。するりとシャツの下に手を入れた


「ンっぁ…あ」
「声可愛いけど、ここは俺の部屋じゃないから出しちゃダメ、他に聞かれたら俺そいつ殺しちゃいそうだから」
「嫉妬、深いっ」

「違うよ骸」
「っぁ」
「これはね」


──────────独占欲だ
窒息死するほど長いキスをして言った通りに口内を、舌をしゃぶった。入れた手は肌をなぜるがそれ以上の事はしない。唇だけ犯した




「っ翠」
「ん?」
「……………………」
「家に帰ったら最後までしようね」
「!」
「だから今はもう一度キスをしよう」
「………はい」
骸の頬をすっと撫で唇を往復する。そしてあの毒に犯された唇が触れる


「(それに幸せを感じる僕はどうしたらいいんですか)」







触れる資格などありはしない
(毒が増幅して逃げ場が無くなる)






あきゅろす。
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