映画備忘録
フライト・オブ・フェニックス(2004)
砂漠サバイバル映画『飛べ!フェニックス』のリメイク作。
サバイバルといっても如何にして生き残るか、ではなく、如何にして帰還を果たすかが主軸になるためそこまで悲壮感のある造りにはなっていない。
突如として閉鎖を宣告された石油試掘場の従業員たち。輸送機に乗って帰還することとなったが砂嵐が直撃。あろうことか機体はゴビ砂漠に墜落してしまう。
さほど多くもない水と食料。次第に悲観的な空気が広がっていく中、予期せぬ乗客であったエリオットが脱出のプランを提案する。
――墜落した輸送機の部品を使って新しい小型飛行機を作るのだ、と。
テレビもねえ!ラジオもねえ!ココは砂漠のド真ん中!!……とは木曜洋画劇場の予告CMから。分かりやすい。
内容は至ってシンプル。救助も見込めない状況からツギハギの飛行機で生きて帰るぞ!という話。
当然、その前にはありとあらゆる障害が立ちはだかる。
厳しい砂漠の気候、徐々に少なくなっていく水、救助の期待できない悲壮感、「あれ、アイツ信用できなくね?」という不和、砂漠を流離う密輸組織。等々。
そんな困難にめげないワケではないけれど。仲間の中から犠牲も出てしまうけど。お前らダメだわ!とレッテル貼られたやつらが一念発起、人生一発逆転リスタートを図るのである。
人間死ぬ気になりゃ飛行機だって作れんだよ!というポジティブ・スピリットを熱く叩きつけてくれる。
チームサバイバルもののお約束として、「あ、コイツ死にそう」というヤツも当然いる。が、コイツ意外に生き残る。
逆に仲間思いのイイやつとかが死んでしまったりしちゃうところはなかなか侮れない。話自体はシンプルだからか、そういう辺りで予想を裏切ってくるのも一つの醍醐味だろうか。
だが一番のキーキャラクターはやはり飛行機再建の発案者、エリオットだろう。
コイツだけは石油試掘場の関係者ではない、世界旅行してる途中でたまたまご一緒しただけの旅行者。周りが悲観的になっていく中、コイツだけがポジティブに「飛行機作ろうぜ!」と言い出すワケである。
あやしい、あやしすぎるぞエリオット。とはいえ他に手もないし、と愉快な仲間たちもこの荒唐無稽な作戦に協力していくワケである。
であるのだが、このエリオットがとにかくクセ者。リーダー気取りで横暴に振舞うわ、話も通さずに勝手に仕事進めるわ、その癖あきらかに何かを隠してるわと、間違っても命を預けたくないタイプ。有体にいって典型的な陰キャといった感じ。
演じるジョバンニ・リビシという役者さん。なんかどっかで見たなと思い調べてみれば、おっさんテディベア映画『テッド』で偏執的なストーカー野郎を演じていた人だった。そりゃ見覚えあるよ。あっちでもこっちでも面倒くさいオタクキャラ。上手いもんである。
そんなエリオットが一体何者なのか、それは実際に見て確かめていただきたい。
そんなクソ面倒な陰キャが幅を利かせる一方で、他の登場人物たちはいまいち陰が薄い。というか個性がもの足りない。
主人公の操縦士タウンズ、コックのサミー、キャリア男のイアンなんかはそれなりに印象深いのだが、あとはその他大勢感が否めない。
チームサバイバルのお約束といえば、一見まとまりそうにないメンツがギスり合いながら徐々に団結していくもの。そんな基本から思えば、すこしパンチが弱く感じてしまう。
特にヒロインのケリーはただ一人の女性キャラのクセになにもしていない。本当に役割がなかった。
まあ、見たのが午後のロードショーなのでカットされていた可能性もあるが、仮にそうだとしても活躍するシーンをカットしても問題ないと判断されたというワケで。悲しい。せめて柔肌に一滴の汗が艶かしく流れる、そんなシーンの一つでもあればよかったものを。
ストーリー展開もシンプルが過ぎるところがある。
というか、最終的に飛行機が完成してちゃんと動いて全員脱出!イェイ!というオチは目に見えている。そうじゃなくてはむしろ困るというもの。そのため多少のピンチも、でもどうにかなるんでしょう?と見ていてやや危機感が物足りない。
無論、王道をゆく面白さ、見る側の期待に応える魅力というものもある。
どうせ上手くいくんだろ?なんて思いながらも、キャラクターたちと一緒になって「(エンジン)かかれ!/Come on!」「やったー!/Yeah!」などと盛り上がってしまうのが面白い。
クライマックス、再建された飛行機「フェニックス号」が満を持して飛び立つシーンではやはり多大な爽快感を味わえるのである。
採点:70点
サバイバルものではあるが最初から結末を提示されており、悲壮感も薄く、心置きなく楽しめる映画。王道をゆく単純明快。
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